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24話 【sideアクドー】王側近の立場を追われて……


生まれながらにして、人は恵まれたものとそうでないものとに区別をされる。


それは理想論を語ったところで、どうしようもない、この世のことわりだ。



その例によって、アクドー・ヒギンスは今日もまた、公爵家の恩恵を存分に享受していた。


「僕が、あのカスと同じだなんて……」


ろくに身分のありがたみも知らず、アクドーはふてくされる。



王の側近を解雇させられ謹慎期間の三ヶ月を解かれたのち、彼には再び官位が与えられていた。


辺境地領主の職である。


それは、数ヶ月前にディルックが与えられたものと同じものだった。



ただしそこは、公爵家である。

場所は、父に頼めば選ぶことができたため、あえてテンマとは森を挟んで隣町であるローザスをアクドー自身が選んだ。


ローザスは、テンマよりは幾分開発が進んでおり安全度の高い土地である。



王都に魔物を侵入させる大失態を犯したことを思えば、その処分はかなり甘い。

背後に、権力者であるヒギンス公爵がいなければ、クビでは済まず処刑されていてもおかしくはなかった。


けれど、たとえ王であれ、それを言い渡すことは力関係などを鑑みれば、できなかったのだ。



しかし、驕り高ぶる彼はそんなことには気づかない。


「アクドー様、馬車の出発用意ができました!」

「ふん、遅いぞ! 僕を誰だと心得るか。早くしろ! ちゃんと警備はつくんだろうなぁ?」


「もちろんでございます。ヒギンス家直属の傭兵団が、道中も向こうでの生活にも身辺を警備いたします!」

「はっは、そりゃあ安心だ。ちゃんと働けよ、てめぇら」


真昼間の出立だった。


ヒギンス家は、公爵家の中でも強い権力をその手に握る今をときめく一族だ。


普通であれば、民衆や貴族らの見送りがあって然るべきところだったが、


「なんだ、誰もこないのか! この僕が王都を去るというのに」

「そ、それは……」


答えにくそうに口をつぐむ部下を前に、アクドーは舌を打つ。


思い馳せるは、公爵令嬢のナターシャ・ウォーランドだ。


最後だからと手紙を送ったのだが、探すまでもなく彼女は来ていなかった。



数刻、未練がましく待つアクドーだが、一向に訪れる気配はない。


「あの、アクドー様。そろそろ出立をしたいのですが。お気持ちはわかるのですが、これ以上は待っても……」

「もういい。てめぇら、早く行け!! それ以上、なにか言ったら首はねるぞ!」


痺れを切らして、部下たちにこう指示をした。


誰に声をかけられることもなく、ただただ白い目を浴びせられて、王都の門を出る。



「ふぅ、やっと出ていったか。せいせいしたぜ、あの人の酒癖の悪さときたら酷かったしなぁ」

「俺は殴られて、物を奪われた事があるよ。傍若無人かつ尊大な態度、本当に耐えられなかった」


「公爵家の恥よね、あんな奴。私も口説かれたことがあったけど、速攻断ったわよ」



アクドーの去ったあと、街ではこんな声がひそひそと囁かれていた。





途中途中で豪遊をしながら、アクドーたち一行はローザスタウンへと入る。


到着するなり、彼は町の中心で宣言する。


「今日からこの町の領主様は、僕だ。従わないものは、どうなるか分かるなぁ? 僕は、ヒギンス公爵家の人間だぞぉ」


アクドーなりに、色々と考えた結果であった。

ただ、その答えが最悪の着地点を見たというだけのことである。



どうせ領主になるのだ。

であれば、好き勝手に支配して、全てを思い通りにしたい。


なんの考えもない、単純なる征服欲からの行動であった。


「さっそくだが、こんなボロい館は、僕の住む屋敷にふさわしくない。夜が来るまでに、建て替えろ」

「ふ、ふざけるな! そんなことできるわけないだろ!」

「……あぁん? 誰に向かって口聞いてんだ、てめぇ!」


アクドーは容赦なく、声を上げた住民を蹴りつける。

周囲の傭兵団に刀を抜かせて、その住民へと突きつけさせた。


悲鳴が町から聞こえるが、アクドーはニタニタと口角を吊り上げ顔を歪ませる。


「さぁどうする? 命惜しけりゃ、早く取り掛かれ!!」

「は、はいっ!!!!」



アクドーの新領主就任は、ローザスタウンの住民にとって、突然訪れた災害に等しかった。


前領主は、ごく一般的な統治をしていたから、その落差は酷いものである。



本来、領主には幅広い知識や経験が求められる。

それらを用いて、さまざまな政策を立ち上げ、実行へと移していくのだ。


しかし、それらを一切持たないアクドーは、止まることなく暴走した。



本来、それを抑えるはずの目付役を連れてこなかったのが、問題だった。


「ゲーテ王の元側近だぞ、僕は! 目付けなど必要ない。辺境地くらいどうにでも支配できるさ」


などと思い上がり、独断だけで王都に残してきたのだ。




アクドーはその後も、自分に都合のいいものだけに利益を与え、それ以外のものからは搾取を繰り返した。


「僕はもっと領地が欲しい。どうせ辺境地に赴任したんだ。『開拓』するのも面白いと思わないか、てめぇら。

 あたり全てを僕の領土にするんだ」


恐ろしい統治が、平然と横行する。



「金と珍しいものを独占的に流すことで、商人ギルドを牛耳る権利をいただけるとは……。なんとも最高の領主さまだ、アクドー様」

「アクドー様、我ら山賊団を雇用するとは実にお目が高い!」

「この奇術の力、ぞんぶんにお貸ししましょうぅ。このドルトリンにお任せあれぇ」


金や権力に目の眩んだ、信のおけないゴロツキたちが彼のもとに参集する。

 

ろくに素性も確認せず、それらを全て抱え込んだアクドーは、大きな力を手にしたと、領主の座で踏ん反り返るのであった。


「馬鹿な奴よ、しょうもない貢物で釣られるとは、

まぁいい、ギルドはしたいようにさせてもらうとするかな」

「馬鹿な殿様は大歓迎だぜ、ハッ!」

「全くだ。すくうには、絶好の寄生先であることよ」


裏で、こんな会話が交わされているものとも知らず。




金で寄り集まった人間は、離れるのも容易いらしいですよ。。


今日も引き続きよろしくお願いします〜! お気に入りや評価などお気軽にくださいませ。



たかた

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【コミカライズ告知】 当作の2巻紙版が発売されました! 今回も漫画家様に素敵に仕上げてもらいました。 書店様などで見掛けられたら、ぜひお手に取ってくださいませ。 (この画像がノベマ! さんへのリンクになっております) 1037.png?d=20231120052239
また、2巻は電子版もございますよ!
― 新着の感想 ―
[一言] 脅しのための証紋が要りますね!
[気になる点] アクドーが食い散らかした商隊の食糧等はきちんと弁償されたのでしょうか?
[気になる点] いやいや。強盗と監禁と殺人未遂までしたアクドーを監視役すら付けずに放逐するとか・・・稀にみる無能の王でもそこまでしないでしょw
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