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日本人との出会い

カオス族討伐が一瞬で終わってしまった。

雑魚すぎたんだ。いや、僕が強すぎるだけか。分かるだろうけど、剣を抜いてちょんと触れるだけで消滅した。

カオス族のボスらしきやつでさえ、二秒で倒した。今の僕では、Sランクも雑魚になってしまうみたいだ。

森林を歩いていると透明で透き通った綺麗な水の川を見つけた。

それは浅く、石がゴツゴツした川で、小さな魚が自由に泳いでいた。

そこの水はとても美味しく、冷たくて、飲めそうだったのでボトル一杯にいっぱいにつめた。

シェルとメリナもおいしい! と言って飲んでくれた。

それから簡単に釣竿を作り、小魚釣りもしてみた。餌はカオス族の切れ肉。今餌にできそうなやつがこれしか無かったので仕方ない。

無理かと思ったが、意外と釣れた。

川の表面が泡立ち、小さな魚が顔を出す。そして、その餌に食いついた! その魚はそのまま木の枝のトンガリに刺さり、僕が引っ張ってバシャッと川から出てきて釣れた。

それからもっと釣り、晩飯にしたのだった。

僕も軽く火を起こすことができるようになり、起こした火からパチパチと火花が散る。

起こした火から出る明るい光はそこ周辺を照らした。

魚は木の棒に刺されて立っていた。丸焦げになり、今にも食べれそうだ。

味付けとして、"この世界の"塩をかける。

あまり変わりはなかったが、少し味が濃い気がした。それでもとても美味しかったので、全然気にしなかった。

魚はというと、元の世界で言う鯵だな。めっちゃ上手い。皮をむいて骨をどかし身を口に入れたその瞬間! 口の中いっぱいに広がる鯵の味!...柔らかく、噛めば噛むほど味か伝わる!


「んぅー!」


口の中に入れたままおいしいー! と叫ぶ僕に合わせ


「これおいしい!」


「うん、私これ好き!」


二人も好評みたいだね。

気づいたらお腹が膨れていた。


「ごぢぞーざま〜」


つい、うぷっ...と口から吐き出てきそうになる。しかし我慢我慢...

シェルは満足そうに寝ているが、メリナがいない。どこに行ったんだろう? トイレかな?

僕は少し探すことにした。トイレだったら失礼だけど...


「メリナー!」


しばらく探すと、彼女が星が自由に光り輝く綺麗な夜空を地面に座りこんで一人で眺めていたのを見つけた。


「いたいたー」


そう言って僕はメリナが座っていた隣にしゃがみこみ、夜空を見上げる。


「綺麗だなぁ...」


前もべルシアスで夜空を見たけど、やっぱりこういう明かり一つない大自然で見る夜空は別格だ。

日本みたいに、明るすぎると星がめいっぱい光れなくなる。でもここは明かりが一つもないから、星たちは自由に舞っているようだった。

メリナは一番星を指さして笑った。

しばらく眺めていたが、飽きないものだな。星とは。

それと似て、冒険者も自由だなぁ...


「さ、そろそろ寝よっか」


メリナが僕の肩をとんとんと叩いて意識を戻してくれた。

あの夜空を見てか、その夜は気持ちよく眠れた。


翌日。カオス族をクリアしたのでカオスヌー森林からドルダイア洞窟を通り、モナモナの森へ行こうと思い、早速出発した。

ドルダイア洞窟とモナモナの森にも討伐依頼があったので、それを達成して全クリだ。

ドルダイア洞窟ではドルダイアという鉱石も見つけないといけないから少し大変かもしれない。

それからモナモナの森では雑魚魔物魔獣を倒しつつ、べルシアスに帰る。


「さ、全クリいっちゃいますかー!」


カオスヌー森林は、主にカオス族や他の魔獣、川に魚くらいしかいなかったので、歩いててもとても静かだった。

これから行く洞窟の話をしながら歩いていた。


「今から行くところは敵が数だから、もうまとめてぶっ倒そうね」


「たしかー、その魔物が鉱石発掘作業を邪魔しているんだっけ?」


これから行くドルダイア洞窟はべルシアスの発掘作業場だった。だから、作業員が魔物が作業の邪魔だと言って依頼したらしい。

でも、それだけじゃなかったような気もする。

しばらく歩いたが、洞窟遠い! もう暇になった。


「どうする?なんか歩きながらゲームでもするか?」


僕がそう言うとシェルとメリナはそろって目を輝かせた。


「何かあるの!?」


そう迫られたので一回二人を離し、「しりとり」と言った。


「何それー?」


どうやら二人は分からないみたいだ。異世界にはしりとりが無いんだ...

