ステラとルナ
空は雲ひとつなく晴れ渡っている。風はそよそよと吹き木々を少し揺らす。
そんな天気の中一台の馬車が走っていた。
男は商人で農具などを寄った村で売りさばいていた。
そして無事完売し、都市ダルトニアに帰るところだった。
「ダルトニアまであと二時間ほどだ。調子はどうだ?」
馬を操りながら男は荷台に乗っている護衛に雇った冒険者2人にに聞く。
問題ない。と返ってきたので続けて聞く。
「お嬢ちゃん達はどうだ?」
「問題ありませーん!」
そう言ったのは荷台の奥の方にいた白髪のショートヘアの少女。
商品を売りつくした村の住人で、ダルトニアに行くなら乗せて欲しいと頼まれたのだ。
荷台はすっかり空いていたので男はそれを了承した。
「ルナお姉ちゃん‼︎あと二時間だよ‼︎やっとこのお尻の痛みから解放されるよ〜」
「少し落ち着きなさいステラ。あなた馬車に乗ってからはしゃぐか寝るのどっちかしかしてないわ」
ステラと呼ばれた少女を嗜めるのは同じく白髪だが腰あたりまで伸ばしている少女。
「だってもうすぐダルトニアに着くんだよ⁉︎私もいよいよ夢の冒険者デビューか〜」
「あら、ステラちゃんは冒険者になりたいの?」
護衛の冒険者の女性の方が聞いてくる。
「はい!小さい頃からの夢なんです!いつかルナお姉ちゃんみたいな冒険者になるって!」
「ルナお姉ちゃん…ってことは貴女も冒険者なの?」
女性はルナと呼ばれていた少女に声をかける。
「はい。けど魔物との戦いで目をやられてしまって2年前に引退しました。」
「そう…それで」
女性は改めてルナを見る。
彼女の瞳は常に閉じられていて、手には杖を握っていた。
「けどルナちゃん。君はどうしてダルトニアに行くんだい?また冒険者になるわけでもないんだろう?」
護衛のもう1人の男性が話に入ってくる。
「私達は早くに両親を亡くしてしまって家族はステラだけなんです。けど私は冒険者だった時はあまり村に帰らなかったからこの子を1人にしてしまって寂しい思いをさせてしまったんです。だからこれからは家族一緒にいたいと言われてしまって断る訳にもいかなかったので…」
「そうか…大変だったんだな。そうなるとステラちゃん、君も無茶しちゃいけないよ。万が一君に何かあったらお姉さんは独りぼっちになっちゃうんだからね」
「冒険者になるのは私も反対したんですけどこの子が譲らなくて」
「私は優秀だからね!お姉ちゃんみたいなヘマはしないよ!」
「まぁ!失礼しちゃうわね‼︎」
「ダルトニアが見えてきたぞー‼︎」
商人の男の声でステラ達は会話をやめる。
ステラは馬車の小窓を開けて前方に見える都市を見据える。
「わぁーーーー‼︎」
ダルトニアーーレコンド王国五大都市の1つである。