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紅葉
世界は寒かった。
空は黒い雲が覆い、視界は粉塵が遮り、灯火のように揺らめく火は血を回りに作っているのだから当たり前とも言えたが、それ以上に死ぬことが恐ろしかった。
人々は憎しみ、涙を流しながら殺し、その血に溺れる者もいれば肉を食らう者もいる。
恐ろしい現実の権化。その言葉が相応しい、と死にそうな者なら言えただろうが、熱くなってしまったものを冷ます事は到底無理だろう。
中には、生きるために包丁を持ち、赤黒い腸をロープのようにして肩に掛け、腰にロープを巻いて引きずられていて、砂まみれになった死体が綺麗に腹部を縦に切られて、その者の食糧であることを凄惨に物語っていた。
人同士が争い、血を流す様は滑稽であるかのように笑い声しか漏れず、私もその一部だった。
ノートにはそう書かれる。
自分が思い描く事を授業中の暇を潰すために書いてみたが、やはりおかしかった。そして、瞬きを一回してみれば何も書かれていないノートが見えて、次には天井が見えて。