少しガッカリと落ち込んでしまったが、簡単にルールを説明した。

二人は理解したみたいなので、勝手に順番を決め始めた。

僕、メリナ、シェル。この順番だ。


「りんご」


順番が決まったので僕はすぐに喋った。


「何それー?」


二人揃ってまたか...この世界ではなんて言うんだ?


「えっとー、赤くて丸くて...」


ジェスチャーで一生懸命説明してみると


「あっ、ロンゲね!」


ろ、ろ、ロン毛ぇぇぇぇ!?

この世界では、りんごのことをロン毛というのか! 僕は思わず吹き出した。


「ま、まじかよ...」


全力で笑いをこらえてみたが、難しい。そもそも僕はこの世界ではしりとり最弱じゃないのか?

そんなことを考えているとメリナの番になっていた。


「ゲール」


何それ...と、小声で言ったが聞こえていないみたい。

分からないけど何も言えない。


「ルーメン」


まさかラーメン!? て、僕の番か!

どうしよどうしよ...て、ン?


「ンだ!」


なんとシェルがンを出したのだ!

僕は少し嬉し顔でシェルを指さす。


「あっ、負けたぁ...」


悔しそうにしていたので、順番を変えてもっかいやってみた。

シェル、僕、メリナ


「べルシアス」


「スゴロ」


ロだ!これは...


「ロンゲ!」


「ゲーデゲ」


「ゲモ」


二人がなんて言ってるか全く分からないけど、何とか僕はしりとりを繋げることが出来ていた。


「モナモナ」


そうやってしばらくしりとりをしながら歩いていると、ドルダイア洞窟についた。

青く透き通った岩がキラキラと光る、珍しく明るい洞窟だった。ぽちゃん、ぽちゃんと水が垂れる音とかもとてもいい。

討伐は一瞬で終わったものの、肝心のドルダイアという鉱石がぜんっぜん見つからない。

もう何時間探しただろうか、どこにも無いのだ。

作業員と一緒に探していたんだが、それでも見つからなかった。


「どうしましょう」


作業員リーダーのマイマさんはずっと頭を抱え考え込んでいるし...


(神様ー! サーチ機能とかないんすかー!)


ここは創造神様に頼んでみよう!


(お前、神の使い方雑だなおい。)


(おねしゃーす!)


僕は先に消えた。すると、僕の視界のずっと奥に光る物体が映り出された。

あれがドルダイア?と思いつつもその光に向かい歩いていると...

ゴッ! と頭をぶつけた。

そう、前は岩だった。ようはここを掘ればいいのだろうか?

とりあえず人を集めて掘ってみた。

すると、最後の一掘りで掘った場所からカッ! と眩しい光が差し込んだ。その光は、僕らがいた洞窟内を明るく照らしていた。

光の正体は反射でキラキラと光り輝く金銀財宝たちだった!


「うおおお!?」


僕はつい目が光り、喜んだ。

そしてすぐにこれは、なんだ?という考えになった。


「盗賊のアジトでしょうかね」


それを見たマイマさんはさらに掘り進め、金銀財宝の部屋に入った。

僕らも続いて中に入り、金銀財宝の山を漁っていると、大量のドルダイアを見つけた!!!


