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勉強会(準備)

そうして7月の後半から、夏休みが始まった。4人は休み前の約束通りに、宿題を持ってそれぞれの家に集まる。1日目は陽葵(ひまり)の番だった。


「あ、あのね。明日お友達が来るから……」


「あら良いじゃない! 夏穂ちゃんかしら?」


「え、えっと……新しくできたお友達も2人いて……」


「まあまあまあ! そういうことなら、早めに言っておいてくれれば良かったのに。お客さんが来るなんて思わなかったから、何の準備もしてないわよ?」


友人が来る前日の夜。母親と姉のいる前で、彼女はそのことを話す。母親は彼女の話を聞いて、嬉しそうにした。そして姉は、困ったような顔で彼女を見る。


「それなら、私は外に出ていた方がいいかしら。陽葵と私、相部屋だし……」


「あ。……あの、えっと、特に用事がないなら居てほしくて。夏穂(かほ)も久しぶりに会えるの、楽しみにしてるし……」


陽葵は目線を泳がせる。親友はともかく、(いつき)玲央(れお)が家に来る目的の半分は姉に会うことだ。彼女が居なければ、2人は落胆(らくたん)するだろう。けれどそのことを話すとなると、2人が陽葵に告白してきたことにも触れなければならない。それはどうしても無理だったので、陽葵は言葉を(にご)すしかなかった。幸いにも、姉は彼女の言葉を疑わず、納得したような表情になる。


「そう? だったらいいけど……私お邪魔じゃないかしら」


「大丈夫。勉強会も兼ねてるし。お姉ちゃんも、一高に通ってたんでしょ? だったらテスト対策とかもできるし、むしろありがたいくらいだよ。それからお母さんは、あんまり張り切らなくていいからね。さっきも言ったけど、メインは勉強であって、遊ぶことじゃないから」


と言いつつ、陽葵は何となく察していた。勉強会の大半は、樹の家で行われることになっている。何をどうしようとも、一般家庭では及ぶべくもない。そして、そんなことは始める前から分かっているので、一人っ子の夏穂の家は集合場所となることもなかった。その時点で、メインが勉強というのは間違っている。そもそも陽葵以外は改めて勉強する必要もないので、母の気負いは完全に空回りだった。とはいえ、それで止まるわけもなく。彼女は慌てて、祖母の家から送られた大きなスイカを冷水に()けた。


「これで、明日の朝には冷えてると思うから……。お友達が来たら、三角に切って出すわね。こんな物しか無いけれど……」


「……だからいいって。これで十分だよ」


陽葵は苦笑を浮かべて言う。その言葉は、心の底から出たものだった。

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