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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第一章 二節 天災の名に堕ちた者
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2.森の雷王と空の炎王

《サクラ》

 今宵も黄金に満たされた月下にただずむその緑峰は、威風堂々と数多の生命の居場所を守っている。その緑峰に寄生する古の草木は月の光を浴び、育っていくかのように、活き活きとその身を風の行く先のままに身を任せる。その反面、月の光さえ届かない漆黒の奥地は怪しげな薫りを放っている。


 迅翔竜の種族であるナウルに乗って早20分でサルタリス山脈の奥地まで着いた。それにしても、飛行速度がとてつもなく早かった。ナウルの体に一瞬でも必死にしがみつく力を抜いていれば、私は空中で置いてけぼりになるところだった。その分時間は浪費せずに済んだけど。


 急いで信仰地に行かないと。

 私はナウルに乗ったまま、どんどん進んでいった。歩く速度も速い。

 それにしても、どうしていきなり信仰地まで行かなかったのだろう。その方がずっと楽なのに。


「危険を察知したからここで降りたのかな」

 迅翔竜は空中戦より陸上での狩りを得意とする。そうウォークから聞いた。

 自分で納得したとき、ガサガサッ、と右から草をかき分ける音がした。私は担いであった、3つある細長い携行火器の一本を取り出し、火器を構えた。その重い火器は、勉強で教わった「火縄銃」のような形を成していた。

 1メートルばかりの草叢から現れたのは、ひょっこりと出てきた毛深い小動物。丸っこくて、抱きかかえられるほどの大きさをした、とてもかわいらしい何かの動物が3匹、ころころと転がるように草むらから出ては坂道を登っていく。一匹だけこちらを見、しかしすぐに二匹の後をついていく。


 かわいかったなぁ。ほっとしたと同時、そう和んでいたときだった。

 ガサリ、と大きな草の音。バッと同じ方角を見た。「ひっ」と変な声が出たが、それどころではない。

 草むらから出てきたもの。それは、ここの山脈では頻繁に発生する青毛の熊だった。基準なんてものはわからないけど、私を丸呑みしてもその大きなおなかにすっぽり入りそうなほど、大きな体。その青熊は強面であり、かなり凶暴なのは一目見て分かる。黒い毛並みをした竜とひとりの人間に向かい吼えた。襲う気だ。

 ナウルは眼を鋭くし、鋭利の牙を剥き出しにし、その獣に威嚇の唸りを上げる。


「えっと、こういうときの武器だよね……どうするんだっけこれ」

 どうしよう、使い方があまりわからない。手当たり次第で頭の中と手を動かす。

 銃口を相手に向けて、この引き金を引くんだよね……たぶん。

 私はぎこちなくその銃を青熊に向けて引き金を引いた。


「きゃっ」

 反動で身体が後ろに倒れる。

「いたた……」

 腕もちょっと痛めてしまった。大丈夫かな。

 手綱を引っ張りながら、身を起こして、相手を見た。銃口から大きな網が広がって青熊の方へ向かっていったところまでは確認できた。


「あっ」

 成功した。放った網が巨体の青熊を丸ごと包み込んでいた。青熊はその網を破ろうとするが、もがけばもがくほどその網は絡まっていく。


「あれってイルアの魔法なのかな」

 よく見てみるとその網からは電流が走っていて、網はどんどん獣の巨体を締め付けていく様子が見られた。

 とにかく今の内に進もう。

 私は網に抵抗し続ける青熊を後にし、サルタリス山脈の森を抜け、悠久の大地、渓流地帯へと向かった。


     *


 月下に映る渓流の景色は言葉にすることができない程、美しかった。自ら発光する虫や草花の仄かな光が、環境の美しさの調教をしているようにも見えた。生涯で初めて、支配されていない世界の宵の姿を見た気がした。空に映る億万の星々が、私の心に浅くも広く、浸み込ませていく。

 渓流に入ってから、青熊のような獣は全く出てこなかった。それどころか、危険な気配の片鱗さえ感じられなかった。私が心の奥底から警戒してないからだろうか。それとも本当に危険なものはないのか。いや、気配を隠しているのだろうか。そんな思考を巡らせる。

 どんなに安全だと思われる場所でも気を抜いたら一巻の終わり。いくらナウルと一緒にいるからといって、油断でもしたりしたら……。

 

 ナウルが突然立ち止まる。そして、前方へ唸り声をかけた。

 何もないけど、そこに何かいるの?

