作戦会議
結果として。陽葵と夏穂は、朝のホームルームには間に合わなかった。けれど栗川から話を聞いていた担任は、2人が遅れてきたことに対しては何も言わなかった。2人はそのままホームルームと授業を受けて、2時間目と3時間目の間の休み時間にコッソリと隣のクラスを覗きに行く。
「あれ、夏穂? どうしたの?」
同じ中学だった同級生が、入り口にいる2人を見かけて声をかけてきた。夏穂は口元に指を当てて、潜めた声で返す。
「しー……。アイツに見つかりたくないの。ねえ、アンタのクラスに、全然授業を受けないくせに頭が良い子がいるんでしょ。その子のこと、教えてくれる?」
彼女の視線は、教室の中央に向けられている。そこにはクラスメイトに囲まれて、穏やかな顔で応対している男子生徒がいた。声をかけてきた同級生が彼女の後ろに隠れている陽葵を見つけて、納得したような顔をする。そして彼女は、2人を気づかって外に出てきた。
「あー……そう言えば、佐藤さんは御門くんと親しいんだっけ。学校中で噂になってるよ。まあやっかみが殆どだけど。で、東雲さんが聞きたがってるのは来間くんのことね? そうだなあ、私は会ったことは無いけど……向こうも向こうで、隠れファンが多いみたい。不良で口も悪いけど、女の子には絶対に手を上げないんだって」
教室の扉を閉めながら、彼女はそんな話をする。夏穂は複雑な表情を浮かべた。
「でも、危険なことには変わりないでしょ。良くない人たちとつるんでるし……」
「まあ、そういうのが好きな子もいるから。それに彼、あのグループのリーダーらしくて……彼の方針がグループのルールになってるみたいだし、なんか妙なカリスマを持ってるんだって。御門くんと同じくらいの人気はあるよ。あっちが表なら、こっちは裏って感じだけど」
「……まるきり前世と同じじゃない」
同級生の言葉に、夏穂は額を押さえて呻いた。同級生は、そんな彼女を見て首を傾げる。
「前世? って?」
「ああ、気にしないで。こっちの話だから。それで、来間くんの弱点とかは? 些細なことでもいいから、何か知らない?」
「ええ? そんな急に言われても……。うーん、お姉さんには1度も敵わなかったって聞いたけどなぁ」
夏穂の問いかけに、同級生は悩みながら答える。それと同時にチャイムが鳴った。
「あっ、ヤバ! じゃあ私戻るから。またね!」
同級生は少し慌てながら、2人に手を振って教室に戻る。残された夏穂は、陽葵と顔を見合わせた。
「……とりあえず、アタシたちも帰ろっか」
陽葵はその言葉に無言で頷く。そして2人は連れ立って、自分たちの教室に入った。




