ドラゴン的大樹
「おい、何してんだ……」
闘技場のど真ん中に大樹を模した槍を地面に突き刺し、その傍らには空が暗くなっている……いや、覆われている原因と思われる天高くにまで葉を伸ばしたこれまた大樹が根を張っていた。何があったんだよ……
こんな良く分からない状況になったのには理由があって……て、そこまで説明するとこ無いから簡単に説明するけど窓から外に出ようとした俺達を止めてこっちに呼んだらしいんだけどなんか脅されていたらしいんで何か質問しようとして振り返った時にはいなかったんだな。……いなかったんだよなぁ。
んな訳で空を覆った大樹を生やした?植えた?張本人は見た感じアーサーな訳なんだが……。あれかな?温暖化防止の為に植林しようとしたのかな?見た目的には大樹とか老木とか通り越して世界樹って言われた方が納得いくデカさなんだけどさ。これ、光合成する前にここら一帯の栄養分吸い取られて砂漠化しそうなんですけど……
「……やっと来たか」
やっと俺に気づいたのか地面に突き刺した槍を引き抜き、絞り出すように言った。
「やっと来たかじゃねぇよ……まぁ、今やってる事すっげぇ気になるから建前とか嘘とか無しで聞くけどさ……何してんの?これ聞くの二回目だけど」
「何してるか、だと……?もしやお前自分のやった事に気が付いていないのか……?」
「やった事?」
呆れたように言うアーサーの仕草に少しイラッときたが俺がやった事って何だ?別にアーサーと聞いた感じ同じトカゲ乗りの少女達の乗り物奪っただけだけど……なんだ。俺にはサッパリわからないぞ!?
フェルの様子を見て、本当に知らない様子なのを見て、思い出させるのを諦めたのかはぁ、と溜息を吐き話し始めた。
「俺達の家計は代々ドラゴンを使役していたんだ。本来ドラゴンは上位になればなるほど自我が無くなる。お前も今、見てるだろ?この大樹が上位のドラゴンの姿だ」
そう言って横にある大樹を軽く槍で叩き、指差した。本来って言われても何が本来か分かんねぇんだけど……
「だが、いつの日か俺達がドラゴンを使役するのがおかしいと言い始めた輩が出始めたんだ……年月をかけて選ばれた奴には〝支配〟する権利が出来たんだが今はいい」
「いいんですね……割とそこが気になったんですけど」
ドールの嘆きにも目を向けなかった。
「そんな世界になったら俺達の存在する意味、人とドラゴンを繋ぐ道としての役割が消えてしまう。それに恐れた俺達は唯一の最上位ドラゴンを支配する事にしたんだ」
長かったので短く纏めるが……アーサー曰く繋ぎ止めるはずだった最上位のドラゴンを支配した瞬間に俺の両親、ルルとデデス他数名の手によって討伐させられた。その恨みを晴らす為にこの時を待っていたんだと。随分長年待っていたみたいだけど……お前、実年齢いつくよ?絶対俺よか歳上だろ?
そんな訳で俺を殺す為に邪魔が入らないように空を覆い、俺達が来る前に槍の力で通路を塞いだんらしい。本当に恨んでるんだったらこんな悠長に会話してる前にさっさと殺せよな……ほら、俺は準備出来てるぜ?
話し終わり、槍をフェルに向けたその時、側にいた筈のドールの姿がいない事に気付いた。
「遅いッ!『氷よ』」
「えっさぁッ!」
戸惑いを見せた瞬間に、地面に溶け姿を隠していたドールが奇襲をかけ、その隙に俺が凍らせる手筈なんだが……
「で、出れないです!フェル様!」
「何やってんだよ……」
どうせ地中にある大樹の根っこが〜とか言い出しそうなのである程度当たらないようにドールに周りの土を魔法で飛ばし、救出した後決着をさっさと決める為久し振りの四色全出しを決めた。やだ、俺って太っ腹。
フェルの前に突如として現れたカレス、ルト、エルフィの姿を見て安心したのと同時に疑問が浮かんだ。
「何故戦闘服っぽいんだよ……」
「あ、フェル君とドールちゃんものあるけどどうする?」
「「着る(ます)」」
あるものは貰っておかないとな。うん。