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71話 ご令嬢にテンマ村、案内します。


食後、俺とシンディーは、ナターシャに村の中を案内することにした。


公爵からあのような手紙を受け取った以上、彼女はしばらくテンマで預かることになる。


とすれば、生活する場所のことくらい知っていた方がいい。

そう考えたのだ。


「ここは、工場こうば……?」

「あぁ、古代の技術を応用して、いろんな便利道具を作ってもらってるんだ」

「どうりで、見慣れないものばかり。でも、あの水の湧くグラスはうちでも使っているのを見た。ここで作ってたのね」


まず連れていったたのは、魔導具の生産工場だ。


そこでは大勢のドワーフたちが作業に勤しんでいた。

それだけではなく、すっかり分業化が進んでいる。


一つ一つの部品を作る班に、組み立て班、仕上げ班と、それぞれいい塩梅に人員が割かれていた。


俺はその全体を俯瞰して、あることに気がつき、近くへと寄る。


作業に没頭していたドワーフらは、そこでようやく俺たちが来ていたのに気づいたらしい。

ざわつき出す彼らを、首長であるドワドが締める。


「領主さま! 見にきていただいたのですね、光栄でさぁ」


慌ててこちらへ出てきて、頭を下げた。

元来背の低い種族だけに、より一層縮こまって見える。


「そんな仰々しく迎えないでくださいよ。それより、その水の湧くグラス。少し変わった形をしてますね?」

「あぁ、お気づきになられましたか! さすがお目が高い。でも見た目だけではありませんよ。使っていただければ、わかります」


ドワドは、よほど自信があるらしい。さぁさぁとやたら進めてくるから、俺はとりあえずそのグラスを手にする。

 すると、どうだ。湧いてきた水が、今度はふつふつと音を立てて、泡を作り始める。

 グラスも急激に熱くなっていた。


「お湯になった……のか」

「へへ、まあ。火石を使って、温熱効果を引き出したんでさぁ。まだ試作段階で安定しないんですがね」


だとしても、試みとしては面白い。


「それぞれの道具はあっても、一つにするのはわたくしの時代にもなかったです」


これにはシンディーも目を丸くしていた。

さすが物づくりに関して、右に出る者はいないとされる種族だ。ドワーフらはかなりの熱量と技量を持っている。


ならば、少しでも力になりたい。

俺は、手元に魔力を集めながら、細かいイメージを固めていく。

湯が沸くならば、外側が熱くならないよう陶器製で、かつ急に沸いて零れださないよう、自分でタイミングを調整できるものがいい。

その外観のイメージが固まったところで、


「錬金生成!」


一つの容器を作り出した。

俺はそれを少し屈み、ドワドに渡してやる。


「おぉ、これは……ガラスではなく、陶器。それにこの裏側のものは――」

「その出っ張りを押し込むことで、湯が沸くようにしたんだ。これで、水にも湯にもなる」

「なんて便利なんだ。さすがは領主様でさぁ!」 


ドワドは色々な角度からそれを見る。

シンディーも一緒になって、容器を覗きこむ。


「ここに、茶葉入れを作ってもいいかもですね。直接お紅茶が飲めますよ」

「おぉ、たしかに……。それはいい機能になりそうですね……! であれば、手入れがしやすいように取り外し機能も加えたいですなぁ」


二人とも、ものづくりに長けているだけのことはある。

論議に花が咲く。


「さっそく、これをもとに改良を進めていきます!」


それが終わる頃には、ドワドのものづくり魂に火がついていた。

彼は俺の作った容器をまるで神々への供物かのごとく持ち上げて、仲間の元へと戻っていく。


彼らが完全に去ってから、ナターシャはやっと口を開いた。


「すごいわね」と。


……相変わらず、人見知りは全開らしい。




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