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魔王襲来

またかなりの戦闘シーンを含みますっ!

あれから結局放浪は続いた。

メリナが戻ってこないので、神聖の大樹へ行ってみたが、なぜかメリナはいなかった。

もしかしたらもう僕達のもとに向かっているのかもしれないと思って、大樹を後にした。

森を歩いていると、久しぶりに天気の行方が悪く感じられた。

これはまた雨になりそうだと思った僕は、どこか雨宿りできる場所を求め歩き始めた。

しばらく歩いていると、上へ登れるようになっている山道を見つけた。

とりあえずこの奥へ登っていけば洞窟でもあるかなぁと思いながら歩いていると、ぽつ、ぽつと小さな雨粒が空から落ちてきた。

これは来るぞ! と感じて僕は足を早めた。

すると、ある小さな洞穴を見つけた。


「ここに入ろう」


そう言って僕とシェルは洞穴に雨宿りをするため中に入った。そこは丁度ぴったし人ふたりが入れるスペースだった。

しかし、少し狭かったのか、キュッと体を詰める感じになってしまった。

シェルの胸が僕の腕にむにゅっと優しく包み込むように当たっていた。

感触が良すぎて、腕がうずうずし始めた。それをグッと堪えるのは本当にキツかった。


それから一時間ほど嵐のように雷と大雨が吹き荒れたが、だんだんと雨は弱くなっていった。

そして、雨が止んだ頃のこと。


「クハハハハ!!! ここら辺から感じ取れたんだが...どこにいるんだ!?」


燃えるような激しくうるさい男の声が聞こえた。

それと


「アァーハッハッハー!!! 早く暴れたいんだが、どこに隠れているんだ!!!」


洞穴からでは顔が見えないけど、僕を探しているんだろうか?

だが、少し危険な気もした。あの時と同じオーラだ。今でも覚えている。ディーモと戦った時のことを。あれと同じくらいのオーラが二つ感じられる。

僕は気になって洞穴の隙間に手を当てて目をこらして外を覗いて見た。

そこには燃え上がった炎の髪が生えた筋肉丸出しの熱血な男と、髪の毛が荒れ、その身体の周りに風がぐるぐると巻き付けている男がいた。

すると


「あ?この洞穴からオーラ漏れてんぞ?まさかこん中か?」


バレた?これはもう自分から出るしかないか。そう思い、洞穴の岩をどかして体を起こした。


「なんすか?」


と、適当なやつみたいに問いかけると


「こいつだよ! 何やってんだ?雨宿りか?」


燃える人が叫ぶ。どう見てもこの二人、人間じゃない。悪魔か?それとも、魔族?どちらにしろ、僕に用があるみたいだ。


「なんのようすか?」


「うん? 君に会いに来た...だけじゃなくて」


「お前と一戦交えたい!!!」


「あ? お前は引っ込んでろ! こいつは俺が戦うんだよォ!!!」


燃える男と風の男が急にバチバチし始めた。


「あのぉ...」


「そうだな...クハハハハ! お前を準備運動にするとしよう!」


シェルは寝てるよな...?それにしても燃える男がうるさい。

すると急に彼らは燃え上がるように全身に力が入ったようだった。


「だいっ賛成だ!!!」


こっちも。

とかなんか意見があったみたいで何より。じゃなくて、こいつら僕とやり合う気だ。


「あの、あなた達誰ですか?」


少し丁寧に聞いてみる。


「ん?あぁ、俺か?自己紹介を忘れていたな!

すまん、すまん。俺は魔王! 炎王だ! フレドロス!」


燃える男はさらに髪の炎を増し、力が漲ったように見えた。


「俺も魔王だ! ストムと呼ぶが良い! アァーハッハッハー!!!」


あ、...魔王?なぜ僕に?いやまあ心当たりはあるけど。さっきのオーラの正体も分かったしいいんだけど、魔王!?

