終わらない混沌、始まる未来
あの出来事から五年と少し経った。
現状の元悪である王都は既に壊滅、不満をぶつける相手がいなくなり破壊の限りを尽くすかと思った人々は意外にも静かだった。まぁ、無くなった友とか家族とか想ってんだろうけど。
だが、泣いてばかりではいけない。新たな生物が地下からこんにちわしてきたのだ! 戦えるものは魔王の僕共の攻撃でほとんどいなくなり、唯一残った者は傷だらけの重症。戦える状態ではなかった。
体調がものすごく良い! 気分も超ハッピー! 今の状態だと世界征服も夢じゃないかも!? な、状態の魔族だったが侵略行為は一切しなく、無条件に復興の手助けをしてやる、そう言った。だが、その代わり俺たちも住まわせてくれよな? と、本心でそう言ったのだが芯から腐った人間根性の地上の猿ゲフンゲフン、人間は疑いをもった。コイツら寝首をかくつもりなんじゃね? と。
不安は感染する。新手のウイルスみたく徐々に表情が暗くなっていく人間だったがフェルンの唯一の肉親と語るよく分からんリチアナが説得し、魔族が担いでいた今世紀最大の聖人、フェルンを見るなり疑いは無くなった。知らぬまにフェルンの顔が知れ渡ってるんだね。指名手配犯みたいだけどそんな流れで国の復旧が進められた。
五年とは長いようで短いものである。愛しの孫が小学校入ったたと思ったら急に自分のファッションなどに気を使うようになったり、中学入ったと思ったら志望校を入学したのにも関わらず中退して親の金で余生を過ごそうとする、そんな無情な五年……ではないけどさ。
んまぁ、何が言いたいかと言うと残った人類と魔族の簡易的な住居は魔法使えばすぐに作れた。だが、城壁、城内ともなるとしっかり地盤を固めて、石を加工しはめ込む。一個一個の作業が将来に繋がるのだ。
確かにすぐに作れる魔法の家と一から自分の手で作る家、どっちが優秀かと問われれば前者だが……ほら、ね? 愛情とかこもっちゃうじゃん? 自分の手で作るって夢があるよね? 実際には魔法で作ったものを外からコーティングすれば普通に使えるので自分で作るのは愚問なのだが……皆で力を合わせてって部分が重要なのでえっせこ、えっせこ働いてますね。
そんな俺はどうしたかって? へっ、魔王と倒し世界を救ったフェル様の手を煩わせようとする輩がいるか? ……あー、いたね。いたけど社会的に死んでるから大丈夫だよね。
んま、正直に言うとマルナを嫁にして娘がいます。ええ。一線を越えてしまったばかりか子まで出来ちゃったのです。確かに人間、いや生物ってなんで生きてるの? と、問われて「それは後世に種を残すためだよ。意味なんて無いんだよ?」なんて真面目に答えるぐらい人生を謳歌してるが……まだ、やることあるだろうに……ほら、賢者だっけ? それが人類に宣戦布告したってのに愛すべき人がいて、守るべき家族がいる。そんな俺に命と命をガチンコバトルさせる戦いは避けたいんだけど……避けたいんだけど何故か俺を狙って……って、確かこれ数ヵ月前の話か。
ドールが俺含めて支配属性を回収したことにより俺は属性の仲間を、あの王様は種を跨いだ仲間を、賢者は自分を失った。だって……ねぇ? 詳しくは知らないからよく分かんないんだけどさ。
結局何が言いたいかと言うと……所帯持ててすっげぇハッピーって事。
男のワイルドな猛獣は意外と恥ずかしがりやなもんでねぇ……暗くて狭い穴が大好きなんだよ。ほら、包まれてるって感じが特別気持ちいいんだって(初体験)
このまんま寿命で死ぬまでほのぼの生きるのかな~? それとも病気かなぁ~? と、上の空で建ててもらった一軒家の近くの庭、通称お昼寝草原で横たわっていた近くで人の気配を感じた。
「フェルさん」
「……ぐすぴぃ」
「フェルさんってば」
「……ズモモモモ」
「……既に種は残しましたし要らないですよね、リトルフェルさ――」
「お、おうグットモーニンだな、リチアナ! いやぁー良い天気過ぎて寝ちまったぜ! はっはっは――ッ!?」
寝たフリで誤魔化せないかと思ったがリトルフェルが引っこ抜かれそうだったので飛び起きたのだが……気付いていたらしく手に持った剣を殺す勢いで横凪ぎに払っていた。
「死ぬから! 俺、死ぬから! つか、世界救った勇者なんだぜ? そんな相手に……無礼にも程が――あるけど大丈夫、うん。リチアナと俺トモダチイツモイッショダヨ?」
まぁ、元だけどね。てか、勇者の代行って感じだったし死神代行ならぬ勇者代行って感じだな。勇者の霊圧が……消えたッ!?
と、一人夢心地な俺をおいて勝手に話を始める。王直属の情報機関の一員……まぁ、公務員って感じだな。そんな公務員様はどうやらご不満のご様子。一体何がご不満なのかぇ? マルナが子守している間に抜け出した俺のせいですかね? そうですね。
「話は勇者――いや、魔王になったリスタートについてです」
「えっと確か……“闇の王、いや闇そのものが消え去った今圧倒的な光を放つ存在しかいない。これは世界の境界線が崩れることを意味する”だっけか?」
それは魔王を倒し、地上に戻ってきたときに話された言葉だった。
ようは崩れたからそれを補うようにして相手側の強い奴を引き入れますって事だな。スッゴい傍迷惑な話だけど……言ったのって魔族の誰かってのは分かるんだけど……ま、今は誰が言ったのかってのはどうでも良いか。
「ええ、そうです。今さら説明するのもあれなんで省きますけど……」
「はぁ……戦力的には育った奴もいると思うしそれ引き連れて倒す、これで良いんだろ?」
「はい」
そう、言いたいことだけ言って去っていった。
……イヤァアァアァァァ! 折角の安心する一時が! 妻と天井の幸せのシミを数えるって夢がっ!
表面上は二十歳になった大人として立派な風格だったが……こけしって言うよりはつくしだな。そんな変わり果てた勇者代行様は急に重くなった体を引きずるようにして自宅へと入っていく。
(絶対怒鳴られるよ……)
勝ち負けより目先の地獄が心配な世界を救った救世主だった。
はひぃぃぃ、完結です。
正直書きたいって思っていた学園での修学旅行とかドール達が結成して歌って踊れて戦えるアイドルグループとかフェル&ルトがはっちゃけて作った超、巨大ロボの特撮とか色々ありましたがそれをはね除けての完結です。
前作のものよりハッピーな感じでしたがどうでしょうか? 良かったらポイント評価お願いしますね! 新しい物語は次の日に投稿できたらなぁ~?




