姉妹
こうして明日の約束をして、陽葵は友人を見送った。彼らが家から去った後で、渚が彼女を見つめて聞く。
「陽葵はさ、あの子達のうちどっちが好きなの」
陽葵が笑顔のまま固まる。彼女は小さな声で返した。
「それは、その。……分かんないというか……」
「どっちもイケメンよね。タイプは違うけど、学校でも人気があるんじゃない?」
「……うん、まあ……」
「それで? あなたの好みはどっちなの?」
姉は引かない。真剣な顔で詰められて、陽葵は言葉を濁した。
「……好みとか、考えたことないし……なんか、どっちかを選ぶのって、もう片方に悪いような……」
「そうね。だけどそういうものでしょう、恋愛なんて。どっちつかずが1番良くないのよ」
渚がジト目で陽葵を見る。陽葵はそっと目を背けた。
「分かってる、けど」
「けど?」
「お姉ちゃんは知らないかもしれないけど、私は樹くんに負い目があって。だから無下にはできないけど、それだけで来間くんを拒絶するのもどうかと思うし……結局、答えを先送りにするしかなくて」
「……そう」
渚がため息をつく。
「ちゃんと考えているならいいわ。でもね、陽葵。難しく考えすぎるのも良くないのよ。例えば笑顔が可愛いとか、何だかほっとけない気がするとか。そんな単純な気持ちだけでも、案外やっていけるものなんだから。あなたは御門くんに負い目があるって言ったけど、それだって無視しようと思えば出来ることでしょ。それが難しいと思うってことは、それだけで好きな理由になるんじゃない?」
「……でもね、お姉ちゃん……」
姉の言葉を聞いて、陽葵は王女の顔を脳裏に浮かべる。殺されても、どうしても憎めない相手。
「私よりも樹くんに相応しくて、樹くんのことが大好きな人がいても?」
今度は渚が言葉に詰まる番だった。妹は寂しそうに、悲しそうに微笑んでいる。そんな彼女の顔を見たのは初めてで。
「……本当、いつの間にか大人になっちゃって」
姉はそっと妹の体を抱き寄せて、その背に腕を回した。
「御門くんは、あなたのことが好きなんでしょ。……多分来間くんも。だったら後は、あなたが決断するだけよ。それでも、どうしても迷うことはあると思うけど……その時は、お姉ちゃんが相談に乗ってあげるから」
優しい声で、彼女が告げる。その言葉に、陽葵は安心したように笑って答えた。
「……うん、ありがとう」
それは、親友が伝えてくれたのと同じようなことだ。彼女には守ってくれる人が大勢いる。それが分かるだけで、彼女の心は少しだけ楽になった。




