第三話 ここはイミニカルです
召喚されましたね…
少し説明があります。
「ここは何処だ?」
「何が起こったの?」
召喚されたクラスメイトたちの言いたいことも分かる。
魔法を知らぬ者達がいきなり別の所に移動させられたらこういった反応になるものだ。
あいつもそうだったらしいしな。
ちなみに俺はこの場所を知っている。
以前のイミニカルの人間の国ミシシーナの王都シンガンにある人間の王城ランガルの中の勇者を召喚する場だ。来たことがある。
もちろん魔王だった頃の話だが。
しかしここが今も王城かは知らない。魔族の王である俺が魔王から降りたのだ。人間の王も降りたと思うが、イミニカルから去った俺はその後どうなったか知らないからな。
「よくぞおいでくださった。勇者様方」
混乱していたクラスメイト達によく通る声で話し掛けたのは白い髭を生やした老人だった。
クラスメイト達も静かになり、老人の言葉に耳を傾ける。
「此度、皆様をお呼びしたのは他でも無い、魔族を滅ぼして頂きたいからです。魔族とは人間の事を何とも思っていません。あまつさえ人をとって喰らうのです。どうか我らを救って頂きたい」
ふむ、この老人は人間の中でもそれなりの位置に居るようだ。老人が持つペンダントの色は少し薄い紫。この世界の人間は首から下げたペンダントの飾りの色によって地位が分かるからな。上から白、紫、赤、青、黃、緑、黒に分かれる。紫の中でも薄かったり、濃かったりするがな。薄い方が地位が高い。
もっとも、白は王族で黒は人間として認められて無い人だがな。大罪人とかだ。
ちなみに平民は普通の緑になる。
「いくつかお聞きします。ここは何処ですか?勇者とは?魔族を滅ぼすとは僕達がやるということですか?」
「ここはイミニカルという世界にある、王城ランガルです。勇者とはここにいる皆様のことです。そして勇者にしか魔族を滅ぼすことが出来ぬのです。そのための能力は既にお持ちのはずです」
冷静に判断して問いかけたのは学級委員の川沢冷。頭の回転がはやく、冷静になるべきときに必ず冷静になる男だ。普段は年相応の高校生だが。
「勇者……魔族……召喚?…異世界?…………能力持っている……」
「蒼奈?どうした?」
「ステータス。うわ!」
老人の言葉に一番反応してるのが隣にいた。
何か言ってると思ったら何かに思い至ったらしい。
そういや蒼奈はこういった物語好きだったな。異世界とか魔法とか。
こういった場合ステータスが出るとでも考えたんだろう。
実際、召喚された者はステータスを見ることが出来る。
本当に出来るとは思って無かったのか自分で驚いてるがな。
「スゲー、ステータス出た!」
「ってことは…夢じゃないよな…」
それを見たクラスメイト達もステータスと唱え始めた。
ステータスが出た事で色々理解してきたらしい。少し落ち着いてきた。
「ステータス」
俺も唱えてみる。
ステータスを見るのは初めてだ。
俺は正真正銘イミニカルで産まれた魔族だったからな。
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曼珠巨宮/イルガル・アルティシナ 魔族
魔力量 •°$|°°°¢€√™°|°
頑丈 Lv:'*¶°$$
称号 魔王、精霊王の加護、召喚による加護
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ふむ、壊れてるな。
イミニカルの魔法は誰もが様々な属性の魔法を使える。
ただ、この世界には称号があり、称号とは正式に認められた二つ名や、精霊などの加護のことをいう。召喚されたときに加護がつくがそれも称号になる。称号があることでそれに関する魔法が使いやすくなったり、威力が高くなったりする。
俺の場合、魔王であることで殺傷性が高い魔法の威力が高かったり、精霊王の加護によって全体的に魔法が使いやすかったりする。魔王と精霊王の加護の効果はこれだけでないがな。
召喚による加護はステータスが見えるようになる。
この世界はHPを表すことが出来ない。
生き物の命を数値で表すことはまず無理だ。"死"を明確にすることが出来ないからだ。
だから攻撃したときの体の頑丈さだけLvで無理矢理表している。
「今から皆様には魔力量測定をして頂きたいと思います。皆様の今の実力を把握するためです。ここにある水晶に触れてください。皆様が今確認したステータスの魔力量と同じ数字が表示されます」
魔力量測定か…皆がどれぐらい魔力を持っているのかを知るいい機会だな。
クラスメイト達が次々水晶に触れて行く。
どうやら一番魔力が多いのは冷らしい。魔力量3500か。次に多いのは蒼奈が魔力量3200。一番少なくて2800か。召喚による加護によって魔力量が上がってるからか。
魔力は生き物なら皆持っている。ウサギなどの小動物は30位、熊などの大動物になれば300位になる。魔物化した小動物は130、大動物は800位になる。竜などの大動物より巨大だったり、少し特殊な種類だったりした場合は比べられないほど魔力量は多いがな。それが普通の人間となると、大体150位で魔族は1000になる。人間の有名な魔法師になるには1200を超えないといけない。2000を超える者はあまりいない。ずば抜けてとび抜けるものがいない訳ではないがな。
「キヨ?あとキヨだけだよ?」
「あぁ、すまぬ。少し考え事をな」
俺は水晶に近づいて行く。そして右手を何もない動作でのせる。表示された数値は
《•°$|°°°¢€√™°|°》
この水晶はステータスと同じ性能らしい。
全く同じ記号が出た。
「キヨ、これ何!??」
「…そっ、そんな、この水晶は全ての生き物の魔力量を測れるというのに…」
「強いのか弱すぎるのかどっちだよ!」
これを見ていたこの場全員がしばらく誰もが驚きと困惑で言葉を発することが出来なかったが、蒼奈が言葉を発した事で次々に皆が思いを現にする。
「何をそんなに驚くんだ?分からなければ調べたり試したりすればいいだけだ。そこまで驚くことなのか?」
「キヨ、ここは誰もが驚くとこだよ。ってゆうかステータスに表示されてるの?」
「いや、されてない。数字化されてないのは魔力量と頑丈だな」
「…そういや私、キヨが慌てたり驚いたりしたとこ見た事ないかも…これで驚かないって…キヨ、異常?」
蒼奈が何かつぶやいてるが、今はミシシーナの者達がどうするかだな。
ミシシーナの者達はしばらく困惑していたが、やがて取り戻して何事もなかったようにつくろった。
「そ、そうですな。そのうち明らかになるでしょう。では皆様今日の所はお休みください。部屋と湯をご用意しております」
そうして俺達はとりあえず解散となった。
人間の色が薄い方が地位が高いのは魔族が黒に対して人間が白という感覚が残っているからです。
次回はクラスメイト会議になります。