高校生な千恵ちゃんと告白
なろうラジオ大賞に応募するために執筆した短編です。今回で完結とさせていただきます。
町を一望できるほど高い丘に昂然と生える一本杉。そんな一本杉の存在感と町の永続的な豊かさは最高のロケーションを織り成す。新緑の木漏れ日を浴びて、心地よい春風が彼女の着ているセーラー服をなびかせる。
千恵ちゃんは高校生になった。
「きょ、今日は来てくれてありがとう!」
目の前の男子は赤面させた顔を悟らせまいと常に斜め四十五度に会釈気味だ。
「そうね。で、用件は?」
「あっ、えっーと……」
煮え切らない態度だが、一本杉の下で行われるイベントといえばひとつだろう。誰しもが一度はこんなジンクスを聞いたことがあるだろう。
『伝説の木の下で告白すれば二人は結ばれる』
今回はもちろんそれに例外ない。
「実は僕、君のことが好きです」
彼の顔は沸騰しそうなぐらい紅潮していた。
「なるほどね。分かったわ。じゃあもう私は行っていい?」
「えっ?」
彼は豆鉄砲を食らった鳩のように慌てふためきだした。
「第一、私を好きになった理由ぐらい教えてくれないの」
「それは……」
一瞬は戸惑った彼だか、すぐさま覚悟が見受けられた。
「僕は君の笑顔に心を奪われた。君とは廊下ですれ違うぐらいの仲でしかないけど、それでも君は他の女子よりずっと魅力的だ!」
「……。あんたバッカじゃないの!」
千恵ちゃんの放った力強い一言は、辺りの張り詰めた空気を砕いた。
「女の子にとって笑顔は標準装備なの。女の子だけじゃないわ、あんたにも備わってるはずよ。そもそもねぇ、SNR団の団長である私に恋愛をしている暇はないわ。」
「ご、ごめん」
「なんで謝るの?」
またしても「えっ」と不思議そうに声を上げた。
「さっきからあんたの顔には笑顔がないわ。私はあんたの笑顔まで奪ったつもりはないわよ。それとおどおどしすぎよ。もっと胸を張りなさい」
千恵ちゃんは今も昔も人ためを思って生きている。その本質は何も変わっていない。
「あんなには他の人にはない勇気があるわ。だからその自信のない表情さえ捨てたら、きっとあんたはカッコいいわ」
そう言ってニカっと微笑む彼女の笑顔を今までで一番魅力的だった。
「じゃあもう私は行くからね」と千恵ちゃんは早足でその場を後にした。彼女の右手には一冊の本があった。
——それは涼宮ハルヒの憂鬱だった。




