『人間の定義』
※この作品は、人様によって心情を害する表現が含まれております。
ぼくには表情がない。
感情がないわけではなく
生まれつき『表情』を作る
という運動機能がないのだ。
ないから
真顔の一つしかない。
そのおかげで
ぼくには友達がいない。
友達どころか
ぼくをちゃんと見てくれない。
会話すらない。
唯一の救いだったのは、
腕力が人一倍強かったことか。
喧嘩が強いというわけではなく
ただ、力持ちというだけだった。
でも、そのおかげで
いろんな人から頼られた。
その時だけはすごくうれしかった。
生きている実感が湧いた。
だけど、仕事が終わると
皆は、ぼくの前から消えていく。
感謝を言われたことは一度もない。
利用するだけ利用して
あとは、さよならだ。
(ふざけるな
ぼくだって生きてるし
ちゃんと感情だってあるんだぞ)
しかし、ぼくは
何も言えない
言い返せない。
感情を表に出せない。
好かれない理由が
『表情が作れないから』
だけではないことは分かっている。
分かっているけれども……
ぼくは
こんな 体が嫌だ。
こんな 性格が嫌だ。
こんな 自分が嫌だ。
すべてが壊れてたら良かったのに。
こんな感情すらなかったら良かったのに。
他人を愛したい。
他人から愛されたい。
ぼくをちゃんと見て。
ぼくも仲間に入れて。
そんな感情を
ぼくは毎日ループさせていた。
ぼくのはロボットではなく人間だ。
AIを持つロボットが生きる世界で
本当に生きている人間だ。
しかし人間より感情豊かになったロボットの世界で
感情の乏しい僕はどう生きればいいのか。
ロボットに劣る僕は果たして『人間』なのか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初めの表現で、心情を害された方がおられましたら、心よりお詫び申し上げます。