魔王軍の訓練に……参加? 1
磨くところもなくなってしまい、心も落ち着いたところで昼食の時間が近づいてきた。
そろそろ、ザハール様と自分のために、お弁当を作ることにしましょう。
最近分かったことは、ザハール様がお肉よりもお野菜が好きだということだ。
と、いうよりも、犬耳騎士であるレオン様と竜人ラディアス様にご飯を作らせていたから、お肉ばかりの生活だったのではないかしら。
……お気の毒に、体が野菜を求めているのね?
そんなわけで、きんぴらゴボウもどき、バランホルムのお肉入りのメンチカツ、ガーダベイナの厚焼き卵、さらにサラダをたっぷりお弁当に詰める。
災害級危険生物のはずのバランホルムが、どんな形をしているのかわからないけれど、ミルクがとれてお肉もおいしいことから、牛なのではないかと予想している。
……そうであってほしいの。
ガーダベイナも災害級危険生物なのだから、このお弁当はある意味、食物連鎖の頂点に位置する者だけが食すことができるのだろう。
あまり考えたくはない。
「さ、魔王様のところに。……きゃ!」
振り返って、歩き出そうとしたところ、何かにぶつかる。鼻をぶつけてしまったので、さすりつつ顔を上げると、ものすごく迫力がある美貌の騎士様がいた。
レオン様だった。
……あれ? レオン様ってこんな雰囲気のお方だったかしら?
もしかして、見間違いなのではないかと目をこすってみるけれど、やっぱり犬耳騎士レオン様に相違ない。
「あの、レオン様?」
「リリアンヌ様、こちらへ……。一緒に来ていただけますか?」
えっ、あの! 雰囲気がいつもと違いすぎますけれども、別人が幻術を使っているとか……。
「さあ、準備はできておりますので」
「な、何の準備でしょう」
「走る、歩く、重い物を持つなどの軽い運動をしなければ、骨が折れてしまうといっておられたので、準備しています」
あ、いつものレオン様だわ。
でも、いつものように笑った顔は、人懐っこくてかわいらしいような気がするのに、目が怖い。
「大丈夫です。俺は、普段から新人の剣と基礎訓練も任されておりますので、お任せ下さい」
「へ?」
有無を言わさずに、私の手は掴まれる。
逃げる、は選べないようだ。
「ザハール様にも、お伝えしたところ、それは楽しそうだな、と仰っていたので後から合流されると思います」
ザハール様が、愉しげに意地悪な微笑みをしている姿が目に浮かぶ。
たぶん、ザハール様は、レオン様が今日も勘違いから暴走してしまったことをわかっていたのではないかしら?
な、なぜ止めてくださらなかったのですか?!
そう思ったけれど、すでにレオン様は足早に歩き出してしまった。私の話を聞くこともなく。
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