僕は驚きを隠すので精一杯という状態だった。

僕という存在があるだけでディーモの時みたいに強い者から戦いを申し込まれる。


「そう...ですか」


これ、どうしよう。頭にその一言がぽつんと響く。


「おっけー、じゃ、お前の情報は知ってるから早速俺が...」


フレドロスが手を組んでパキッパキッと指を鳴らす。


「いや、まずは俺からァ!!!」


ストムが急に風を強くし、嵐を吹き荒らした。

急な嵐にフレドロスが気づき、ストムに殴りかかろうとストムに近づく。

しかしそれに気づいたストムはその拳をサッと避け、発生させた嵐を操りフレドロスに向けて投げた。

「そんなのありー!?」と頭の中で叫びつつ、僕は魔王の喧嘩を眺めていた。


「百年も戦ってなかったが、お前弱くなったなストム?」


「お前もな」


二人はニヤリと笑みを浮かべて消える。そして、お互い拳を構えた状態で対面した。

すると物凄い鈍い音と共に二人の拳は互いの頬に思いっきりぶつかった。

魔王の殴り合いの激しさを表現するかのように殴り合う度に激しく衝撃波が揺れていた。

僕は今のうちに逃げようとシェルを起こし、音を立てないようにそろりそろりと下山しよう...とした。

しかし、すぐにバレた。

彼ら魔王は僕に気づくと姿を消し、その数秒後に二人揃って僕の目の前に現れた。

ビクッ! と体が動くも、顔は平然とする。


「あの、帰ってもいいですか?」


どうせ止められるだけだと分かっていたが、一応聞いてみる。

すると、フレドロスが拳を突き上げて勢いよく下ろしにかかった。僕は瞬間的に避けるも、髪がすれた。

これはまずいと悟った僕は魔王らに最大の風魔法をぶつけてその勢いを利用して自分ごと吹っ飛んだ。

しかし、それも無駄だった。

魔王らから離れれた! と思った瞬間、目の前に現れたのだ。そしてフレドロスが僕の腕を掴み、元いた場所へとぶん投げた。それはシェルごとだった。

僕はシェルの手を絶対に離さないようにがっしりと掴み、空を飛んだ。シェルの目から涙がこぼれる。

気づけば地面に向かって思いっきり落下していた。

地に着く前に風を発し、バネのように跳ね上がった。そこから着地し、魔王を見上げる。

シェルはその間に遠くに逃げていた。


「フハハハハ!!! 面白い!!!」


何がおかしい?フレドロスは意味もわからぬ笑いをした。

僕はとりあえず少しの時間だけ付き合ってやろうと逃げるのを諦め、剣を抜いた。

そして二人の魔王に向かって飛べるように足を力強く踏み込み、跳躍した。

目の前まで来れて、剣を振り上げるもストムが僕に風を投げつけて離れていき、フレドロスが炎の剣のようなものを構えた。

そして僕の剣とフレドロスの燃える剣が激突した。その瞬間、空間が歪み大地が大きく振動していた。地震か!?と思ったが、これは激突の衝撃波であり、地震ではないとすぐに分かった。

離れたあと構え直し、剣を下に隠してまた飛び跳ねた。すると、後ろから竜巻が襲いかかってきて僕を包んだ。

くそっ...魔王二対僕一人じゃ勝てるわけないだろっ!

ドドドドドド! と竜巻は僕の体を殴るように打ち付けた。


「グハッ...」


その拳のような風は綺麗に僕のみぞおちに入った。

瞬間的に回復魔法をかけて何となったが次は無いと確信した。


「おい! お前邪魔すんなよ!」


あの魔王らの喧嘩の声が聞こえた。

そこで僕は竜巻から抜け出し、身体全てを回復しきった。

深く呼吸をし、剣を構える。次はどっちから来るかを考え、未来を予想する。

別に殺し合いでもないのに、僕の剣はなぜか燃えるように興奮していて、力が漲っているようだった。

これはただ、魔王との遊びみたいなものだと言い聞かせるものの、殺される可能性だってあることに気づく。

僕は、自分の存在がどれほどこの世界を揺るがしているかに気づいた。

狂ってしまってるのだろうか?考え込んでいた。

そんなことをしていると、目の前にはフレドロスの炎の剣があった。

ッ...読めない!

僕は瞬間的に剣を構えて防御した。防御魔法を放つことさえ出来ない。なんだろう...読まれている?

そりゃそうだよな。魔王だもんな、相手の動きぐらい読めるものか。

僕は剣を落とした。


「あっ」


という声は酷く枯れ果てていた。

今度は水魔法でフレドロスに向かって濁流を打ち付けてみた。

しかし、それも読まれて僕の背後に瞬間移動して拳を突き上げているのが分かった。

僕は振り向いてパッ! と眩しい光線をフレドロスに向かって放ち、フレドロスの目が弱ったところを狙い、水魔法最大の「極・海溺水シードローウォー」を放った。

しかし、フレドロスの影が見えた。


「やるなぁ...お前、流石は伝説の勇者の生まれ変わり...と言ったところか?」


何を言ってるんだこいつは?伝説の勇者?古き勇者?僕はゴミの生まれ変わりだぞ?心の中でフレドロスを嘲笑うも、彼は真剣な顔をしてきた。さっきとは全然違う。

この身体がその伝説の勇者の生まれ変わりなのかもしれないと思った。

まさか、魔王達はそれが分かっていて僕を襲いに来たということか?いや、それは何か違う気がする。なぜだ?僕はまた考え込んでいた。

すると、視界にストムの拳が入ってきたので、意識を戻して避ける体勢になった。

しかし、その拳は避け切ることが出来ず、防御魔法を張ってまでしたのにそれを破られ右腕に当たった。

その瞬間、右腕が焼けるように痛くなった。激痛。

すぐに回復魔法をかけるも、簡単には治らなかった。仕方なく右腕は一回休ませ、左腕を構え直し風を放ち、その場から離れた。

左手から放たれた風は慣れていないためか、真っすぐに下がらず左に回転した。

結局、ストムのいた所へ帰ってきた。馬鹿だ! やばいっ! 右腕! 反応しろ! 心の中でそう叫ぶと、右腕の痛みが和らぎ、反応を見せた。


「はぁっ!」


両腕を構えて全身全霊を込めた光線を放ち、それに合わせて封印魔法まで放つ。必殺技のようなものが生まれた。

ストムはそれが避けきれなかったのか、防御も張らずに生身でその攻撃を受けた。

やったか?と目を凝らして辺りを見回すと、そこには、荒れ果てた荒地しかなかった。

砂漠のようだった。

フレドロスごとやったか?と思いつつ、当たりを満遍なく探す。

しかし、魔王二人の姿は見えなかった。それでもオーラは消えていなかった。

なんだこの違和感は...?

