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熱いイキ
沸かしたように熱い唾液が糸を引き、息をするごとにそれらを垂らして私の顔を汚し、どこの道の草を食べたのか緑色の何かを歯につまらせているのを見せつけ、私がいくら悲鳴を上げても喜んでいるように息を弾ませるだけの獣。
尻尾を揺らし、私の薄い皮の上をボールで遊ぶように舐め回してばかりのその獣を舌を鳴らして呼び寄せ、口の周りを舐めて絆を確かめ合うと、私は汚されたけれど微笑んだ。
「お腹に収まるのも悪くないかもしれないね」
そう言うと、手も足も無くて最後の希望だった飼い犬に口をくわえてもらい、多くの血管が引き切れて音を立てながら血飛沫を飛ばした。
事故で家族を無くし幻が見えてしまう私が、おとなりのおじさんでさえ飼い犬に見間違えてしまうのが怖くって。