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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第一章 一節 王国サルト
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3.伝説の実在

《ウォーク》

 馬車に乗って三十分。やっと僕の知り合いの店に着いた。

 周りを見渡してみると、流石"光都ルーク"、仕組みはわからないが、太陽の光が眩しくない程の微かな輝きでこの街に留まっている、とでも言おうか。王女の方を見ると、街の景色に目を輝かせていた、光り輝く街並みよりも。


「ほら、早く中に入りましょう。時間も迫ってきていますので」

 時計を見ると3時を指していた。日が沈む前にさっさと用をすまして、王女を安全に連れて帰ろう。何もなかったかのようにして。


「ねぇ! ウォークの知り合いってどんな人たちなの?」僕の方に寄っては大きな声で訊く。もういい年なんだけどな、と傍らで思う。


「んー、どんな人と言われましても……名前はそれぞれアーカイド、タキトス、セトと言いますがー……あはは、とりあえず店の中に入ればすぐわかりますよ」

 そう誤魔化した僕は目の前にある大きな店の扉を開けた。店自体は他の光り輝く建物とあまり変わらないが、傍にある古そうな看板には「DRAGON's MATERIAL STORE」と大きく書いてあった。「龍材屋」という意味だ。


 店内に客はいなかった。しかし、龍材専門店なだけに竜の端材はざいだけでなく、内臓器官や肉をはじめとした体の部位、5.5型(やや中型に分類される)竜の死体丸ごと一体、更には竜の素材で作られた小道具や衣服、装備、武器などが一通り揃っている。それらはいくつもの棚やテーブルに置かれていたり、壁に掛けられていたり、壁際や中央に並べられていたり、そして天井に吊るされている。店の奥にある培養液の入った水槽に浮かべられているのもある。

 店内は店の外と同じぐらい明るいにもかかわらず、その生を奪われた醜塊から発する負の何かがこの部屋の明かりを暗くしている、そんな気がした。

 そこまで広くない店だが、ここまで多くの商品があり、整頓されていると、より広く感じる。


 店のカウンターに行くと、真紅の髪を透かした、いかにも何かの競技をしている。そう思わせる筋肉を併せ持ったワイルド系イケメンと、スキンヘッドで肥満系マッチョスタイルの中年大男が立っていた。


「おお!! ウォーク久しぶりだな!! なんだかやつれた顔をしているが、とりあえず元気そうで何よりだ!!」

 マッチョな中年大男「タキトス」が店内に響きわたるぐらいの大声で話した。王女は思わず両耳を手で塞いだ。

 マッチョな彼の耳から一本の剛毛が生えているのをみて、なんだか指摘したくなるが、そのことに対しては敢えて無視しよう。


「相変わらずの騒音声で安心したよ」

「だははは!! それは褒め言葉か!!」

 大声で話す彼の言葉を割いては、アーカイドが隣で話す。よく真横にいるのにもかかわらず、タキトスの爆音ボイスに耐えられるよな、と考える。


「で、どうした。なんか欲しいものがあるのか? それとももう一度、俺らと組んでハンター生活を過ごす気になったか?」

「いや、僕は王宮でやるべきことがたくさんあるから。アーカイドたちには悪いけど、この仕事を辞めるわけにはいかないんだ」

「……そうか。まぁ自分の道は自分で決めるのが人間ってもんだ。頑張れよ」

 そうアーカイドが言った後、タキトスが今やっと僕の後ろに隠れている王女の存在に気が付いた。


「おい!! お前の傍で耳をふさいでいるそこのローブ娘は誰だ!!」

 上手く誤魔化しとくかと思ったとき、アーカイドがなにかわかりきったような顔をして僕に注意した。


「はぁ~……ウォーク、いくらなんでもこの国の王女様を外に連れ出すのはダメだろ。王女様がなにをなさってまで町に行きたいとおっしゃったのかは知らないけどな、王女直属の召使としてそこは同情したら負けだ負け。そりゃあ王女様はかわいくて、何か頼まれたら従ってしまうくらいの愛嬌さがあると思うけどよ、だからと言って……」

「わーっ! もうやめてくれぇ!」

 的中しすぎだ! というかもうバレた! 現場を見たのかこいつは!


