忍法かな?
穴が開いた青空を周囲の雲が覆っていく。渦巻き、隠れ、見えなくなっていく。
まるで陽の光……暖かいものに触れたくない、そんな思春期みたいな子供みたいに。
と、詩人っぽく思ってみたのはいいものの、自分には多分合わないし考えるだけでも鳥肌が絶好調なわけで。結局は思ったことを口に出せば良いよね?
一部分だけ、黒く厚い雲が無かった青空も波のように襲う風によって隠れていく。夕焼けゾラとはまた違った赤く、奇妙な空に地上の血の海。完全に地獄だよな、とツッコミを入れながらドールからの返答を待つ。
時間は少し遡る。
リチアナが鼻唄混じりに去っていった後、少し気になっていたことを聞いてみた。
「そう言えば俺がおかしくなっていた時、変に笑っていたって聞くけど……本当に頭イっちゃったのか?流石に精神科とか無いだろ……」
まぁ、実際にそうだったら幾分かは楽になるんだけどな。心の中でそう付け足して言う。
考えてみれば何個かは疑問はあった。
はい、嘘です。言うほど疑問はありません言ってみたかっただけです、ええ。
思い出すと……まぁ、闘技場で何故、ドールだけってのが一番気になるかな?言ってしまえばそれしかないけど。
時折感じるビューとなびく風は唯一、俺が喋っていた以外の音が無くなり、意識しなくても感じるようになっていた。
「実は……」
そう、言い始めたのは数分後。何も言わねぇんじゃしょうがないし、ここは中二病が中二病故の妄想と、考えようとしたその時だった。
何かを決意するように俯いていた顔を上げ、吹っ切れた笑顔を見せながら紡ぐ。
「実は私、神なんです!」
なんです……なん……なんですぅ……ぅ。はい?
想像してみよう。昨日まで家族同然に接してきていた友人の態度が突然急変!事情を聞いてみると実は神だと言うことが発覚!あなたは信じられる?俺は唐突すぎて精神科一緒に行こうか?と誘うレベルだな……。
天変地異が起こったら流石に信じるはそんなホイホイ吸い殻みたいに落ちている筈もなく、何言ってんのコイツ?やっぱ頭イっちゃったのか?と、そんな表情をしているのが伝わったのかやれやれと肩を落とし、説明するのが億劫だと言いたげな様子で話始めた。殴って良いよね?
「確かに、今までは超絶美少女ドールちゃんと認知していた為今すぐに“神”と言うのを理解しろってのも無理がありますよね……」
「可愛いとは何度か言ったつもりはあったが……流石にそこまで自画自賛していると俺でも引くぞ……?」
「ってことなので軽く証拠見せちゃいますね!」
「あ、無視なのな?」
良くある疑問をスキップしながらドールの肌がピキピキと、割れ始め光が漏れ始めた。例えるなら……そう、茹で玉子の殻を割る感じ。あれって上手くいく時はチュルーっていくのにいかない時はジュルッ……あー、みたいな残念な感じになるからホント精神衛生上良くないね。ただ単にストレスがマッハで蓄積されていくだけだから。
遂には一人、脳内で解決するようになった為、早く出てこいと思っていたら光がドールを包む混み、どんどん徐々に大きくなっていった。
そして形を変えていき……
カエルになった。
うん、確かに疑問とか色々感じるけど何故カエル?もし、本当に神なら神って人目見ただけでわかる感じ。例えば見上げても顔が見えないほどの巨人とか。目を開けていられないほどの圧倒的な光とか。色々あるじゃん?その中からカエルって……多分あれだね、マスコット的な意味合いが強かったんだろうね。うん。
『ど、どうですか? 私の神々しい、人智を越えた圧倒的な姿に魅了され尽くされていますか?』
「確かに人智は越えてるな!」
カエルの口から聞こえる聞き覚えのあるドールの声に、少し奇妙な感覚になりながらそう返す。だってカエルなんだもん。