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鉄と真鍮でできた指環 ~季節編~  作者: とり
 短編3 ホワイトデー
8/36

3-2.遅刻やで。 ~ハッピー編~




   〇このものがたりは、【短編たんぺん3:ホワイトデー】『3-1.ちこくやで。~買いもの編~』のつづきです。



   ・・・



   〇登場とうじょうキャラクター紹介しょうかいです。

   ・和泉いずみ:【本編ほんぺん】の主人公しゅじんこう十七じゅうなな才の青少年せいしょうねん。【学院がくいん】で教授きょうじゅをやっている魔術師まじゅつし

   ・シロ:学院長がくいんちょうである史貴しき あおい使つか。ちょっとした事情じじょうから、和泉のようすをよくにいかされていた。

   ・史貴しき あかね十六じゅうろく才の少女しょうじょ。学院の【賢者けんじゃ】。和泉いずみが学生時代からつきあいのある魔術師まじゅつし

   ・チャコ:あかね使つか主人しゅじん以外の人はだいたいきらい。









 ―前回(ぜんかい)のあらすじです―


 四月(しがつ)十五日(じゅうごにち)が『ホワイトデー』だとおもいこんでいたモテない魔術師まじゅつし和泉(いずみ)くん。

 それとなく女子じょしから人気(にんき)のある弟子のおかげで、ようやく日づけのまちがいに気づいた彼は、バレンタインデーにチョコをくれた姉妹(しまい)にお返しをしなかったことをあやまりに、【学院がくいん】へと飛んで帰るのだった――。


   〇


 小規模しょうきぼまち、【トリス】をふもとにのぞむやまのなか。

 中腹(ちゅうふく)のひらかれた土地に【学院(がくいん)】はある。

 広大こうだいな敷地の一部(いちぶ)――学院の関係者らの居住きょじゅう区と、王城(キャッスル)めいた【学舎(がくしゃ)】をつなぐ森林の庭園(ていえん)

 その居住区側の入りぐち付近に、【賢者(けんじゃ)】の少女しょうじょ()まいはあった。

 史貴(しき) (あかね)。――おさないころに魔術師まじゅつし最強(さいきょう)称号しょうごう【賢者】の()をほしいままにした、稀代の魔女まじょである。

 彼女かのじょ屋敷(やしき)のまえで、和泉(いずみ)はうろうろしていた。

 うーん。うーん。と首をひねりながら。

「……。なにやってんの?」

「うわあっ!」

 本日(ほんじつ)二度目(にどめ)悲鳴ひめいを和泉はあげた。

 (よこ)からうさぎのみみの少女がのぞきこんでいる。

 みどりをベースにしたブレザーに、ミニスカートの格好。みじかくしたふわふわの白い(かみ)あかの、十七じゅうなな才ほどのみためのおんなである。

 学院長(がくいんちょう)史貴 (あおい)使(つか)()――。シロだ。


「なんだ。シロか……」

「なんだとはごあいさつー。てかまじでなにしてたの和泉いずみ? ついに犯罪的偏愛行為(ストーキング)目覚めざめたの?」

「ばか言え。そうじゃなくてだなあ」

 かくかくしかじか。

 ことのなりゆきを和泉は説明せつめいした。

「ふんふん」

 と聞きえて、シロが吹きだす。

「お返し? それをわすれたから、うちのご主人しゅじん(あかね)おこってるかもって?」

「そうだよ」

 ばかにされて、和泉(いずみ)はふんと(はな)らす。

 が。はッと気づいてシロにすがりつく。

「そうだシロ。実際どうだった。学長がくちょう、三月十四日(じゅうよっか)になんか不機嫌だったりしなかったか?」

「んーなわけないでしょ。あんたにチョコやったことさえおぼえてないわよ」

「ほんとかなあ……」

「疑うなあ~。まあ気になるっていうなら、私のほうから(あおい)さまにそれとなく言っといたげる。和泉がお返しわすれたことを気に()んで、べそかきながらごめんなさいって言ってましたよってね」

