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鉄と真鍮でできた指環 ~季節編~  作者: とり
 短編5 母(はは)の日
12/36

5.黄色いカーネーション




   〇にわか知識です。『まちがい』や『かんちがい』をふくみます。


   ・・・


   〇登場とうじょうキャラクター紹介しょうかいです。

   ・メイ・ウォーリック:17才の魔女まじょ魔術まじゅつ名門めいもん校【学院がくいん】に所属しょぞくする、高等部の三年さんねん生。

   ・結鶴ゆうづる 小機こはた花屋はなやの店員。











 (まち)花屋(はなや)とおりがかった。

 【学院(がくいん)】のあるやまのふもとのまちトリス

 中世(ちゅうせい)欧風(おうふう)街並まちなみの、かたすみに出ているワゴンの小さな花屋。

 荷台に色とりどりの植物(しょくぶつ)が積んである。

(はは)の日。ですか?」

「はい。そうなんですよ。お客さん」

 手押ておぐるまにある、カーネーションをけたバケツにさした『母の日のプレゼントにどうぞ』のポップ。

 それをみて、なが黒髪(くろかみ)魔女(まじょ)は聞いた。

 快活かいかつに答えたのは、三角巾(さんかくきん)にエプロンの女性じょせいである。名札なふだには結鶴ゆうづる 小機こはたしるされている。

 本名ほんみょうかビジネスよう偽名ぎめいかは不明ふめいだが。

「あ。【(うら)】ではまだ定着しきってないんですね。買ってくれる人が増えたから。てっきり……」


 魔女まじょ――メイ・ウォーリックは、白と薄紅(うすべに)のワンピースドレスをつけた身体をかがめて花々(はなばな)をながめた。

「わたくしは初耳(はつみみ)ですわね。なにぶん不勉強ふべんきょうでして」

「じゃあこの機会に。『ははの日』っていうのは、そのまんま。母親ははおやに日頃の感謝を伝える日なんです。五月の第二(だいに)日曜(にちよう)がその日で、カーネーションをプレゼントするのがならわしみたいになっていますね」

「つかぬことをききますが。なぜカーネーション?」

正確せいかくなことはわたしも知りません。でも『母性(ぼせい)象徴(しょうちょう)』とも言われますし、その関係でしょうか。もちろん。はな言葉ことばとのむすびつきも無視むしできませんが」

「これは?」

「はい?」

一色(いっしょく)だけ大量たいりょうにのこっていますが。黄色きいろの」

「……。『(あか)』がずばり、『(はは)へのあい』。『(むらさき)』には『気品(きひん)』の花言葉はなことばがあります。でも。『黄色のカーネーション』は『軽蔑(けいべつ)』で……。それで。避けられるかたもおおくて」

「そうですか」

 すっ。

 かたにかけていたかばんからメイは財布を取りだした。

「では店員さん。黄色いのをひとつください」

「あ。はい」


 結鶴ゆうづるはリボンとかみ一輪(いちりん)のカーネーションをラッピングした。

「でもお客さん。いいんですか?」

 おずおずメイに渡す。

はな言葉ことば。気にされないかたなんですね」

「いえ。関心はありますし、わたくしは意味(いみ)あいごと(はは)おくるつもりです」

「だ……。だいじょうぶなんですか?」

「ええ。多少たしょう毒気どくけもふくめて、黄色(きいろ)いカーネーションが一番いちばんすてきにえたので」

 結鶴ゆうづるはぽかんとした。

「それに。ははならきっと、我が子(わたくし)の気持ちをわかってくれますわ」

 一輪(いちりん)分の小銭(こぜに)をメイは差しだした。

 あわてて店員はお(かね)を受けとる。

「ありがとうございました」

「ごきげんよう」

 あいさつをして、メイはストリートをあるいていった。




   ――例年(れいねん)どおり、『黄色いカーネーション』は売れのこった。







                    〈【短編たんぺん5:ははの日】おわり〉













      んでいただき、ありがとうございました。





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