ディーモの覚醒の時みたいな...

まさか...!?


「ウオオオオオオオオ!!!」


フレドロスのさらに力が増した叫び声が耳に入る。


「か、か、覚醒! 覚醒魔王になったぞぉぉぉぉ!」


ストムの喜びのような叫び声も聞こえた。

ヤバい。最悪だ。終わった。

覚醒魔王?そんなのありかよ...


(創造神様っ!どっか逃げ道はないですか!?)


言葉はかえってこなかった。

ドクンドクンと、心臓の音がうるさい。


(..................、.........。.........?)


ドッドッドッドクンドクンドクンドクン...


創造神の声が聞こえてような気もするが、心臓の音がうるさすぎてぜんっぜん聞こえなかった。


(......!...............!?)


もういい...


「覚醒...魔王か...」


僕の心はそこで果てた。そして、もう一人の自分が覚醒した。


「面白いっ!!!」


もう一人の自分は笑っていた。

この戦いを楽しんでいた。


「おい、フレドロスとストムとか言ったか?本気でかかってこいよ、こっちも本気で行くからよぉ!」


何をしている...ここで僕の心の声さえ出なくなった。

身体が勝手に動く! 暴走しているみたいだ。技を出し、相手の動きを読み、避けてまた技を出した。


「おお! マサハル! それだ! 俺はそれを望んでいた!」


フレドロスが喜び、空中で跳躍した。


「俺もだ...」


もう一人のマサハルは、不気味な笑みを浮かべて笑った。大笑いをした。意味がわからない。

僕はこいつのことを暴走するもう一人の自分という意味で「ザオファミ」と名付けた。


「フハハハハ!」


ザオファミは、笑いながら技を放ち、魔王と戯れているようだった。

それに魔王らも乗って、楽しそうに戦っている。

僕の心が落ち着いたところで、また創造神様の声が聞こえる。


(もう一人のお前が暴れ狂ってるじゃないか)


(ですね、どうすればいいんですか?)


(どうすればって...あれはまるで古き伝説の勇者そのものだ)


それを聞いて僕はまた驚いた。

あれが伝説の勇者?もう情報整理が追いつけない。


(...)


(戦いを好み、魔王に挑んでは敗れた。馬鹿だったな、アレは)


(そうですか...)


伝説の勇者とは、ただ強く、更なる高みを目指して魔王に挑んだ。それを称えられ、勇者と呼ばれていただけで、本人は勇者になったつもりではないようだ。なんて馬鹿な...この世界の勇者、馬鹿?

今も覚醒した魔王たちと楽しんで戦っているが勇者なのか...一応...?


(さて、あの勇者が魔王らに勝てるかは分からぬぞ。もうそろそろ限界だろう。戻ってやれ)


そう言われてみるとザオファミの息が酷く荒れ始めていた。身体も崩れ始めている。このままでは僕ごと崩れるとわかった僕は、意識を戻し、戦場に立った。

これからどうしたものか...


「懐かしいな! この感じ!」


手をグーパーさせて喜んでいるフレドロスとストム。


「フハハハハ!!! 今日はいい運動になった! またいつか戦おう!」


そう言って彼らは消えた。


「は?」


運が良かったのだ。ザオファミとの戦いで満足してくれたみたいだ。

でも、また次があるらしい。次来た時は全てザオファミに任せよう。そう思った。

へなへなと僕の体が崩れ落ち、その場で大の字になって倒れた。

深く呼吸をし、脳を働かせる。

自分がこれ程の力を持っているが故に強者が反応して集まる。もう理解した。まさか魔王が来るとは思わなかったが、これからも警戒した方がいいと思った。

もっと、強くなろうとも思った。

何故か僕の心は落ち着いていて、前を向いていた。

こんなことがあったのにも関わらず、なぜだろう?ほっとするかのようにゆっくりと考えていた。


しばらくすると、シェルが戻ってきた。

シェルも、僕と同じ様なことを考えていたらしい。


「私も、これから一緒に戦えるように強くなるね」


いつものシェルとはかなり違った声と表情だった。いつもより美しく魅力的に見えた。


「うん」


多分これからもディーモや今回みたいに強いやつが集まってくるんだろう...

最後までお読みいただきありがとうございます。

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[良い点] やっぱり戦闘シーンが凄い!
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