【勇者、入学するらしいぞの巻】
【】は勇者視点って事で。
「ようこそお出で下さいました、勇者様」
「……う、ん?」
……え、何だこれは僕は自分の部屋で……は!?お母さんは!?
急に思い出したかのように立ち上がり、回るを見渡してみるが何時もの見慣れた風景とは違い、全く知らない豪華な空間になっていた。
「貴様!陛下が言っているのに何だその態度は!無礼ではないか!」
「よい、召喚された事に少し戸惑っているのだろう。少しぐらい待ってやろうではないか」
正面に豪勢な椅子に座っている立派な髭を生やした、完全に王様って感じの人が左右にいた人を静める。
何なんだここは……?
( ´・ω・`)
何となく理解は出来たけど……
僕が聞いたことは一つ。母さんが無事だったかどうかだった。その答えは僕の予想を遥かに超えるものだった。
『ふむ、母親か?まぁ命に別状は無いな。それよりもお前に関しての記憶を全て消しているから問題は無いんだがな。感謝しても足り無いぐらいだぞ?』
この召喚に伴って起こる事を事前に防ごうとしての判断だったらしい。
良かった……母さんが無事で記憶が消されたって事に少し不快感って言うか少しモヤモヤしたものが感じられるけどそれより……
「ここは異世界なんだ……しかも勇者召喚って事は僕に凄い力が備わってたりするんじゃ……?」
王様から休んでおくようにと言われ、部屋を貸してもらった時からずっとその事を考えていた。
だって異世界だよ!モンスターだよ!魔法だよ!しかも僕が勇者って事だし……前の世界でずっと悩んでいた事を解消出来るんじゃないか?僕はそう思っている。
前の世界では視野が狭かったせいで色んな人に迷惑を迷惑をかけたからこの世界では全力で人助けをしよう!僕はそう、心に誓った。
「って感じなんだけど……なんか僕にやる事はないかな?」
そう、ずっと扉の前にいる少女に話し掛けた。
大体歳は12〜13位ですっごく美人さん。何故かずっと表情が変わって無いけど緊張しているのかな?
僕の問い掛けに渋々応えるように口を開いた。
「誰かに何をすればいいか聞くより、まず自分に名前言うのが先じゃないんですか?出会ってから少し経つのに名前も知らないんですけど?」
「ああ!そ、そうだったね!僕の名前は勇気。市永木 勇気って言うんだけど君は?」
「……リチアナです。正直何故ここに配属されたのか良く分かりませんが適度な距離感を持って接しますのでよろしくお願いします」
「うん!こちらこそよろしくねリチアナちゃん!それよりももっと楽にしてもいいんだよ?僕も何か肩が重くなって来ちゃうし……」
ははは、苦笑を浮かべる僕とは違い、リチアナちゃんは少し難しそうな表情をした。え?僕、何か気に触る事をしたっけ!?
「はぁ……シナガキ様と私は主従関係なのです。表面上は仲間と言う括りですがそこは忘れないようにして下さい。見つかった瞬間私の首が飛ぶと思いますので」
「そ、そうなんだ……でも、確か二週間後だっけ?学園って所に入学するんだよね?そこで仲を深めていこうよ!」
そう、二週間後は王様から学園に行って周りの事を知ってもらいたい、との事で入学する事になったらしい。王様ならある程度は権限で入学させる事は出来るらしいけどそこは僕が断っておいた。だって自分の実力で行った方が格好いいよね?
市永木 勇気。16歳にして初恋を迎えたのだった。
ちなみにリチアナはゴミを見るような目で見ていたのはやっぱりご愛嬌。
リチアナは……同姓同名って事も……まぁ同姓かどうかまだ分かった訳じゃ無いんですけどね!?