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7人目のV6   作者: siori
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(最終話)

V6のコンサートに乱入すべく白のブリーフにダブルタイフーン×2を装着した俺は、颯爽と家を飛び出した。

もちろんこの格好では会場につく前に警察に捕まってしまう。俺は常識のある人間だからそんな過ちは犯さない。上からちゃんとトレンチコートも着たし、お忍び芸能人のマストアイテムであるサングラスもかけた。これで大丈夫だ。だが待て。何か足りない。


そうだ。派手な演出だ。確かコンサートでは煙が出たり爆発があったりした気がする。俺は飛び入りで入るから、スタッフは俺の分の花火を用意していないだろう。これはいけない。やはり爆発とともに登場しないと示しがつかない。


そう思った俺は玩具屋をはしごして大量の花火を買い占めた。

店員はなぜか引きつった笑顔で緊張していた。

もう俺がV6であることがバレてしまったのだろうか? 有名人になると大変だ。しかしファンは大事にしないといけない。俺はにっこり笑って店員と握手した。店を出るときに振り返ると、店員がどこかに電話しているのが見えた。きっとV6と握手した喜びを郷里の父母に伝えているのだろう。微笑ましい光景だ。


しばらくして俺は大勢の警察官に囲まれていた。またか。なぜだ。

警察官が俺の持った花火を何に使うのか聞いてきた。馬鹿か。花火は火をつけて打ち上げるのに決まってるだろう。お前は煙草の代わりに吸うのか。同行を求められたが当然断った。こんなことに関わっていてはコンサートに遅刻するだろうが。


そうだ。警察官は正義のつもりでこういうことをしている。まあ、善良な一市民である俺を不条理に拘束している時点で悪なのだが、自分らを正義と思い込んでいる(まったく、正義であることと正義だと思い込んでいることの区別がつかない連中には困ったものだ)。

一方、俺はダブルタイフーンを着けている。二つも。

仮面ライダーは正義の味方だ。これを見せればこいつらも事実の誤認に気がつくだろう。下着も潔白の白だしな。


そう考えた俺はおもむろに前のボタンを外し警官に裸身をさらした。ジュディ・オングの『魅せられて』のサビのモーションで。

一斉に警官に緊張が走った。銃を構えている奴までいる。おかしいだろ。アメリカの映画でもこれは丸腰で戦意がない人間のサインだろうが。むしろ構えてた銃を降ろすはずだろうが。

ダメ押しで俺はダブルタイフーンのライトをつけてみた。光と音が発せられた。それはどこかパトランプとサイレンに似ていた。


数日後、ようやく解放された俺は幽鬼のようにやつれていた。


なぜだ。


俺はV6になりたかっただけなのに。


俺とあいつらは何が違うというのだ。


何もかも分からなくなった俺の目の端にふとレンタルビデオ店の看板が目に入った。そこには同僚であるはずのV6の森田君が主演の映画が置いてあった。


『ヒメアノ~ル』


そう書いてあった。


よく考えたら俺はほかのメンバーのことをよく知らない。V6になりたいという気持ちが先走りすぎ、研究を怠っていたのではないか? 甘え、慢心があったのではないか?

俺は森田君のことを手始めに知ろうとその映画を借りて帰った。


数時間後、俺は放心していた。

涙が止まらなかった。

そこに映っていたのは俺だ。俺自身だった。

そうか。そうだったのか。


俺は森野に電話をかけた。


「もしもし」

「誰だ」

「俺だ」

「おまえか。なんだ?」

「わかったんだ」

「何を?」

「俺はV6になるんじゃない。最初からV6だったんだ」


長い沈黙があった。


「……よく気がついたな」

「ああ、遠回りしたよ。俺だけじゃない。人は誰でも生まれながらにしてV6なんだ」

「俺もか?」

「そうだ」

「そうだったのか……」

「そうだったんだよ……」

「まあ、よかったな」

「おう、いろいろありがとうな」


そう言って俺は電話を切った。


俺は周りを見渡した。


ちゃぶ台。

ウーロン茶の飲み残し。

朱肉。

督促状。

ザ・ベスト。


見慣れたものが新鮮に見えた。そう、なぜなら俺はV6だったから。

ならばここはステージだ。生きるという事が「ライブ」なんだ。俺も、おまえもV6なんだ。


さあ。

WAになっておどろう。

すぐにわかるから。


(完)

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