表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄と真鍮でできた指環 ~季節編~  作者: とり
 短編13 大晦日(おおみそか)
30/36

13-1.除夜の鐘




 〇登場とうじょうキャラクターの紹介しょうかいです。

 ・史貴 あかね魔術まじゅつ学院の魔術まじゅつ研究者けんきゅうしゃ。もとは【賢者けんじゃ】だが、ある事件によってちからをおとし、〈再試験〉を受ける予定よてい。16才。

 ・史貴しき あおい:20才の魔女まじょ魔術まじゅつ学院の学院長がくいんちょうあかねあね

 ・シロ:あおい使つか。外見の年齢ねんれい、17才くらい。

 ・チャコ:あかね使つか。外見の年齢ねんれい、18才くらい。





 ずずずずず。

 年越しそばをたべえる。

 屋敷やしきのリビングにはこたつがあった。敷きぬのの上には、東西南北とうざいなんぼくの席にひとりずつ。じゅん(あかね)(あおい)、チャコ、シロの四人よにんあしをつっこんですわっている。

 魔術まじゅつの学校【学院(がくいん)】である。

 今年は【賢者(けんじゃ)】である史貴(しき) 茜が、五(ねん)ぶりに帰ってきた年だった。

 「(あかね)来年らいねんからは平穏へいおんにすごしたい」という意味いみも込めて、あねの史貴 葵は使つか少女しょうじょシロに言って、こうして『年越しそば』という、【(うら)】の世界には普及ふきゅうしていない縁起担えんぎかつぎぎを再現して提供ていきょうしてもらっている。

 実際に調理ちょうりの大部分を(にな)ったのは、茜の使い魔である、メイド服の女性じょせい、チャコだが。

「今年もわりね」

 なが金髪きんぱつをポニーテールにった、白いセーターにデニムのパンツすがたの女、あおいが言った。

 二十才(はたち)身空みそらで【学院】を管理する学院長がくいんちょうである。

 対面たいめんでは、彼女かのじょの妹のあかねがグデーと天板(てんばん)にほっぺをくっつけてまどの外をながめていた。ねむそうに。


「ものっそい吹雪(ふぶ)いてるね」

 まどの外は黒に白の(つぶて)はしる猛吹雪だった。

 彼女かのじょたちのいるここ、学院長がくいんちょう(てい)をふくむ【学院】の全土は、大陸の北部ほくぶにつらなる山脈さんみゃく地帯――その中腹ちゅうふくに存している。

 元より気温きおんのあがりにくい地域であり、ふゆ雪化粧ゆきげしょう毎年まいとし恒例であったが、視界がまっしろになるほどにゆきが吹きすさぶのはめずらしい。

 みじかくした金の頭髪とうはつを、うとうとゆらしてあかね屋外おくがいの景色からゆめのなかへとフェードアウトしようとしていた。

 あおいがトンとこたつの天板てんばんを突っつく。

きなさいあかね。まだ最後のメインイベントがのこってるのよ」

「めーんいべんと?」

 茜はねぼけまなこをこすって、なんとかあたまを持ちあげた。

 あねが立ちあがり、かみをしばっていたシュシュをほどく。背中せなかに金の髪がひるがえり、いつものなれた――学院長がくいんちょうとして校内こうないはばかせているすがたになる。

 服装はドレスに着替えるではなく、私服のままだが。


「あ、そろそろですか?」

 シロがウサギのみみをぴょこつかせて立ちあがった。

 みどりのニット・セーターに綿めんのハーフパンツ。黒いタイツをはいた、十七じゅうななほどの少女しょうじょだ。

 あおいとシロのふたりはあわただしく仕度をはじめる。こたつの外にぬいでいた靴をはいて、服かけにひっかけていたコートと、黒法衣(ほうえ)各々(おのおの)羽織はおる。

「どっか行くの?」

「ええ。除夜じょやかねをつきにね」

「なにそれ」

 リビングの出ぐちにあるきながら答えるあねあかねは訊いた。

 葵はすこし得意気にいもうとをふりかえってゆびをふるう。

一年(いちねん)わりにつく鐘よ。煩悩(ぼんのう)を消し去るって言われててね。百八(ひゃくやっ)くの。ぜんぶ聞けば、ひとの煩悩がすべてなくなるんですって」

「ふーん。……って!」

 ――ばたん。

 あおいとシロはあかねが飛びあがる直前ちょくぜんに出ていった。

 茜はこたつに手をついて、中腰ちゅうごしになった姿勢であおざめる。


 ホワイトブリムにあかいメイド服の茶髪ちゃぱつ女性じょせい――十八じゅうはち才ほどのをした使つかが、カラになったおそばの丼鉢(どんぶりばち)あつめながらあるじ見上みあげる。

「どうなさいました。あかねさま?」

煩悩ぼんのうが消えちゃうって!」

 茜は完全に立ちあがり、このわりとばかりに両手りょうてをふった。

「そんなことになったら大変だよッ。私、止めてくる!!」

「あっ――。ご主人しゅじんさま」

 チャコはとっさにび止めた。

「おねえちゃーん。って……って。あいつワープで行っちゃった!」

 コートも着ずにあかねは駆けだしていった。

 チャコはそんな主人しゅじんを、おうかまよう。

 茜は今年の晩秋ばんしゅうに帰ってきて以来、『事故』の影響えいきょう魔法まほうのちからを劣化させている。だいぶ(こん)をつめて修行しゅぎょうしなおしたため、本来ほんらい能力(のうりょく)を取りもどしつつあるものの、五(ねん)のブランクはそう容易(たやす)く埋められるものではない。

 が。主人もまた廊下に出た矢先やさき。転移の魔術まじゅつを使って消えてしまった。


「……あおいさまがどこへ行ったのか、わかってるのかしら?」

 かさねた食器しょっきを抱えて、廊下に出たついでとばかり。チャコはそのまま水場みずばへとかっていった。




                  (【~探索編~】につづく)




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