小学生におけるルール云々のこと
それは草木が生きるとある公園。
設置された遊具に目もくれず、端に据えられて老人の腰を休める場所となりつつある場所へ、わざわざ寄せ付けないように大人数でそこを囲んで、ガードゲームをしていた。
「俺の番だ!」
近くに寄ってきた老人を威嚇するように声を上げて無造作に置かれたように空いたスペースにカードを滑り込ませ、それを観ていた者はどよめき驚きの声を出すが、相対しているであろう相手は不適な笑みを浮かべてカードがへし折れそうな勢いのまま机に叩きつけて言った。
「違う、僕だ!僕が勝つんだよ!」
胸を張り、親指を突き立ててそこを何度も指す相手は笑みを一層、満面に咲かせて自分の物にしたという優越感を見せつける。そんな態度は子どもにはよくあることだが、それに腹を立てるのもしかり。
突然、負けた側は地団駄を踏み、癇癪を起こして胸ぐらの掴み合いを始めた。
「ふざけんな!僕が勝ったんだぞ!」
「やだ!俺だ。俺なんだ!」
熟れたトマト以上に赤く顔を染め合う二人の仲裁に入る友だちもいれば、困惑した表情でたったままの友だちもいる。
そんな些細な事で起こった喧嘩の中、怒りに身を任せている子は喉を枯らしてしまいそうながらがら、という音とともに言葉を吐き捨てた。
「死ね!お前なんか、死んじゃえ!」
その瞬間、負けを認めない少年も含め数人には、インクを投げつけられたような音とともに赤い何かが付着し、重力に従って垂れて流れ、悲鳴が上がるまで数十秒掛かった。
「いやだぁ!」
傍観していた誰かがそう叫んで逃げ出すと、その後を追って逃げていく皆。
少年は何があったか解らないようだが、友だちが自分を置いてどこかに行ってしまったということは把握していて、少年は逃げ出した皆の後ろ姿に目をやると、悲鳴にも似た声で叫んだ。
「どこいくんだよ!皆、死ね!」
その言葉の通り、友だち皆の顔からは目が飛び出し、それを数珠繋ぎのようにして追う筋が宙を舞って生きたように血を振り撒いて、赤色に染まりきらないピンク色の肉片が白い壁を割って飛び散り、肉片が骨に砕かれながら血を弾け飛ばす。
少年の友だちはたった一言で木っ端微塵。
言葉には力があると言われるように、一言でも大切なのかもしれないと歳を取った私はあの日の光景を誰も居ない街で振り返る。