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鉄と真鍮でできた指環 ~季節編~  作者: とり
 短編7 梅雨(つゆ)
16/36

7-3.幻の貴公子 ~大体こんな感じ編~




 〇このものがたりは『7-2.まぼろしの貴公子きこうし ~おっかけへん~』のつづきです。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 〇登場とうじょうキャラクター紹介しょうかいです。

 ・『メイ・ウォーリック』:黒いロングヘアに黒目くろめの十七才の魔女まじょ。【学院がくいん】の高等部三年生こうとうぶさんねんせい。【貴族きぞく】のおじょうさま。

 ・『リョーコ・エー・ブロッケン』:あかいセミロングに赤目あかめの、二〇はたちの女魔術師。【学院】の研究所けんきゅうじょにつとめている。メイの友達。




   〇


 ひゅるるるるるるるる。

 ぼとっ。

 リョーコは森林のなかに(あたま)から着地(ちゃくち)した。

「……。……」

 先客(せんきゃく)少女(しょうじょ)は、(つち)にさかさまに埋まっている先輩(せんぱい)魔術師まじゅつしおろす。

「どうしたんですかブロッケンさま。靴もはかないで」

 はしたない……。

 とあきれて、彼女(かのじょ)――メイ・ウォーリックは〈銃器(じゅうき)〉の練習(れんしゅう)中断(ちゅうだん)した。

 いちおうの友人(ゆうじん)――リョーコを地面(じめん)からすっぽぬく。

 ぽんっ。

「あー。たすかったわ。ありがとメイちゃん」

「どうも」

 ウエストにいていたカーディガンをメイはリョーコにげた。

 射的(しゃてき)をはじめるまえまで着ていたものだが、訓練をしているうちにあつくなったので、いまはカットソーいちまいである。


 魔力(まりょく)でつくった〈マスケット〉をたずさえて、メイは近くの切りかぶに腰かける。

「また史貴(しき)先生のご不興(ふきょう)を買ったのですか?」

「まあ。そんなとこなんだけどさ」

 立ったままかりた上着にそでをとおして、リョーコ。サイズがすこしでかい。

 メイはうろんげに、むらさきがかった(ひとみ)を濁らせた。

なさけない。あんな庶民(しょみん)むすめ毎回(まいかい)してやられるなんて。あなたはそれでも(ほこ)りある大家(たいか)子女(しじょ)なのですか?」

「うっさいなあ。家がどーとかいうまえに。私は私なのっ」

「わたくしたちに、それが通用(つうよう)するくらいなら……」

 そこから先はただのグチをばらまくことになりそうだったので、メイは手でくちを閉ざした。

「なあーんか。(あおい)のあほがまーた色ぼけたみたいでさ」

 リョーコはやけくそに、連日の(あめ)でぬかるんだ地面(じめん)をはだしで踏む。今日(きょう)はまだ曇っているだけだが、そのうちにまた降りはじめることだろう。


「『まよなかの奇行者(きこうしゃ)』って言ったかな」

「まぼろしの貴公子(きこうし)?」

「そう。それ。さっすがメイちゃん。(みみ)がはやいわね」

家業(かぎょう)情報屋(じょうほうや)をやっておりますので」

 メイはたっぷり皮肉を込めて言ってから。

「それに。【学院(がくいん)】でいまホットな話題ですものね」

「へーえ」

「ただ。ブロッケンさま。あれは……」

「みなまで言わないでよ」

「あれは、」

「わかってるから――」

「あなたのことですわよね?」

「言うなっつってんでしょおおおおおお!」

 リョーコは樹の(みき)に取りすがってなげいた。

 そのままよろよろと地面(じめん)つんばいになる。

 メイは一言ひとこと、「服、よごさないでくださいね」とクギを刺した。




 

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