 しかしナウルは、私の言葉に応えずに臨戦態勢をとり、身を低くし唸るだけだった。私は威嚇のつもりで、さっき使った重火器とは違うものをひとつ取り出し、前方へ撃ってみた。

 すると、撃った弾が何もない空間に当たり、空色の衝撃波を放った。


「……っ、何かに当たった!」

 その空衝撃によって吹き飛ばされた空間は、じわじわと肉眼で視認できるように姿を現していく。そして、それが岩の壁に激突したとき、鳴き声を上げながら姿全体を露わにした。その生き物は私だけでなく、数多くの研究者にとって極めて稀少な種だった。


「銀色の迅翔竜!?」

 その姿は、迅翔竜ナウルの黒毛とは対を成し、白銀の毛が生えていた。シルバーバックや色違いなどでもない。爪や翼などの形状が微妙に異なる。

 その殺気は、肉体を軽く両断できる程の鋭さを放っていた。今、これだけの距離を置いてもこの瞬間、あの竜の餌食になりそうだ。


 最近読んだ本に書いてあったような。迅翔竜に似ているけど異なる近似種であり希少種『月光竜』。姿がナウルに似ていて、綺麗だったため、印象に残っていた。

 陸上動物であるにもかかわらず、色彩光学的にその姿を透明化し、獲物を狙う。また、夜行性で肉眼で視認できない程の素早さを持つ。尾に猛毒の棘を持った、夜行性の飛竜種って書いてあった。

 けれど、そんなことはどうだっていい。問題はその希少さや見えないことだけではなく、このサルタリス山脈に住む竜の中でもかなり危険な種だと認定されていることだ。


 私はさっきまで頭に思い浮かべていた悪い予想を、考えなければよかったと後悔した。そして、その後悔は恐怖へと変わる。

 しかし、その恐怖の塊の一欠片に安心感があった。少なくとも、こちらにはナウルがいる。それに、私の持っている魔力付きの武器もある。なんとか勝てるかもしれない。

 いける! そう思ったとき、低い体勢を持っていたナウルが突然身を起きだし、私をその大きな背中から滑らせては、地面へと降ろした。着地した勢いで、私は危うく転ぶところだった。


「ナウル? どうしたの? ふたりで協力しないと――っ!」

 ナウルから感じるオーラに違和感があった。

 いつもの穏やかなナウルじゃない。

 ナウルの眼は紅い流星の如く煌き、それは銀の竜へと向けられた。紅く染まった眼は、怒りや警戒、戦闘体勢を表している証。野生の竜と出会い、眠っていた本能が目覚めたのだろう。一対一を仕掛ける気なのか。

 不利すぎる。やっぱり私も戦わないと――。


『――』

「っ? 声……?」

 誰なの? もう一度耳を傾ける。

『――』

 私に構わず先に行け。と言っているのだろうか。

 もしかして……。

「ナウル?」


 私は声の聞こえた方へと視線をたどると、ナウルの姿があった。やっぱり今のはナウルの声なのか。

 けれど、竜が話すなんて有り得ない。幻聴? でも、今はそんなことを考えている場合じゃない。


 わかった――そうナウルに向かって答えると、ナウルは理解したのか、一吠えかけた。

 瞬間、月光竜に襲い掛かった。相手も対抗し、目にもとどまらぬ速さで突進する。

 戦いは激しいものだった。互いに咆え合い、その鋭い爪や牙、尻尾の棘であいての肉体を痛めつけていく様子は見ていられなかった。


『早くいけ!』というナウルの声を聴き、我に返ると、私は躊躇っていた足を動かし、すぐに信仰地へ続く道を走った。心の中で何度も謝りながら。



 ナウルを置いていき、後ろを振り向かずにひたすら走り続けた。走る最中、夜行性の獣や竜が私を見つけては威嚇するが、それらに構わず避けながら前へ前へと向かった。王宮の平らな床とは違い、山奥の地面は凸凹している。足元と体力が奪われていく。

