(越智視点)無人駅のモータリゼーション
無人駅の駅舎に雨宿りをしている。壁から剝がれかけている指名手配犯の懸賞ポストも、まるで僕を哂うように、ふらりふらりとしている。
無計画な僕も悪いのだが、天気予報が現実とかなり食い違っている。
僕一人以外乗り通していなかった、時刻表では1日2本しかない汽車も行っちゃった。流石に終わりだ。
駅舎すぐに古戦場の遺跡がある。入場無料というか、ステンレス製の紹介看板があるほかに、荒れた土地としか見えない。晴れたとしても、見学する気持ちではない。むろん市街地からも遠い。
終わりだ。雨が止んだら道路沿いに数十キロ歩く覚悟もした。でもこんな季節に、オオカミとかクマとかが出没しないのだろう。
しゃがんで雨宿りし続けた。
どのくらい時間が経ったのか?携帯をこまめにチェックしていないけれど、1時間弱じゃないかなと思っている。っと
「ここで株を守りて兎を待つ!」
なんと珍しく軽バンが駅舎前の砂利敷きに入ってきた。声の元の車内を覗いてみたら、落ち着きを失った。
僕がここに来た理由が車内に座っていたから。
「なだ かすみ」
「師匠の名前?」
「つま先で考えているのか?つま先で考えても違うのだろう」
数年前、お互いの家族旅行で久しぶりであって、河の増水で亡くなった僕のいとこが、大きくなって目の前の軽バンの中に座っている。多分。あのごろは僕の背が同じくらい高かったのになぁ。
「九州北部死神協会」
言い忘れた。軽バンの中に2人が座っていた。その1人の女が僕を気づいたのか?降りて社員証みたいなカードを見せてくれた。
九州北部電気保安協会?九州北部トンボ狩り協会?九州北部宇宙人デイサービス協会?
「ここは九州北部とトンネルや橋でつないているとはいえ、九州北部じゃないけど」
ツッコミたいとしてもなかなかうまくツッコめない、残念だった。
「提携もしているから」
納得はまだだけど、これ以上その名前を拘っても意味がない。
その後、降りた一人の女が今もう使われていないアナログ式携帯を取り出してボタンを押したら、僕の視界が真っ暗となった。
時間が進んでいるにもかかわらず、フリーズ状態に陥ったと感じる。ふたたび目が覚めたら、軽バンの中が2人座っていて、なだなごみちゃんの気配を感じなくなった。僕がその軽バンの上に飛び上がったカエルをじっと見たのか。
「どこに行きたい?おくっとこうか?」
1回降りた女が車の窓を半分降ろして、声をかけてくれた。
「のりますのります!」
雨が一瞬土砂降りとなった。流石にこの駅から出ないと。