半額に身を奉げる死神
「私は死んだ…生き返った…また死んだ…また生き返った」
私は片手で通話できないアナログ携帯に見える端末を握って立ったまま、何回も死亡した。超強力ミントに体を浸した感じだった。
「それ、おもちゃじゃないわ!」
小さくなった朽網あずささんが私の背骨を強く叩く。怒られた。予想通り痛くなかった。にしても、私は妹をつける表向きをしているから、相手にしなかった。死亡したと言っても、実際に死のシミュレーターだったようと、以前朽網あずさと一緒にいたときに彼女と他の死神から盗み聞いた。死を偽装する装置があるにはチート的だね。でもこれは何のため?ハゲタカをバカにするため?
「無理だよこんなのは…」
思わず声を出しちゃった。
半額シールを貼る作業をしているおばあさんのちょっと離れたところで、私は死の体験を複数回していた。尊い死神のお方も、こんな生産性のない行為(スーパーの総菜コーナーに長時間付ける)をしなければならないのか…
あまりにも退屈だったから、私は同じく総菜コーナーを狙っている短パンおじを見つめる。定番の缶ビールではなく、なぜか缶スパークリングワインだ。短パンおじがくる方向にあのワイン大国の国旗が色テープも飾り付けているから、多分なんかの輸入品フェアだろう…
シチュー風ハンバーグがシールに貼られた。取りたかったのに、手を出す瞬間、朽網あずささんに止められた。
「こっちのほうが1円当たりの満腹感が高いから」
チビ朽網あずささんがカゴに入れたのは、何枚もシール重ねて貼られたお好み焼だった。
おっしゃる通り、明らかにお好み焼のほうがボリュームがあると感じるけど、シチュー風ハンバーグ…私の念願のハンバーグ…と諦めた。
小さくなっても頭が大人の朽網あずささんは、今日も割引チラシ、ポイントと会員割引を使いこなした。私だったら、めんどくさがりやで多く出費するのだろう…と思いきや、そもそも私が財布を支配するには確率がわずかだ。
スーパーを出て駐車場に向かう途中で、県知事選挙ポスター掲示板に注意力を取られた。選挙は、私と遠い話だ。この街に私の戸籍はないから。でも、朽網あずささんから掲示板への怒りが伝わってくる。早く車に戻るように急かすわけではなさそうだ。感が鋭い私が、目に見えない何かの流れからしたら、彼女は天狗協会のジャージ服でポスターを貼る人への怒りだと思う。ポスターを貼ってるだけなのに?それともポスターの人?あの連中に関わりたくないとしか思えない。