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21/201

帰宅

家に入って手を洗い、リビングで夕食ができるのを待っていると電話が鳴った。陽葵(ひまり)は立ち上がって、受話器を取る。


「もしもし、佐藤です」


「もしもし、陽葵? 今、話できる?」


受話器から聞こえてくる声に、陽葵は目を見開いた。


「……お姉ちゃん? どうして……」


「久しぶりに、陽葵と話がしたくなったの。高校生になったんでしょ? 学校はどう?」


「えっと……まだ入学したばっかりだし、夏穂(かほ)としか話せてないけど。でも今日、同じクラスの男の子とちょっとだけ話したよ。帰り道がたまたま一緒になって」


「夏穂ちゃんかー。あなた達、昔から仲良しだったものね。でもその様子なら、学校で何かあったってことも無いのか」


「……まあ、うん」


姉と話しながら、陽葵は何となく察していた。キッチンで夕食を作っている母の方に視線を向けて、彼女は声を(ひそ)める。


「ねえ、もしかしてお姉ちゃんが急に電話をかけてきたのって、お母さんに頼まれたから?」


その言葉に。電話口から、ため息のような音が()れ聞こえた。


「……あーあ、やっぱり気づいちゃうかぁ。あんまり、お母さんに心配をかけちゃダメよ」


「……うん。お姉ちゃんも、わざわざ電話かけさせちゃってごめんね」


「私はいいのよ。大学生って意外と暇だし。陽葵の声が聞きたかったのも本当だから。……それで、どうなの? お姉ちゃんで良かったら相談に乗るけど」


そう言われて、陽葵は少し迷いながら口を開く。


「……えっとね。大したことじゃないんだけど、その。お姉ちゃんは、高校生の頃に好きな人とか居た?」


妹の言葉に、電話口から聞こえる声が少し弾む。


「あら、あなたもそういうことを考える年になったのね。もしかして、さっき言ってた男の子に告白されたりした?」


「……う。え、えっと、さっき話した子じゃないんだけど……ちょっといいかなって思う子がいて。その子からも好かれてるみたいなんだけど、顔がいいから狙ってる子も多くって……。私じゃ、その子に相応しくないんじゃないかって、考えちゃうの」


「うーん、陽葵は相変わらず真面目ねぇ。恋愛なんて結局は当人同士の問題だし、相手が良いって言ってくれるのならそれでいいと思うけど。だいたい、他人がどう思おうと関係ないでしょ。その男の子のこと、信じられるかどうかじゃない?」


姉はサッパリとした口調で言い切って、最後に笑いながら付け加える。


「ま、私は彼氏なんて居たこともないけど。陽葵が嫌じゃないなら、お試しで付き合ってみるってのもアリだと思うな〜。そういう事は、あんまり深く考えない方が上手くいくよ。頑張ってね」


「…………うん。ありがとう、お姉ちゃん。少し楽になった」


「はーい。まあ、またいつでも連絡してくれていいから。夏休みには家に帰るね」


その言葉を最後に電話が切れる。陽葵は穏やかな笑みを浮かべて、受話器を置いた。

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