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鉄と真鍮でできた指環 ~季節編~  作者: とり
 短編8 七夕(たなばた)
21/36

8-4.巨大バンブーを攻略せよ。 ~願いごと編~




 〇このものがたりは、『8-3.巨大きょだいバンブーを攻略こうりゃくせよ。 ~姉妹しまい編~』のつづきです。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 〇登場とうじょうキャラクター紹介しょうかいです。

 ・シロ:外見の年齢ねんれい17才くらいの女子。学院長がくいんちょう使つか

   ・チャコ:外見の年齢ねんれい18才くらいの女性。【賢者けんじゃ】の使つか

   ・史貴しき あかね:【賢者けんじゃ】の少女。【学院がくいん】でさいきょーのちからをもつ魔術師まじゅちゅし

   ・和泉いずみ:18才の青年せいねん魔術学院まじゅつがくいん所属しょぞくする若手の教授きょうじゅ





   〇


 夕方ゆうがたになった。

 【学院(がくいん)】敷地(ない)にある【森林庭園】。

 その居住区きょじゅうく側の入りぐち付近に【賢者(けんじゃ)】の家はある。

「おー。帰ってきた」

 うさぎの(みみ)をぴんと立てて、白いボブショートの少女しょうじょ――シロが庭園の通路をのぞきこむ。

 (よこ)からメイドすがたの女性じょせいもまた、おなじようにおなじ方角(ほうがく)をながめた。

 笹をかついだ少女があるいてくる。

 (あか)法衣(ほうえ)の、【賢者】の称号しょうごうを持つ魔術師(まじゅつし)

「おかえりなさいませ。ご主人(しゅじん)さま」

 チャコはあるじにお辞儀をして出迎でむかえた。

 なが茶色(ちゃいろ)(かみ)が、夕刻ゆうこくの風にさらりとながれる。


「ただいまチャコ。あれ?」

「なによあかね

「シロもいる」

「いちゃわるいの。ちらし寿司(ずし)でもつくってやろーかなーとおもってね」

「食べたーい」

 にぱっ。と(あかね)は笑って門のまえに笹をおろした。【七.七層(ななてんななそう)】から適当に()ってきたものだ。

 チャコにたのんで、門前(もんぜん)にたてかけてたおれないよう固定してもらう。

 小ぶりな竹を見上みあげてシロはぽかんと()う。

「そーいや。茜も今日きょう一日(いちにち)いなかったね。どこ行ってたの?」

巨大(きょだい)バンブーんとこ」

「そうなの。でもあんた。ねがいごとは自分でかなえるものだ。って、だいぶんまえに言ってなかった?」

「考えかたが変わられたのですか?」

 エプロンドレスのポケットから、自分やシロのおねがいを書いた短冊を出して笹につるしながらチャコ。


 (あかね)は「ううん」と(くび)よこにふる。

 と。

 よろよろあるいてくる、白髪(はくはつ)魔術師(まじゅつし)がひとり。

「あー。くそ。ひどいにあったぜ……」

 黒い法衣(ほうえ)はきれいなものだが、顔色かおいろ下瞼(したまぶた)に疲労の色が()い。全体的にぼろぼろにみえる。

和泉(いずみ)だ。なんかあったの?」

「シロ……。なんかってうか。……聞いてくれよ~」

 へたりこむようにして和泉は三人(さんにん)のまえにひざをついた。

 黄色いサングラスのおく(なみだ)を溜めて、うおお~いおい。訴える。

巨大(きょだい)バンブー探して、七.七層(ななてんななそう)に突撃したはいいんだけどさ……。いざおくまで行ってみたら」

「行ってみたら?」

 うさぎの(みみ)をゆらしてシロが先を()かす。

 がくぜん。

 和泉(いずみ)地面(じめん)に手をついた。


「なんもなかったんだよ」

「なかった?」

「……正確には、なんかでっかいものが消滅(しょうめつ)したあとがあった。クレーターができてたんだ。たぶん。誰かが巨大バンブーを破壊(はかい)したんだ……」

 ――しかもそのあとやたら機嫌のわる学院長(がくいんちょう)遭遇(そうぐう)して、「教員(きょういん)は全員いまから生徒の無事を確保かくほすること。生徒をみつけ次第【学院】に強制転送(きょうせいてんそう)なさい。全員を送り返すまで帰っちゃだめ」と。言うなればあと片付けを(めい)じられた。

