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変化

陽葵(ひまり)の言葉に、それまで表情を変えなかった玲央(れお)が初めて動揺した。周囲にいる舎弟たちがざわつく。彼女の言葉は、彼の本質を言い当てた。まだ会ったばかりで、少ししか話していないはずなのに。


「……ほう、なるほど」


玲央が嬉しそうに口角を上げる。その瞬間に、予鈴が鳴った。陽葵は真っ直ぐに前を見る。


「聞きたいことはそれだけてすか? それなら、私たちはもう教室に行かないといけないので、失礼します」


夏穂(かほ)の手を取って、陽葵は1歩前に出る。玲央は黙って道を開けた。そして。振り向かずに走る2人の背を見ながら、楽しそうに呟く。


「貴様が惚れるだけのことはあるな、あの女は」


(いつき)は無言で唇を噛んだ。


(いつもそうだ。誰よりも近くにいたいのに、あの子は僕を置いていく)


前世も今世も。樹の目には、彼女しか映っていない。だからこそ。


「……グラントリー。僕は彼女が誰を選んだとしても、それで彼女が幸せになるなら納得して受け入れるつもりだ。でも。君だけは看過(かんか)できない」


「望むところだ。我は力では貴様に勝てぬ。それならば。貴様が最も大切にしているものを……あの女を、貴様から奪ってやろう。覚悟しておけ」


陽葵の知らないところで、樹は玲央に宣戦布告をする。玲央はそれを受けて得意げに笑った。魔王と勇者であった頃は、互いに殺し合う関係だった。けれど今はそんなことをする必要もないし、何より。この件に関しては、まだどちらが勝つかも決まっていない。


(……もっとも。今は奴の方が、少しだけ優勢だが)


言いたいことだけ言って去っていく樹の方を見ながら、玲央は口の端を歪めた。優等生である彼や一般的な生徒である彼女たちと違って、不良である彼が授業をサボるのはいつものことだ。もはや教師も慣れきっていて、いちいち探しに来ることもない。


(ゆずる)。奴らが昨日、昼休みに屋上に集まっていたというのは本当か?」


「みたいだね〜。まあ御門(みかど)樹は有名人だし、人の居ないところじゃないと一緒に居られないんじゃない?」


「玲央様。気になるのでしたら、先に屋上へ向かっておきますか?」


玲央の問いに、前世からの部下が答える。その横で。彼と同じ立場の男が頭を下げながら言った。玲央は面白そうに笑って頷く。


「そうだな。勇者のあのような顔を見るためなら、待ち続けることも苦ではない」


その1言で、彼らの行動は決まった。連れ立って屋上に向かい、給水塔の(かげ)に隠れて座る。彼らはそのまま、昼休みになるまでそこで待機していた。

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