 もう走れない。

 立ち止まり、荒くなった息を調えようとするが、眩暈がし、身体がふらつく。足が痛い。胸が痛い。頭が痛い。空気の味が違う。

 でも、ここまで離れればもう大丈夫だろう。

 そう思い、私は少し気を緩めた。


 ――ひたすら走り続けたため気が付かなかった。動物たちが私の横を通り過ぎていく。鳥の鳴き声も騒がしい。走る、というより逃げているのだろうか。

「どうしたんだろう……」


 ――パキ……。


 後ろの方から枝の折れた音が聞こえた。小さい音だったが、その音はなぜか、この渓流の森に響き渡るかのように大きな音を立てた。嫌な気配がする……。

 さっきの月光竜の比じゃない。何か危険な――


 ――バチバチバチッ


 放電音が激しく鳴る。私は恐れつつも、すぐに振り返る。

 そこにいたのは見上げる程の大きさをし、黄色や青緑の流れるような毛並みは野生の美しさと同時に力強さを物語っていた。

 頭から生えた二本の角は鬼の風格を表現し、四肢は逞しく、この険しい渓流地帯の切り立った崖や岩山を飛び移る際に発達したものといえよう。その竜の周りには青緑の仄かな光を放つ電光粒子が舞い、青い高電圧を纏う。

 小さいころから教わった神話にも登場し、アマツメやゲナ同様、サルト国でこの竜を知らないものはほとんどいない。

 竜の名は迦雷獅子カラジシ。又の名を雷王。

 この森の、この山の王だ。


 ――ヴォォォォォオオオォォオオオォオッッッ!!!


 その咆哮は木々を震わせた。私はとっさに耳を塞ぐ。耳が痛いっ!

 咆哮が止んだ後、雷王は私に向かって高く跳び上がり、右腕の一撃を放った。

「――っ」

 悲鳴すら上げられず、私は素早く避け、草むらに飛び込む。その一撃は地鳴りと共に、石と土が混じった地面に大穴を空けた。

 私は仰向けになり、すぐに魔術のかけられた携行火器を手にし、雷王に向けて撃ち続ける。

 しかし、あまりにも焦っていたのか、当たったのはほんの2発。被弾する度、竜は唸るが、屈しない。一人の少女に歩み寄ってくる。そのゆっくりとした動きから、いつ牙を剥いて襲ってくるのか。計り知れない恐怖があった。


 撃ち続ければ倒れる。撃ち続ければなんとかなる。

 そう言い聞かせ、焦る気持ちを抑え、ひたすらに雷王を狙い撃つ。

 その時、雷王は狼が咆えるかのような体勢をとり、遠吠えを上げる。

 すると、その体から激しい電流がほど走り、それは空から落ちる稲妻へと変わった。

 小さくとも、それは落雷。稲妻が辺りで激しく大地に落ち続ける。


「きゃっ!」

 私は落ちた稲妻の衝撃波に軽く吹き飛ばされた。その時、持っていた武器全部を落としてしまった。しかし、雷王は武器を拾わせる猶予を与えない。高圧放電しながらこちらへ突進してくる。

 力の限り、地を蹴り、間一髪、避けることができた。肌に電気がピリピリと感じる。木々を倒し、小屋と同じほどの岩をも木端微塵にする。

 このまま死にたくない。痛いのも嫌だ。

 逃げる。ただひたすらに逃げる。王は制裁を与える為、当然追ってくる。


 息が苦しい!

 肺が痛い!

 足が痛い!

 殺されたくない!

