革命(後編)
その部屋には数名の警察と、彼らに事情を説明している樹がいた。彼は入ってきた陽葵を見て、重い口調で告げた。
「……陽葵。梶ヶ原は父さんからの命令で、君に手を出そうとしていたんだ。計画について話していた、その音声データもある。……君には聞かせたくないと思う、嫌な話だったよ」
「……そんなに、なんだ。じゃあ、聞かない方がいいね」
戸惑いながら、少女が言う。周囲の大人たちは、一様に真剣な表情を浮かべていた。1人の女性警官が、陽葵に向かって声をかける。
「では、佐藤さんは何も知らなかったのですね?」
「はい。樹くんが守ってくれたので、大したことも無かったですし……」
「……分かりました。では、来間さん。盗聴器は御門春奈さんと協力して仕掛けたとのことですが、本当ですか?」
警官は少女への追求をやめて、今度は玲央に視線を向ける。彼は目を細めて、頷いた。
「そうだ。……最近、父親の動きが奇妙だったから、樹と相談していたらしい」
「……なるほど。春奈さんから聞いた話とも合いますね」
警官は深いため息をついて、手帳にペンを走らせる。それを見ながら、陽葵は不安そうな顔をした。
「……あの。私はどうすればいいんでしょうか」
大人たちが、何とも言えない顔をする。少女は未だに、何をされそうになっていたのか理解していない。それはある意味では幸せなことだが、同時に危険なことでもあった。悩んだ末に、警官は彼女に近づいて、耳元で詳しい説明をした。陽葵は目を丸くして、呆然とする。
「……えと、その」
「……大丈夫だよ。君は何も知らなくても、きちんと警戒できていた。むしろ、謝るべきは僕の方だ。父さんに見抜かれないように、ギリギリまで動かなかったんだから。……本当に、ごめん。怖かったよね」
「……や、そんな……」
言葉が出ない少女に、樹が硬い口調で話し、頭を下げる。彼女は目線を彷徨わせて、思考をそのまま口にした。
「……確かに、怖かったけど。樹くんは、悪くないでしょ。それに、ほら。結局間に合って、何も無かったんだし。気にするようなことじゃないよ」
その言葉に、大人は困ったような顔をする。樹と玲央は真顔になって、春奈は苦笑を浮かべていた。
「……陽葵。先に休もう。前に使った客室を、鈴生に整えてもらえばいい」
彼女が陽葵の手を取って、部屋から出るように促す。周囲にいた人々は、誰もそれを止めなかった。樹と玲央は、視線を交わして頷きあう。どこまでも純粋な少女を、そのままの形で居させたいと。そう思っていることは、どちらにとっても明らかだった。




