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空き教室の不良たち(後編)

「だからこそ、我は奴を買っている。他の勇者と違って、奴は相手が誰であろうと、必要とあらば切り捨てて進んだ。紛い物の正義ではなく、自分の欲のために剣を振るった男。その強さと潔さが気に入って、1度はこちら側に来ないかと誘ったほどだ。もっとも、奴には断られてしまったがな。確か、そうだな……『好きな子をガッカリさせたくないから』という理由で。あの時は意味が分からなかったが、今になってようやく理解した。奴は最初から、お前のために動いていたのだろう。我の配下にならなかったのも、お前が人間の国で暮らしていて、その暮らしを好んでいたからだ」


何も言えなくなった陽葵(ひまり)に向かって、玲央(れお)が立ち上がって歩み寄る。夏穂(かほ)はとっさに前に出て、2人の間に入った。玲央は構わず、2人の目の前にきて告げる。


「女。確か、名は陽葵といったな。お前は奴の、唯一の弱みだ。だからこそ、我はお前を傷つける気はない。それで勝っても、我の力で勝ったことにはならんからな。そして、それと同時に……貴様が我を頼ってきたのなら、その時は手を貸してやろうと思っていた。魔王グラントリーの名に()けて誓おう。ここに貴様を傷つける者は居ない。他ならぬ我が、そのような存在を許しはせん。……奴のせいで、周囲から注目されているのだろう? 目立つことが苦痛となるなら、お前は我の(もと)に来い。いつでも歓迎してやろう」


「……別に、苦しいわけじゃありません」


ニヤリと笑った玲央を見上げて、陽葵は小さく……しかしハッキリとした声で言葉を返した。


「ただ、息抜きがしたかっただけです。あなた達には迷惑をかけませんから、この教室の隅を貸してください。私はそれだけでいいです」


「……ほう」


玲央の瞳が(わず)かに(きら)めく。彼はどことなく上機嫌になって、2人を教室内に招き入れた。


「場所は余っている。そして、お前たちは我の客だ。隅と言わず、中央に来い」


そう言って、彼は側で見守っていた舎弟たちの中の2人……(ゆずる)(かおる)に指示を出す。指示を受けた彼らは、教室の端に放置してあった机と椅子を中央に持ってきて、複数個の机を合わせて長方形の机を作った。玲央が中央付近の机に座り、陽葵と夏穂は彼から少し離れた席につく。そして陽葵は、笑顔で見ている彼を気にしないようにしながら、弁当箱を開けた。彼女はそのまま、黙って昼食を食べ始める。夏穂はその隣でため息をつきながら、彼女と同じように弁当を食べた。玲央は何が面白いのか、昼休みが終わるまで笑みを崩さず、そんな2人を見守り続けた。

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