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CASE2-8 潜む者
同日――深夜二十三時。
門田木市に程近い別の都市の路地裏に、その男は息を潜めていた。
「……くそっ……くそっ」
フードを目深に被って顔を隠し、苛立たしげに悪態を吐き続ける。思わず転がっていた空き缶を蹴り飛ばし、路地脇に置かれていた木箱を踏み砕いた。
と、懐中電灯のライトが男を照らした。
「おい、そこでなにをしている!」
巡回中の警察官だった。今の音を聞きつけて様子を見に来たらしい。自分から居場所を教えてしまったようでマヌケだが、苛立ちをどうしても抑えられなかったのだから仕方ない。
「――チッ!?」
「お、お前は――」
男の顔を見た警察官が驚愕する。緊張に一瞬身を竦ませた隙に男は素早く背後に回り込み、その後頭部を思いっ切り殴りつけた。
「がはっ……この」
倒れた警察官がまだ動いたので、男は踵落としを頭に放って完全に沈黙させる。
頭から血を流して動かなくなった警察官の衣服を調べ、金と拳銃、ついでに手錠も見つけたので奪い取った。
「はぁ……はぁ……ハハハ」
拳銃を見詰める男の口元が狂気に歪む。
「待ってろよぉ、杜家偵秀」