激闘?一本槍‼︎
ダルトニアの街をルナは歩いて行く。
ステラと武器を買いに行った後彼女はすぐに依頼を受けに行った。
ルナはステラについては特に心配していなかった。
引退する前に彼女の稽古に何回か付き合ったが、彼女には剣の才能があった。
あれからも特訓を重ねていっているのでFランクの依頼ぐらいは容易くこなせるだろうと踏んでいた。
杖をつきながらルナは歩く。ダルトニアの通りは人が多いが彼女がぶつかることはない。
速度を緩めず歩き続ける。
やがて彼女は高台にたどり着いた。
街を一望できるダルトニアの端にある高台には人が1人もいなかった。
「ここならいいんじゃないかしら?出てきたらどう?」
「…ほう。やはり気づいていたか」
木の陰から男が出てくる。
その手には槍を持ちルナを睨みつけていた。
「ルナ・グラキエス。貴様を殺させてもらう。目の見えないからといって手加減するつもりはない。自身の死を受け入れろ」
「何故私を殺そうと?」
「答える義理は無い」
「独断での行動は良くないと思うのだけどね…。というかアイツちゃんと説明したのかしら?」
「何を言っている?まぁいい。とにかくここで死ぬがいい!」
男はそう言って槍を構える。
ルナは男の方を向いているが動くそぶりはない。
諦めたのだろう。そう判断して男が攻撃しようとした時
「私を殺すか…?舐めない方がいいわよ若造」
「な⁉︎」
彼女の凄まじい殺気に男は一瞬後ずさる。
男はルナに対する認識を改める。
(盲目だからといって油断してはいけない!全力でいかなければ‼︎)
男はルナに向かって走り出す。
「《絶槍 初突》瞬風‼︎」
それは一見するとただの突きだが男の絶えぬ特訓によってあらゆる無駄を無くした最速にして最高の突きだった。
事実男はこの技だけであらゆる敵を倒してきたのだ。
……よって
「⁉︎」
「速いわね。ま、それだけだけど」
彼女がその技をかわした最初の人物となった。
男は一瞬思考停止したがすぐに立ち直る。
(この女が強いということは前々からわかっていたことだ。この技が躱されたからといって俺が敗北したわけだはない‼︎)
「《絶槍 次突》乱風‼︎」
凄まじい速度で乱れ突きを繰り出すがルナは持っていた杖でそれを軽々とさばいていく。
「参突‼︎肆突‼︎」
避けられる。さばかれる。
自身が10年以上かけて積み上げ、完成させた技がことごとく。
(バカな!ありえない!あっていいはずがない‼︎)
男の顔が焦燥で歪んでいく。
焦りによって生まれた男の隙をついてルナが男を蹴り飛ばす。
「ぐぅっ!」
「気に病むことはないわ。あなたの槍はこの世数多の槍使いの中でも有数の実力よ。相手が悪いだけ」
体勢を立て直し男はルナを睨みつける。
未だに彼女は傷ひとつなく息を切らしてすらいない。
「ハァ…ハァ…貴様…本当に目が見えないのか?一見閉じているが細目で見ているのではないか?」
「仮に見えていたとしてあなたの槍が私に届かない事実は変わらないわ。ま、見る必要もないけど」
「………っ!」
「さて…もう充分付き合ったでしょう?そろそろ私からもいかせてもらうわ」
「何?」
そう言ってルナは杖を構える。
中から剣が顔を出す。
「仕込み刀というわけか」
「女の子が武器を持たずに歩いてたらあぶないでしょ?」
「ぬかせ!」
男は再び槍を振るう。
あらゆる角度から攻撃し、その全てが無駄となる。
(これほどとは…!)
気付けばルナが目の前に接近していた。
刀はいつのまにか杖に戻っている。
「しまっ…」
「《絶刀 壱式》月下光楼」
男には何が起こったかわからなかった。
ただ一つ確かなのは自分の槍が弾き飛ばされ、喉元に刀を突きつけられているということだった。
「まだやる?」
「……………」
パチパチパチ…
拍手の音が聞こえ男がその方向を見る。
そこには鎧を着た男が立っていた。
「あら、ようやく出てきたのね。待ちくたびれたわ」
「なんだ気づいておったのか。いや久し振りにいいものを見せてもらった」
「な、な、な、何故あなたがここに⁉︎」
慌てふためく槍男を無視し鎧の男はルナを見る。
「久しぶりだな。《絶刀》ルナ・グラキエス。会いたかったぞ」
「私は会いたくなかったわ…《絶将》イグニス・ケデルト」
ステラちゃんが主人公といった覚えはない。