「まじかっ。たすかる」

「いーよ。これくらいはね」


 ぽおんっ。とシロは和泉いずみの肩をたたいた。

「それより。(あかね)のほうは? 私、もう仕事おわってあそびに来たとこだから。よかったら――」

「いっしょにいこうぜシロ。うん。そおしよーそおしよー!」

「……。……」

 他力(たりき)本願(ほんがん)和泉(いずみ)の態度に、シロはあきれてものが言えなくなった。

 ふたりで(あかね)の屋敷の門をくぐる。




   〇




 和泉(いずみ)とシロは玄関ホールにはいった。

 がらんとした空間にはだれもいない。(あかね)使つかさえ。

「おべんきょうちゅうかなあ」

「それはこまる……。あいつ。研究中けんきゅうちゅうは機嫌わるいから」

「あんたもでしょ。とりあえず。てきとーにていこっか」   

 れたようすでシロはリビングのほうにかった。

 適当にドアをけるも、なかは無人むじん

 資料しりょう室ものぞいたが、やはりいない。

「あら」

 台所だいどころのほうから声がかかる。

 ひょこりと出てきたのは、ながい茶色いかみをした、メイドすがたのおんなだった。(あかね)の使い魔のチャコである。

「これはこれは和泉さま。我が()の敷居を無断(むだん)でまたぐほどの急用きゅうようでもおありなのでしょうか?」

「う~……。そういうわけではないけどさあ」

 和泉(いずみ)はシロのうしろに隠れた。なさけないことに、彼はあかね()きだったがチャコは苦手だった。


 みっともない声を出す魔術師まじゅつしに、シロはこっそり頭痛ずつうをおぼえる。

 ともあれ。チャコにいちおういっておく。

「んなトゲのある言い方しなくてもいいでしょチャコ。おたがい知らない(なか)じゃないんだからさあ」

「で。そっちのうさぎは私とご主人さまさまのふたりだけの時間を邪魔じゃましにきたと」

結果けっか的にはそうなる。だあってー。今日きょうはもうひまを出されて、ひまなんだもん」

「……。退屈してるってのは、まあ伝わったわ」

 あきれた半眼(はんがん)になってチャコは息をついた。

 メイドの彼女かのじょのうしろから、屋敷の主人(しゅじん)が出てくる。

 つぶらなグリーンのひとみ金髪(きんぱつ)を肩くらいのながさで切った、小さな少女(しょうじょ)史貴(しき) (あかね)である。

 しろいティーシャツにプリーツスカートのシンプルな衣装(いしょう)の上には、いつもの賢者の赤法衣(あかほうえ)は着ていない。かわりに、作業用さぎょうようまえかけ(エプロン)をつけている。

「なにしてるのチャコ。お客さん?」

 すぐに茜はシロと和泉(いずみ)をみとめた。

 みためじゅっ才ほど――実年齢じつねんれい十六じゅうろく才だが――のかおに、ぱっとした笑顔えがおが浮かぶ。


「あ。シロだ。あと和泉いずみも」

 ひらひらとシロは手を振った。

「やっほおあかね。あそびに来たよん。でもっていまは、そこのいじわるな()使(つか)いにいじめられてたとこ」

無粋(ぶすい)な客人にそれを指摘していただけですわ」

 ふんっ。とチャコはそっぽをむいた。

「ふーん?」

 と茜はどうでもよさそう。

「今回はい返す必要ひつようはないよ。私も息抜いきぬきしてたとこだし」

「あのーお」

 おいてけぼりになりそうになって、和泉(いずみ)がシロのうしろからこそこそと出てくる。

「あのさ……(あかね)。オレ。てっきり今日きょうがその……。お返しの日とおもってて」

「おかえし…?」

 なんの。

 と茜は首をかしげる。

 つうじてねえなと感じつつ、和泉はとにかくあやまった。ぼそぼそと。

「おかしかなんか……。おまえに渡そうって考えてたんだけど。その。もうホワイトデーってわってたの知らなくて。……そのう」


 聞き取りづらい声だった。

 不思議そうにあかね和泉いずみをながめる。

 拾えた単語は、かなり限られたものだった。

「『おかし』? 和泉。おかしが食べたいの?」

「あっ。いや。そういうわけじゃ……」

 ぽん。

 と(あかね)は手をたたいた。和泉いずみの腕をつかまえて、キッチンに引っぱっていく。

「なあーんだ。ちょーどよかった。プリン作るとこだったんだよ。和泉にも手伝わせてあげるね。そしたらきなだけ食べていいよ」 

「あ、えーと。……うん!」

 まよったが。和泉(いずみ)はごちゃごちゃした感情(こと)はうっちゃっておくことにした。

 ふたりにつづいて、シロとチャコも台所にはいっていく。

 それからいっしょにプリンを作って、四人(よにん)で食べた。

 おいしかった。







            (【短編たんぺん3:ホワイトデー】おわり)













      んでいただきありがとうございました。








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