幻
正直なところ、意識すれば目の中で見える寄生虫みたいな無色透明のあれは幻何じゃないかと思っているが、もちろん、それが幻ではないことなんてわかっている。大阪なんてアダ名の子がそれをネタにしていたからそう言えるんだ。
授業中にそれを考えて、今の今までである帰路においても、その行為は続けた。
そうしている内に、ふと、自宅がある団地のポスト見る。
それはスチール製で錆びついているけれど、曇った鏡のように反射する力が微小にも残っているのだ。
これに違和感を感じたのは、感じるはずもない視線があつく、生きている息を感じたからである。
反射する中で浮かび上がってくる影。
これはきっと自分のものだとその場の自分は思い、ポストに一瞥をやると階段に足を掛けたその瞬間、悪寒が走った。
肩に指が掛かっているのが目の端に入っているけど感触はなく、今、自分のうしろには何かが立っているはずだけど、気配はない。
勇気を持って振り返っても、気のせいだろう。
振り返った次には、ポストから身をよじりながら出てきている、色白の肌をした血まみれの肉塊が呻きを上げ、新品の縄跳びの縄みたいな腕を伸ばして、手が視界を覆っていた。