 予想以上よそういじょうにフロアに来ていた生徒はおおく、和泉はいまのいままで事後処理(じごしょり)われていた。というわけなのだが。

「ふーん」

 シロは(あかね)のほうをた。

「和泉。そのクレーター私だよ」

 あかねわるびれることもなく言う。

「でも。壊したんじゃないもん。『永遠(えいえん)におまえは()えろ』っていうおねがいを、巨大きょだいバンブーにつるしたの」

「なんでそんないじわる書くんだよ!」

 じょッ。

 と和泉(いずみ)なみだながしてわめいた。

 チャコがさっと茜と青年せいねんのあいだに割ってはいる。ついでにナイフもげておく。すこんッ。


 (あかね)はふっとさとすような笑みになった。

 なお。茜が巨大きょだいバンブーを消滅しょうめつさせたのは(ひる)ごろだが、ついでの用事ようじで【迷宮(めいきゅう)】の調査ちょうさをしていたため、帰還が夕方ゆうがたおそくなってしまったのだ。

ねがいごとってのはね。誰かにかなえてもらえるもんじゃないから、持つ価値があるんだよ。途中とちゅうであきらめるにせよなんにせよ、最終的に到達できた地点までの過程(かてい)に、強大きょうだい意味(いみ)があるんじゃないのかな」

「うううう……。こういうときだけ正論いいやがってえええ」

「私はいつだって正論だよ」

「和泉さまごとき凡物(ぼんぶつ)にはとうてい理解(りかい)できないだけですわよねえ」

「ぬがああああああああああ!」

 顔面(がんめん)に刺さっていたナイフを怒りのPOWER(パワー)で吹っ飛ばして和泉はふたり――特にチャコにつかみかかる。


 うしろから和泉いずみ羽交はがめにして、シロが止めた。

「まあまあ。いーじゃん。和泉(いずみ)残念ざんねん(しょう)ってことで。そこにある笹にならいくら願掛(がんか)けしてもいいからさ」

「……えんりょしとく」

 和泉は持っていた短冊(たんざく)をポケットに隠した。

 屋敷(やしき)(もん)のまえに飾った笹に、(あかね)はてくてくあるいていく。

「私はかざろーっと。せっかくの七夕(たなばた)だもんね」

「なんだよ茜。ねがいは自分でかなえるものなんだろ?」

「うん。だって笹の()にはいくら願掛(がんか)けしたってかなうわけないんだもん。だからこっちのにはいくら抱負(ほうふ)をつったっていいんだよ」

「おまえ。むなしいこというなあ……」

 かくんと和泉(いずみ)はうなだれた。

 シロは短冊をひっかけている茜に訊く。

「で。茜はなんておねがいしたの?」

「ふふん。私はつねに成長せいちょういのるのさ。まあ。結局けっきょくは私の行動しだいなわけだけど」

「んなこと言って……。おまえにだって、どう頑張がんばったところでどうにもならないことのひとつやふたつ、あるだろ」

「そうかなあ」

「……短冊。てみてもいい?」

 和泉は(あかね)に断って、(ささ)()に手をのばす。


「いーよ」

 とあかねは言ったきり。チャコとシロとの雑談(ざつだん)にもどっていく。

「あー。(あおい)さまもちゃんと帰ってきてるのかなー。心配しんぱいだよー」

 シロは気が気じゃないようす。

 ほそい枝にゆれる薄紅色(うすべにいろ)(かみ)和泉いずみは取った。

 まあ(あかね)は【賢者(けんじゃ)】だし。魔術(まじゅつ)の天才なわけだから、やろうとおもってできないことはない。

 『成長(せいちょう)をねがう』とは言っていたが、おおかた魔力(まりょく)の増幅や、難解なんかい魔術書(まじゅつしょ)解読(かいどく)をねがったといったところだろう。

(なんか……。おまえとはどんどん()をつけられていく気がするよ)

 すこしさみしい気持ちになりながら、和泉(いずみ)短冊(たんざく)をひっくりかえす。

 そこにはこう書かれていた。



   ――身長(しんちょう)があと十五じゅうごセンチはびますように。




                 (【短編たんぺん8:七夕たなばた】おわり)








 んでいただきありがとうございました。



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