第五話 大切な友人です
すみません…ものすごく遅くなりなした。
何度も言いますが気まぐれです。
クラスメイト会議が行われたのは朝食を取った後になった。
皆考える時間を取ったからかだいぶ落ち着いていた。だからこそ周りが見えるようになったのだろう。辺りをキョロキョロしながら状況を確認しようとしている。
朝食はその方が安心するだろうと広い部屋で皆で取ることになった。ここでの朝食は勇者だからか豪華なものが出たが皆食欲がないのかあまり食べようとしなかった。
その後冷が僕達だけで話したいと朝食の皿を片付けてもらってからこの城の侍女達には部屋を出てもらった。
「じゃあみんながこの状況をどう思っているか聞きたい」
「う〜ん正直戸惑ってる。ただ、今俺達に起きていることは現実だと思う。なんとなくだけど何か確信がある」
冷の質問に答えたのは斉藤封次。一年生から二人でる生徒会役員の一人だ。
「私もそんな気がする。痛みがあるから夢じゃないし、味があるし、それに斉藤くんの勘って結構当たるから」
封次に賛同したのは草壁花音。封次と同じ生徒会役員の一人だ。同じクラスに生徒会役員が二人いる理由はよく分からん。
「私もその意見には賛成かな。少なくともドッキリとかじゃないと思う。ただ魔族と戦うとかよくわからないことが多すぎる」
今のは冷と同じく学級委員の石川沙耶。成績優秀の優等生だ。
「なんで魔族は人を食うんだろう。それにあの老人、魔族を滅ぼしてって言ってたけど魔王を倒してとかじゃないんだ。いや、似てるんだけどこういう場合魔王を倒してとかじゃない?」
蒼奈の疑問に皆が考え込む中、冷が俺に質問してきた。
「巨宮はどう思う?」
「…逆に聞く。なぜ俺に聞く?」
「えっ、だって巨宮ってさ、クラスの中心じゃん」
「…どういうことだ?」
心底分からないと冷に聞き返すと、蒼奈、花音、封次、沙耶をはじめとした皆が熱弁してきた。
「キヨ、当たり前じゃん。このクラスになってからずっと、このクラスの中心ってキヨのことだよ」
「そうだよ。生徒会でも注目の的だよ」
「生徒会どころか学校でお前のこと知らないやついるか?教師も含めて」
「高校入試からずっと学年一位で成績優秀、運動神経抜群、しかもイケメンな人を知らない人はいないと思う」
「しかも体育祭で蒼奈さんと二人三脚障害物リレーで圧倒的勝利だったのは有名だよ」
「その体育祭とかクラス対抗の勝負で1組がことごとく勝ってるのは巨宮のおかげじゃん」
「そうそう。巨宮君が皆を引っ張ってるからだよ」
……………そうか。まさかそう思われてるとは知らなかった。
「キヨってば、他のことは全部出来るのに、他人からの評価には疎いよね」
そうか。魔王だった頃の名残か。
魔王イルガル・アルティシナだった頃の俺は正直周りからの評価にうんざりしていた。
魔王というだけで人間に疎まれ、イルガルのことを知らないのに魔族からは慕われる。戦争を終わらせたことで俺自身を見る者もいたが、そんなものはただの有名人に対する興味みたいなものだ。
肩書しか見ない者たちを見るたび、周りからどう思われても良くなった。
そして、周りからの評価について考えなくなった。無意識に拒否していたかもしれない。
それが曼珠巨宮になっても引きずってたのか。
「ありがとう」
無意識に言葉が出、笑みがこぼれた。
曼珠巨宮を見てくれることに対して。
以前は一人しかいなかった友人がこんなにも沢山いることに対して。
「先程の質問だか、皆の考えは大体当たってる」
クラスメイト達は少し目を見開いて礼を言われた理由が分からず困惑していたが、俺の言葉に「やっぱり」と何かに確信がついた顔をしていた。
「どうした?」
「さっき、朝食食べにここに集まったときさ、巨宮最後だっただろ?その時皆で話してたんだけどさ、巨宮はこの世界知ってるだろ」
「…どういうことだ?」
冷の指摘に疑問を返すと的を得た答えが返ってきた。
「召喚された時の落ち着きや、魔力なんて本来馴染みがないものの数値が分からないのに焦らなかったでしょ。いや、巨宮はそういったことにあまり動じないけどさ、なんとなくいつもの分からなくても落ち着いてる感じじゃなくて、何か確信があって落ち着いてる気がしてさ」
「それにキヨ、私ちらっと見たけど、召喚の魔法陣見たとき少しだけ懐かしそうな顔してたよ。キヨは飄々としてあまり心の内を出さないけど、付き合いが長い人には分かるんだよ」
「………」
返す言葉が無かった。
このクラスメイト達は俺のことをよく見てるらしい。そんな些細な変化でも気づくとは。
言ってしまおうか。
今まで誰にも言わなかったことを。
勘付いてしまうほど俺を見ている、
大切な友人達に。
いや、言わないほうが良いのかもしれない。
奇異な奴とでも思われるだろう。
そんな俺の手を取る者がいた。
無意識に俯いていた顔を上げると、蒼奈が俺の手を自分の両手で包み込んでいた。
その周りには先程まで椅子に座っていたはずの友人達がいた。
「大丈夫だよ、キヨ。このクラスはキヨのおかげで皆仲良しだもん。」
「そうさ、巨宮知ってるかい?皆は君が皆自身を見てくれるから君のことを知りたいんだよ。君は人の名前を名字で呼ばないだろ?」
「俺も最初は人それぞれだと思ってたけど、だんだん、巨宮が意図してそうしてる気がして、体育祭の後ぐらいに皆で話したんだよ」
「私は言われてからそうかもしれないって思った」
「そうそう、その時意見が皆で一致したんだよ」
「「「「「「「ね〜(な〜)」」」」」」」
蒼奈、冷、封次、沙耶、花音の言葉に皆が同意していた。
確かに俺は意識してそうしていた。
「だから教えてよ。キヨのこと」
情けない。
恐れるものなどない魔王がこんなことを迷うとは。
この友人達は俺のことをこんなにも信頼しているのに。
「あぁ。言おう」
「キヨ?涙?始めてみた」
「……?」
蒼奈が俺を覗き込んでいた。
ここで初めて俺が涙を流したことに気付いた。
驚いた。涙を流したのは、
「…約2300年ぶりか」
「「「「「「「………え?」」」」」」」
「?あぁ、今話す」
俺は話すことにした。
俺について、俺の前世について。
「確かに俺はこの世界を知っている。俺にはこの世界で生きた前世がある」
「………キヨ、覚えてるの?」
「あぁ」
「………君のことだから信じるよ」
「………あっさり信じるんだな」
冷があっさり信じることに驚いた。
「いや、なんとなくありえないと思ったけど、君がこの世界を知ってるかもって思った時に少しだけ予想してた。ほらファンタジーとかではよくあるじゃん。それに君は嘘はつかないしね」
「この意見に賛成の人、手を上げて下さい」
いつもの学級での話し合いのように沙耶が言う。
「はい、全員一致ですね。っということで曼珠くん安心してね」
「僕たちが君を避けることはないから」
「ホント、何心配してんだか」
「………クッ」
笑ってしまった。
よく心が読めないと言われた俺の感情をこうもはっきり読むことが出来る者がこれ程いるとは。
「少し詳しく説明すると俺は魔王だった。」
「「「「「「「え、えええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」
「そこは驚くんだな」
友人達の驚きどころが分からないと思ってしまった巨宮だった。