 もうこれ以上走れないほどの体力の限界に達しても、死の恐怖によって肉体の限界を超える。

 まだこんなところで死にたくない! 何のためにここまで来て、こんな思いをしているの?

 災龍を見るため、その正体を突き止めるためにここまで来たんだ。それを叶えるためにも、死ぬわけにはいかない。

 イルアの約束も破りたくない。お父さんやウォークたちを悲しませたくない。何が何でも逃げ切らないと!

 無我夢中で走ると、太い枝の集合体で結ばれたサルタリス大橋が見えた。

 信仰地までもうすぐ!

 私は咳き込みながらもその橋に向かって走り続けた。迦雷獅子はまだ追ってくる。もう少しで追いつかれそうだ。

「~~~~っっ!」

 私は声にならない声を出していたことにも気が付かず、何十メートルもある橋を渡りきった。躓き、転びそうになるも、身体を前に倒しながら、転げるように信仰地へと。


「……はぁっ……はぁ……けほっ、げほっ」

 信仰地に着いた。後ろを見る。

 竜が追ってくる様子はなかった。

 あの巨体では流石に橋は渡れないのか。私は崩れるように地に膝をつき、咳き込む。

 頭がクラクラする。足がとても痛くて、もうこれ以上は走れる気がしなかった。こんなに走ったのも、こんなに真剣に走ったのも生まれて初めてだった。

 出発してからどれだけ経ったのだろう。腕に付けておいた時計をみると11時45分を指していた。

 いくら走りやすい構造をした服装といっても結局は巫女の服。しかも、いつも着ている服より重たい。よく走れたものだと自分で賞賛する。

「……はぁ……とりあえず……逃げ切れた……かな……?」


 ヴォルルル……


「っ、きゃあ!」

 さっきまではいなかったはずだ。全く気付かなかった。

 私は足をふらつかせてはその場からすぐに離れた。その朧月のような眼光は私を見続けている。 いつの間に橋を渡ってきたの?

 しかし、逃げる力など、とうに尽きていた。私は社の賽銭箱の前で腰を抜かし、しりもちをつく。森の王はじりじりと近づいてくる。追い詰められた。


「はぁ……はぁ……」

 足も疲れて、痛くて上手く動かせない。立ち上がれない。息切れして体ももたない。腰が抜けて立てない……。

 もうダメかな……。

 そんな思いを馳せ、ふと満月を見ると、何かがこっちへ飛んでくるのが目についた。だんだん近づいてくる。


 飛竜? ……嘘でしょ?

 蝙蝠コウモリのような翼膜に堅殻の鱗を纏った翼は黄金色。薄く赤も交じり、月の光によって光沢を増している。

 産卵期になると、全身が黄金色から桜色になる、目撃情報が少ない非常に珍しい竜。どうしてそのように変色するのはウォークにでも聞かないとわからない。その身体は歳を重ねるごとに強靭さを増してゆく。

 名は炎桜竜。またの名を月食命ツキハミノミコト。大空を支配する炎王だ。


 今日はよく珍しい生き物に会えるな……。

 もうどうでもよくなっているのが自分でもわかる。生を諦めたのかもしれない。死にたくないのに、逃げなきゃと必死で思っているのに体が動きたがらない。腰が完全に抜けて、身体の限界を越えている。


 森の王は空の王の存在に気が付いたのか、標的を私から炎桜竜へと変え、跳びかかった。互いに衝突し、地響きを鳴らし転がり込んだ。

 森の王は轟音をたてるほどの高圧電流を放電しながら、その頑強な鋭爪で深く傷跡をつけ、空の王はその金色の鉤爪で掴み、尻尾にある毒棘を突き刺しながら、その口から炎をはき続けた。

 電撃と熱が轟音ともいえる咆哮と共にこちらまで伝わってくる。放電の稲妻や炎の息吹が、辺りの地面を抉り取る。


 信仰地、奉神アマツメの玉座で繰り広げられる二対の王の争い。どちらかが勝っても、私を喰い殺すんだろうな。

 今のうちに逃げれると思うけど、体は上手く動かないし、あの争いに巻き込まれるかもしれないし、なにより壮絶な戦いが間近で繰り広げられているから恐怖心で震えが止まらない。けど、ここにいるのも危ない。ここから離れないと。


