玲央の家での勉強会(前編)
その数日後に。照りつける日差しで滲む汗を拭いながら、陽葵は姉と共に玲央の家を訪ねた。
「おう、来たか。まあとりあえず上がってけよ」
チャイムを鳴らしてしばらくすると、ドアが開いて派手な服装の女性が姿を見せる。彼女は気楽な顔で告げた。
「玲央が友達を呼ぶなんて珍しいと思ったけど、渚の妹なら納得だ。アイツはちょっと面倒な奴だけど、これからも仲良くしてやってくれよな」
「……ちーちゃん、それがね……」
渚が靴を脱いで家に上がり、彼女の耳元で声を潜めて話す。彼女は黙って聞いていたが、話が進んでいくうちに険しい表情になっていった。その様子を少し離れた場所から見ている陽葵の肩が、後ろから叩かれる。彼女が振り返ると、その目線の先には夏穂と樹がいた。
「どしたの陽葵、こんな所で立ち止まって」
「……少し顔色が悪いような気がするけど、何か問題でもあった?」
「う、うん、それがね……」
陽葵はそっと、姉と話している女性の顔色を伺う。彼女は難しい顔をしていたが、少ししてからため息をついた。
「……玲央がさ、昨日から楽しみにしてたんだ。本人は絶対そんなこと言わないし、顔にも出さないけど、アタシはアイツの姉だから。いつもと様子が違うのは分かってた。だからまずは、アイツの部屋まで案内するよ。詳しい話はそれからでいい」
そう言って、彼女は彼らを先導するように歩く。陽葵は玄関に靴を揃えて置き、玄関に出されていたスリッパを履いた。隣で同じことをしていた夏穂が、彼女にだけ聞こえる声量で呟く。
「……びっくりした。あれ、エイミーじゃん。見た目がめちゃくちゃ変わってっから、一瞬気づかなかったわ。でも、玲央と仲良くしてるってことは、アイツも記憶がないんだろうな」
その言葉で、陽葵も前世のことを思い出す。アルトの仲間に紹介された時、言葉少なに俯いていた暗い印象の少女。その顔が、今見た千秋の姿と重なる。
「……ホントだ……」
思わず目を見開いて、言葉を溢した陽葵の横で。いつものように穏やかな笑みを浮かべた樹が、柔らかな声を出した。
「まあ、そこはお互い様じゃないかな? ヨルンに前世の記憶が無いのと同じだと思えば、特に大したことでもないよ」
「……いや、そりゃあそうかもしれねえけどさあ……」
夏穂が不満そうな顔をする。陽葵は何と言えばいいのか分からず、困ったような表情で姉の友人に連れられていった。樹と夏穂も、すぐに彼女の後についていく。こうして彼らは、玲央が待つ部屋に向かって歩いた。




