陽葵の家での勉強会(休憩中)
そんな話をしている間にも、陽葵以外の3人は順調に宿題を終わらせていった。陽葵も何度か樹の手を借りて、少し遅れながらも進めていく。そして10分ほど過ぎた頃に、部屋の扉が開いてスイカを乗せたお盆を持った母親が入ってくる。
「どうかしら。ちゃんとやってる?」
「……うー……なんとか……」
陽葵が呻きながら体を伸ばす。その様子を見た母は、苦笑を浮かべて姉にお盆を渡した。
「皆お疲れ様。オヤツを持ってきたから、ゆっくり休んでね」
「ありがとうございます、お義母さん」
樹が笑顔で頭を下げる。陽葵の母は口元に手を当てて、朗らかに笑った。
「あらあら、御門くんは丁寧な子ね。いいのよ別に。私がやりたくてやってるんだから。……さて。お邪魔になるといけないから、私はリビングに戻るわね。後はよろしく、渚」
「……はあい」
陽葵の姉が、何か言いたげな表情で頷く。部屋を出ていく母親を見送った後で、彼女は樹が空けておいた机の端に、持っていたお盆を置いた。
「……さてと。じゃあお母さんもああ言ってくれたことだし、休みましょうか」
「やったー! もうクタクタだよ」
陽葵が真っ先にスイカに手を伸ばす。夏穂と樹も、続けて取った。
「あら、来間くんは食べないの?」
興味なさそうにしている玲央に向かって、渚が不思議そうにしながら声をかける。彼は感情の見えない目で、彼女を見返した。
「……そうですね。特に必要も感じないので」
淡々としたその言葉に、陽葵が目を丸くする。彼女はお盆を玲央の方に押して、彼に向かって笑いかけた。
「そんなこと言わないで、ほら。来間くんの分もちゃんとあるし、食べなよ。お婆ちゃんの家から届いたスイカだから、瑞々しくて美味しいよ?」
「……っ、そうか。お前がそこまで言うのなら、貰っておこう」
玲央が戸惑ったような様子で、目を逸らしながらスイカを取る。樹はそんな2人を、少し不満そうな表情で見ていた。その光景を外側から見守りながら、渚が夏穂に近づいて小声で話しかけた。
「……ねえ夏穂ちゃん。ウチの妹って、ずっとこんな調子なの?」
「まあ、ほとんどこんな感じですね。アタシも正直ビックリしてます。昔から、いい子だなーとは思ってましたけど……まさかこんなに無自覚だとは。しかも変な相手ばっかり捕まえてて、友人としては心配が絶えないんですよ」
「その気持ち、分かるわぁ……。お父さんは仕事で忙しいし、私も普段はこっちに居ないし……お母さんはああいう性格だから、積極的に止めてくれることもないのよね。それでこうなっちゃったのかしら……」
ヒソヒソ声で話しながら、2人は陽葵の方を見た。彼女は何も気づかずに、平和そうな顔でスイカを食べている。そんな陽葵の姿に、2人は呆れた顔をした。