 ……そういえば、社に近づいちゃダメだったね。ああ、この状況でなんでこんなに体が必死になれないんだろう。頭の中では逃げたがっているのに。

 二頭の竜が争いの勢いで掴みあいながらこちらに転がり込んでくる。この勢いだったら社ごと大破してしまうだろう。逃げないと死んでしまう……でも体が逃げようと思わない。走っただけなのに、必死に走り続けただけなのに、それだけで体は休みたがる。竜は目前まできていた。もう間に合わない。

「ごめんね、みんな……」

 私は死を覚悟した。



 ――……。



「……?」

 恐る恐る目を開ける。

「あれ……?」

 目の前まで来た雷王と炎王がいない。


 それは、一瞬の事だった。一瞬であの大きな竜たちは、争いの痕跡だけを残し、忽然と消えたのだ。竜の咆哮で煩かった場所がたった今、再び無音の地となった。まるで、さっきまでの出来事がなかったかのように。

「……何が、起きたの?」

 ただ茫然として、社の入り口の階段に座り込む。


 風の流れを涼しみ十数分を経た後、ナウルが私を迎えに、空を滑空して降りてきた。傷だらけになっていたが、その様子からしてまだ動けるようだ。身体や脚はまだ痛むが、立って歩けることぐらいはできた。

「……一緒に帰ろう、ナウル」

 ナウルの弱々しい一吠えと共に、空へと飛び立った。


     *


 結局、災龍についての事は何も知れなかったな……。でも、あの不思議な出来事は、きっと災龍の仕業に違いない。あれは社を守る為だったのか、それとも……社を守る為に決まってるよね。


 帰る途中、私たちは空を飛んでいるはずだったのに、いつの間にか竜小屋の裏の広場丘にいた。

 それは、イルアの魔術による転送魔法によるものだと後から気づいた。目の前にはイルアが涙目で「おかえり」といい、私を抱きしめた。

 ああ、無事に帰ってきたんだ、私。

 そう思った途端、涙が零れてきた。


     *


 あのあと、私が王宮から出たことは誰も知られないまま日々が過ぎていった。

 それにしても、どうしてイルアはあのとき私と同行しなかったのか。


「信仰祭のとき、あなたは災龍の存在に気が付いたんでしょ? だとしたら、災龍も気づかれたことをわかっているはず。気まぐれかどうかわからないけど、場合によってはそのとき一瞬であなたは殺されたかもしれないじゃない」

「たしかにそうかも……」

「でも、殺さなかった。そして今回の件で、あなたは2匹の竜と同じ場所にいたのにあなただけ助かった。顔も覚えているはず。だけど、始末しなかった……ということは、災龍は無差別に殺すわけじゃない。それに、もしかすると災龍は……いえ、何でもないわ」

「……? それで、イルアが来なかった理由は?」

「あたしは何年も前に信仰地を訪れて、災龍に襲われたっていったでしょ? そのとき、災龍はあたしの顔も覚えているはず。だから一緒に同行しちゃうと、あなたも敵だと判断されて、あたしと共にこの世をおさらばしちゃうってわけ。ま、憶測に過ぎないけどね」


 それに、イルアから聞いたが災龍は渓流地帯含む、サルタリス山脈全域を見渡せるほどの眼を持つらしい。正に神といっても過言ではないだろう。

 私はイルアの魔法のおかげで疲れ切った体は全快した。それに、ナウルの傷も完治させた。イルアに頼ってばっかりだけど、バレない為だから仕方がない。それに彼女はクビにならないためにも全力(?)で私を支えてくれている。


「……」

 災龍……その存在を知る為ならば、何度でもあの場所へ訪れようと思う。

 迷惑をかけてしまうけど、私は私の望むままにやっていこう。

 例え、そこに危険が潜んでいようとも。

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