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再会(中編)

夏穂(かほ)陽葵(ひまり)は他愛もない話をしながら下駄箱で靴を履き替えて、駐輪場に向かった。その途中で、2人は別の女子グループとすれ違う。


「ねえねえ聞いた? 校門のところに、すっごい車が止まってるんだって! 真っ黒な外車よ、外車!」


「えー、嘘! 有名人でもいるのかなあ」


「知らないの? 御門(みかど)グループの御曹司(おんぞうし)が、ここに通ってるらしいわよ。ほらあの、入学式で挨拶してた!」


入学式での挨拶と聞いて、2人は思わず足を止めた。振り返らず、耳を()ませる。


「マジ? 御門グループっていったら、最近IT系で業績を伸ばしてるっていうとこじゃん! なんでそんなとこの跡取りが、こんな田舎の公立校に通ってんのよ!」


「知らないわよ、そんなの。気になるなら本人に聞きに行けば? なんか門のとこで、誰かを待ってるみたいだからさ……」


女子グループは、そんな話をしながら遠ざかっていった。夏穂が陽葵に、物言いたげな視線を向ける。


「……ね、ねえ。もしかして、アルトも前世の記憶を持ってたりして……」


陽葵の声が上ずっている。夏穂は考え込むような表情になって言った。


「……まあ、そう考えた方が筋が通るよね。陽葵を探すなら確かに、街の私立に行くよりも田舎の公立に来た方が良いし」


「だよね?! ど、どうしよう。校門の前にいるなら、会わずに通るのは無理だろうし……」


「……裏から出るとか? アイツには悪いけど、陽葵がどうしても会いたくないなら……」


「それ採用! ありがと夏穂!」


陽葵は早口でそう叫んで、小走りで自転車を取りに行った。その背を追いながら、夏穂は心の中で友人に謝る。


(ごめんなアルト。でもまあ、無理に連れてっても(こじ)れるだけだし。分かってくれよ)


2人は駐輪場に()めていた自転車を押しながら、校舎の横を通って裏側に回る。そしてそこで、夏穂は目を見開いた。


「……嘘だろ」


陽葵が立ち止まって、心配そうに彼女を見る。けれど彼女はそれには気づかず、前にいる生徒たちを見据(みす)えて唇を噛んだ。


「陽葵。前言撤回。こっちはダメだ。やっぱり表から出よう。あいつらと関わるくらいなら、アルトに見つかった方がマシだ」


そう言われても、陽葵には何のことだか分からない。目の前には確かに、制服を着崩した不良生徒がたむろっている。けれど横には隙間があるし、通り抜けるくらいなら問題ない。それに彼らの顔を見ても、陽葵は何も思い出さなかった。


「……その。私は会ったことないと思うけど、メルヴィンくんはあるの……?」


「……ある。あの中の2人は魔王軍の幹部……四天王だった奴らだし、中心にいるのはアルトが倒したはずの魔王だ。この世界には魔法はないけど、でも。……あいつらもきっと、オレたちの顔を覚えてる」


掠れた声で、少女が告げる。陽葵はその言葉を聞いて絶句した。

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