陽葵の家での勉強会(前編)
そして翌日。朝10時に、陽葵の家のチャイムが鳴る。彼女は慌ててドアを開けて、訪ねてきた3人を出迎えた。挨拶を交わしながら、彼女は友人たちが家に入るのを見届けてドアを閉める。夏穂が先導して短い廊下の先、リビングに繋がる扉を開けて声をかける。
「こんにちはー。お邪魔しまーす」
陽葵の母は、その声を聞いて台所から顔を出した。そして夏穂の後ろにいる2人を見て、彼女は驚いたように口元に手を当てる。
「あら! 陽葵が言ってた新しいお友達って、2人とも男の子だったのね。それに夏穂ちゃんも。いつも家の子と仲良くしてくれてありがとう。後でおやつを持っていくわね」
「はーい。ありがとうございます」
「ありがとうございます、お義母さん」
夏穂がヒラヒラと手を振って、樹が丁寧に礼をする。玲央は軽く頭を下げた。後からリビングに入った陽葵は、少し恥ずかしそうに自室に繋がる扉を開ける。部屋の中では、姉がソワソワとした様子で待っていた。
「いらっしゃい。いつも陽葵がお世話になって……」
そう言いながら頭を下げた彼女を見て、3人は少し驚いた顔をする。
「……あっ、あの。えっと、お久しぶりです……?」
「あら、あなたは夏穂ちゃん? ちょっと見ない間に大きくなったのね。久しぶり」
戸惑いながら挨拶をした夏穂を見て、彼女はにこやかな笑みを浮かべる。夏穂は何とも言えない顔で、部屋の床に座って荷物を置いた。
「……初めまして。僕は御門樹です」
「……俺は来間です。来間玲央」
2人の少年が、揃って彼女に挨拶する。彼女は笑顔で頷いた。
「ええ、よろしくね。御門くんに、来間くん。……ねえ、来間くんって、もしかしてお姉さんがいるのかしら」
「ええ、まあ」
「そうなのね。じゃああなたが、ちーちゃんが言ってた弟さんかしら。あ、ちーちゃんっていうのは千秋ちゃんのことで……よく喧嘩をして、その度に私がこっそり手当をしてあげてたの」
「…………なるほど。そう言われれば、姉から聞いたことがある気がします」
ぎこちない様子で、玲央が彼女と会話する。それを横目で見ながら、夏穂は陽葵と小声で話した。
「ねえ陽葵。今思い出したんだけど……アンタのお姉さん、多分転生した四天王のうちの1人だわ。もっとも本人に、その記憶は無いみたいだけど」
「……ええっ?!」
陽葵は思わず大きな声を上げる。その声に、姉は不思議そうな顔をした。
「……どうかした?」
「う、ううん、何でもないよ」
彼女はいつもと変わらない優しげな表情で妹を見ている。その姿は、魔王軍の幹部だったとはとても思えないほどだ。それでも、樹や玲央の態度が少し変わったこともあって。陽葵は親友の話を信じた。




