プロローグ「魔法がすべて」
―――魔法がすべてマテリアルの持つ力……魔力がすべて。
そう教え込まれてきた俺が狂うのは時間の問題だった。
この世界はどこか狂っている……だけどそれは俺だけが思ってることだ。
才だとか、魔法だとかマテリアルだとか……そんなんで人の生殺与奪が行われるなんておかしな話だ。
だけどそれは俺だけが感じてる違和感だ。
"そんな世界なんてこの俺がぶち壊してやるよ"
俺が住む場所はこの世界「エーリア」の北部に位置する「アルマデア」、炎の精霊王に管理されたこの場所は炎の縁が強いとかで武器防具の精錬を重点的に行っている。
そのせいか、この地方は特に人の出入りが激しく他の地方との交流が盛んだ。
いろんな人間が出入りするってことはそれだけ揉め事も多い。
―――しかし、そいつが問題になるのは弱者がいる場合だけだ。
「あぁ?」
「なんだてめぇ」
ほら……また……
二人の男が取っ組み合いを始めようとしている。
きっかけはほんの些細なこと、それだけに実にくだらない。
男同士の取っ組み合いは殴り合いに変わり、それは殺し合いになる。
この世界の倫理観は狂っている。
たとえ、人が死んだってそいつは日常の一つに変わりない。
強きが生き、弱きが死ぬ。
それがこの世界の理。
人間も動物も変わらない、こんな世界が俺は嫌いだ。
「うぉおおお―――」
一人の男がもう一人の男を再起不能になるまで叩き潰した。
もう一人の男は、しばらくすればその生命活動が終りを告げるのは目に見えて明らかだ。
だからと言って誰かがそれを救うことも同情することもすることはない。
周りの人間はそれを賞賛することすらある……
強さを見せ付けることこそがこの世界だ。
「俺はそいつが気に入らない」
力だけがすべてなんて……そんなには狂ってる。