千と言うパワーワード
「ふむ、では座ってのいいぞよ」
「ついさっきまで殺されかけていた奴の反応じゃなぇよな……普通に糞根性でやべぇ……ヤバイでございます」
ま、了承貰ったから座るんだけどね?
王の部屋、王室と考えると少し、いや大幅に庶民感丸出しの世界にひとつだけのオンリーワンな魔道書を見つけ、俺TUEEEEEしながら学園生活送る感じの偉大な父さんの書斎の部屋に置かれているソファーに座った。ど真ん中に座ったのはいいもの、残り四人が絶対には入れない感じなので少し、ぎゅうぎゅうに押されながら詰められる。あ、ダメ……そこを押すと……らめぇぇぇぇ!(急所)
腹に伝わる謎の痛みに耐えつつ、先程あった出来事を思い出す。あ、これが走馬灯って奴なんだな……。
「フォフォフォ!見事見破ったのはいいがンッ!?……んー!んー!」
「どうする殺す?」
「何故、お前の手にロープがあったのかが気になるところだけど……別に殺すなよ? 普通に脅かしてきただけなようだし」
後ろで何があったのかは知らないが自慢げにやって来た髭ジジィ……学園長、基、忘れ去りし名大賢者のような節操がある髭面出はなく、無精髭のような纏まりの無い白い髭を生やしたじいさんがカレスにロープで捕まっているのは確認できた。こら、ドールおもしろがって口を閉じない!もし、このじいさんが鼻づまりだったら確実にこのじいさんポックリ逝っちゃうから!三途の川クロールで渡りきっちゃうから!
と、突っ込みを心の中で入れているとニルニー様の緊迫迫った声「賢王様っ!」との声が無駄に広い通路に響き渡る。つか、賢王様ってなんだよ。賢いの?これが?俺にはよく分からねぇけどな。
と、その後なんやかんやあって状況を説明され今に至る。良かった、走馬灯じゃなかったよ……三途の川で婆さんが手を振ってるんじゃなくて、現世の俺が手招きをしているのは斬新だったな。つか、まだ婆さん死んでないしピンピンしてるし。
収まってきた息子、ダイレクト肘打ちを……て、元はお前のせいじゃねぇかカレスよ!何が「押されたんだから我慢してね」だ!確実に狙ってきてるじゃねぇかよ!しかもその後感触が悪かったのかちょっと引いてるし……はっ!服の上からでも分かるこのビック息子の威力を感じたかこれで夜もブヒブヒ言わせて……あ、すんません自分チョーし乗ってました、はい。確かにブヒブヒ鳴くのは俺の特権ですよねブヒブヒ!
視線から感じる焼き付くさんばかりの視線から逃れるように先程から時間が止まってるんじゃないかって思ってしまう程、じっと固まっているじいさんに話し掛ける。
「ああ、すんません。時間とらせてもらったんですけど此方のようは済んだので用件はなんですかね……? ここに来るまで聞かされていないんですけど……」
ここに着いてからも聞かされてないんだけどね。
心の中で付け足す。一応国王だもんな。しばられたじいさんでも。
俺が言ったことを聞いて話す気になったのか、それともただ単に喉が乾いただけなのか側にいた執事のような黒い背広な服を着た男性に「水を」と言って追い出す。今なら殺れそうだね(ハート)
「ふむ……まぁ、カミングアウトはここでいいよね?」
そう、少し声が高くなったじいさんが急に自分の首の付け根辺りに指を突き刺して皮を捲る。ベリベリとプチプチを潰すときのような謎の達成感に似た幸福な気持ちになりつつ、完全に自分の皮を剥ぎ終わった元じいさんの眉まで伸びる深淵のように真っ黒な髪が生え、顔に張り付いている部位はどれも丁度良い具合に揃ってあどけなさを醸し出している。その容姿を一言で言い表すのならば「好青年」という言葉が上手く当てはまるだろう。
カミングアウトと言ってもそこまで仲が深まっていない状態で言われてもただただ自分の皮を剥ぎ、さっぱりした様子を見せられただけでこれと言った驚きはなかった。
どうやら無反応な俺達に不満があるようで頬を膨らませるが……ええい!なんかお前がやると「可愛いかも……貰ってあげたいなキュンっ」みたいな感じになるからマジ現金ね!いや、厳禁ね。何、ちゃっかりお金取ろうとしてんだよ。
「あー、ニルニーに言われたから君達と面会したんだが……まぁ、アイツの貯めに貯めた貯金君達にあげるから許してくれないか?」
「許してくれないかって……あれは私が丹精込めて作ったものなんでお金には……」
「因みに見た感じだと千万は越えるね」
「……こ、今回だけですよ?」
と、だけ言って後は顔を伏せ「千は越える……千は……グフフ」と言ってるが聞こえてるから伏せた意味はないと思うぜ?後、額が凄くなりそうなのでキャラが崩壊している。折角の良い感じに肝がすわっている女子高生的なポジションだったのに顔がブスだが家が金持ちの男と付き合ってプロポーズの直後に「……これでこいつのもは私のものね」みたいな実は「私、顔よりも中身で判断するんですー」が本当は脳内金の文字で一色になってる残念な感じになってるぞ?具体過ぎすぎて逆にいない感じになってしまったがニュアンスは伝わったのでまぁ、いいだろう。
「千か……この国って給料高いんですね。公務員だからとか?」
「まぁ、公務員だからと言う点もあるけどニルニーは孤児院の出だからその分上乗せはしてるかな?」
意外にも普通に返ってきた返信に驚きつつ、当たり障りの無いように慎重に言う。既に遅い感じがするけどね。
特に言うこともなくなり、どうしたものかと思っていると
「ふむ、これで主旨は伝わったと思うから帰って良いよ」
と、言った。結構軽い感じだったから接しやすかったけどこの王様って舐められたりしないのかな?スッゴい利用されて利用されてポイってされそうなイメージがするんだけど……。
内心安心しながらソファから立ち上がり……て、今思ったけど公務員って単語が通じるのは何故だろう?そう思ってしまったが長居して良いこともないのですたこらさっさと扉まで移動すると後ろから
「あ、フェル君は残っていってね」
多分、良い笑顔していると思うが後ろ向きの俺には分からないが……絶対悪魔の微笑みだと俺は思う。対照的に俺の表情は絶望に道溢れていると思う。だって、後々問題起こしてもバレないように名前伏せていたのに呼ばれたんだぜ?これって陰で悪口を言ってる仲間に混じって名前もろくに知らない奴のことで笑っていたら突然、一人になっているところで後ろから名前呼ばれる感じの恐怖だな。何故アイツは俺の事を知ってたんだろう?怖くて振り返んないで逃げたから分かんないんだけどさ。
もしもの事を考え、カレス達を控え室(控えめな言い方)に送りドールだけにする。大勢いた方が反抗しやすいが引っ捕らえられると困るので水に戻れちゃうドールちゃんだけを残して中に戻る。魔王や、魔王が出たんや……。