「これだー!」


とマイマさんは叫んでドルダイアを手に取った。

そして盗賊に取られていたか...と、悔しそうに拳を握りしめていた。

どうやら、作業員達は魔物が邪魔なだけじゃなくて、ドルダイアが無いことも困っていたみたいだ。


「この金銀財宝も盗み物なんでしょうね」


「ああ、すぐに見つけて捕まえておくよ」


マイマさんは仲間を集めてすぐに盗賊を捕まえる準備を始めた。


「そうそう、マサハル君、これお礼だ。ありがとな」


と言ってマイマさんは手に持っていた自分の金を僕の手にすっと置いた。

一瞬戸惑ったが、有難く受け取っといた。


「はい!」


これで洞窟クリア! あとは、モナモナの森の雑魚倒し! 僕ははしゃいで走り出していた。


モナモナの森とドルダイア洞窟は結構近くて、数分歩いてすぐに着いた。早速森に入り、一体づつ雑魚を倒していく。

シェルも戦いに慣れたようで僕と同じようにほいほいとスピードよく、効率よく敵を倒していた。

メリナも同様。敵をぽいぽい倒していた。


この森の討伐依頼は半端ないぐらい数が多くて困ったが、それもあっという間に終わりが近ずいていた。

その頃、森のどこかで男性の助けを求める声が聞こえた。

それは聞いたことのあるような声で、まるで本当の日本人のような声だった。


「今行きます!」


その声が聞こえる方へ走っていき、助けを求める人を見た。

転生したのか知らんが、見た目はそれほど日本人ではなかった。てか、日本人って決まった訳では無いか。

何に襲われていたか、それは久しぶりの狼熊ろうゆうだった。

狼熊は僕を見るなり叫んで逃げていき、一瞬で見えなくなった。

狼熊の中では僕は危険人物なのだろうか?と思いつつも男性に話しかける。


「大丈夫ですか?」


そう優しく声をかけて手を差し出す。

するとその人は何か考え込んで僕の方を見つめていた。


(まさか、この人達は...あのチーム「チーター」マキ・マサハルに、魔法使いシェル、魔法使いメリナ?...まさかな)


その男はドロー・パルーヌといった。

僕もさすがに日本人じゃないかぁと思いつつ、感謝された。

しかし、その人はやはり何か違った。というか、こう言われた。


「あの、一つ聞いてもいいですか?...マキ・マサハルという冒険者を知りませんか?」


と。僕だよ! って言いたいけど、なんて言おう。ここは素直に自分だと言おうかな?


「僕ですけど...」


「やはり! そうでしたか!」


ドローはそれを聞いた瞬間、僕に飛び込んできて、握手をしてきた。

それからドローが続けた言葉に僕は驚きと喜びがごっちゃに混ざった感覚になった。


「ずっと探していたんです! あなた、日本人ですよね!」


「え...」


声が出なくなった。なぜ知っている?まさかこの人も日本人!?とか、頭の中で色々な考えがよぎった。もしこの人が日本人だとしたら、奇跡的な出会いだぞ。

シェルとメリナは何が起きているか分からず僕ら二人を不思議そうに見つめていた。


「そうです。真木雅晴です。」


「俺は奏導龍そうどうろうです!!!自分、警察官やってて、二十八歳っス!あ、この世界では二十二歳っス!」


なんかちょっとだけ丁寧に話している?

てか、警察官!?しかも年上! まじかよぉ。


「僕は、中学二年生でした。」


「そうすか! でも年の差なんて関係ない! あぁ奇跡だ! これから二人で話せますか?」


何かの誘いみたいな話し方すんなぁ! とか思いながらも、シェルとメリナと一回離れた場所で二人で話を始めた。

まず前世の話からされた。

簡単に言われた。導龍さんは、仕事で死んだらしい。

そして、転生してからの話。

パルーヌ家に生まれ、新しい人生を歩んでいたが、僕の存在を知り探していた。といった感じだったらしい。

僕は別にいいんだけど、導龍さんは元の世界に帰りたいらしい。

なんだろう。この差は。子供は異世界にいたいけど、大人は帰りたい。

まぁ、いっか。あるあるだろ。アンケートしたらだいたい......

それとこの人、僕に会えば帰れるとか思い込んでいたみたいだ。

んなこと出来ませんよと、はっきり言うと、軽くため息をついて、話題を大きく変えた。

急にこの世界の食の話になったのだ!


「あの、分かります?牛豚の肉って、クソ不味いっすよね」


それにはとても共感出来た。


「ですよね! あの肉、クソ不味い! 牛と豚がぐっちょぐちょに混ざってるみたいで、気持ち悪いんですよねー!」


と、悪い話だがとても弾んだ。


「な! この世界の人たちどうかしてるぜ! あんな肉を美味しい美味しいとか言ってむしゃむしゃ食うんだぞ!」


「本当っ! どうかしてますよね! 他にも、不味い料理ばっかりですよね! この世界の料理えげつないですよ!」


気づいたら一時間も話すほど、弾みに弾んでいた。


「味覚どうなってるんだよ!」


「しかも、米ないし!」


シェルとメリナが恐る恐る覗いているのにも気づかず、とにかく話に夢中になっていた。

ようやく満足した僕らは、自分達のこれからについて話し始めた。


「で、これからどうします?」


僕はまだ少し依頼が残ってるからそれやるけど


「俺は...君にあってなんか希望見えたし、また帰る方法をとにかく探す」


だろうね


「帰る方法見つかったら報告するっス」


いや、別にいらないけど...まいっか。

せっかくだし、もうここで別れるのはちょっと...だから今日だけでも一緒にいようと言ってみた。


「そうだな」


これから会う方法なども話すことにした。

そして、この世界にも日本人がいたのかぁ...と改めて思った。



最後までお読みいただきありがとうございます。

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