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帰り道
いつもの帰り道、アーケードのような屋根付きの駐車スペースで軋む音がする。それは屋根に何かが落ちてくる音のようでとても不安になるのだが、今回は全くもって違うのだった。
「おいで、おいで……」
そう招く声が一緒にするのだ。
自分は振り向いてもそこには何もなく、しばらく止まって眺めてみれども違和感を覚えずに音を響かせるばかり。
自分は不安になりすぎているだけなんだと思って家に帰ろうとすると、目を離したのが悪かったのか、それとも自分に気づけなかった間違いがあったのか分からないが、耳元で囁く声がする。
「イカヌ、シ……」
肩を強く握る手。
自分はそれに負けて、その方向に体を傾けると振り返った。
「居ない、のか」
ここ最近疲れていいたせいで幻覚を感じてしまったのだと頭をかかえ、気持ちが切り替わったと思ったと同時に顔を上げると、くりぬかれた目玉の代わりに入っている木の実と不釣り合いの眼球を持った顔が足だけを生やして立っていた。