「だははは!! やはりウォークも男だな!! 女の頼みは断れんもんだ!!」

 タキトスはさらにうるさく笑う。アーカイドも同じように笑った。


「……で、実際誰?」とアーカイドは言う。

「え?」頓狂な声が出てしまう。

「だーから、その娘は実際誰なの? さっきのリアクションはおまえにしては良かった方だけど、まさか王女様本人じゃないだろうな」

「いや、あの、普通に王女です」

 素直に言ってしまった自分を殴りたかった。


「まっさか、おまえもそんな冗談を言うようになったとはな」と笑う。

「いや、本当です」

 僕の顔を見て察したのだろう。そして、王女からも何も言わなかった(本人にしてみれば何を話せばいいかわからなかっただろうけど)以上、アーカイドは苦笑し、そして、

「……本気の本気で?」

「うん、本物」


 途端、アーカイドとタキトスはカウンターから急いで出てきては、ローブ姿の王女の前でひざまずく。

「ようこそおいでくださいまし……えと、いや、先程の、ぶ、無礼? を……あの、さっきは本当にすいませんでした!」

 敬語てんで駄目じゃねーか、と叫びたくなる。


「バッカ野郎!! 口調がまるで駄目じゃねーか!!」

 おまえもだバカ野郎。いい歳してなんで王族に対応する言葉を持ち合わせていないんだ。

 そう思ったとき、王女はぷっ、と吹き出し、小さく笑った。アーカイドとタキトスは「え?」と意外そうな顔で、同時に王女の方へ頭を上げる。


「あの、大丈夫です。ですので、えーと、普通に話してくださってもいいですよ」

 おおお、と言わんばかりに彼らはなぜか感嘆し、許可なく立ち上がる。


「おまえらなぁ……」

 ため息をつきたいが、王女がそう言うなら仕方ないか。

 王族も平民も平等に。そう説いたのは王女の母親であるキク王妃だった。彼女の教えをもとに育ってきた王女は、偉そうにもなることなく、かえって王族に対する敬意と振る舞いに未だ慣れない娘になっていた。固すぎる敬語や、跪かせるようなことはさせたくないとこの間言っていたな、と思い返す。


「だははは!! いやぁ、王女様はなんとお優しいことか!! そこの召使とは違ってな!!」

「おい調子に乗るなよ」と僕は呆れる。


「あ、あの」と王女は少し躊躇いながら、アーカイドに訊く。

「? どうされました?」

「あそこのドラゴンって……本物なの?」

「ええ、その通りです。俺らが狩った獣竜です。少し小型ですけど」

 王女は関心した様子でホルマリン漬けされた竜の死骸をまじまじと見る。

「やっぱり実物見せた方が興味出てくるんだな……」僕はつぶやく。それを聞いていたアーカイドは腕を組む。

「そりゃそうだろうよ。百聞は一見に如かずって言葉が――」


 そのとき、壁際の戸棚の中の瓶がカタカタと鳴り始める。いや、それだけではない。地面がグラグラと揺れ始めていた。床が軋み、光石照明がゆらゆらと振れる。僕はすぐに王女の安全を確保した。

 しかし、揺れはすぐに収まり、物も倒れることも、落ちることもなかった。

「地震……?」

 そう王女が呟いたときだった。


 ――ズダァン! と爆轟ともいえる巨音が外から轟いてくる。窓の一枚がヒビ割れ、細かい振動を伝った床に足を付けていた僕らは、脚部の筋肉を中心に、僅かの間痺れてしまっていた。

「っ、くそ、またか」


 アーカイドは眉を寄せては言う。「これで何度目だ!!」とタキトスも半ば怒っているようにも見える。

 そういえば先月もこのような形の変わった地震があったな。最近、地震の発生率が高い気がする。

「最近多いなー」とアーカイドは呟く。王女は「もう大丈夫だよ、ありがとう」と言っては僕から離れようとする。結構密着していたようで、僕も慌てて離れ、すぐに謝った。ちょっとばかり王女の顔が赤いのは、僕の妄想だろう。妄想は幻覚を生むと本に書いてあったことを思い出す。


「そうだな、この間は馬鹿でかい落雷の雨で山火事とがけ崩れも起きた挙句、丸焦げになった民家もいくつかあったし、3か月前の"天の咆哮"が起きた翌日には城壁や窓が割れかけていたし、相変わらずアミューダ地方って変な自然災害起きるよな」

「まったくよ、ここまで多かったら、"災龍"の噂も本当だって思えてくるぜ!!」

「……災龍?」


 タキトスの言った、ある単語に王女は反応する。それを耳にしたアーカイドは、

「災龍をご存知なのですか?」

「はい、国王おとうさんがよくその名前を口にするので……ですけど、どういった生き物なのかは知らないです」


 竜について興味がなかったからね。僕としてはショックなことだった。災龍の話については「伝説染みているし現実性ないから聞かなくてもいいでしょ」という始末。言い訳の時だけあまり使わない、難しい言葉使うよな、と思ったりする。

 サクラが物静かにそう言うと、アーカイドがは「あの竜好きのウォークから聞いていないのか」と呟きつつ、説明し始めた。


「"災龍"とは、名の通り大きな災いを呼び起こす龍の事です。王女様は神話に出てくる"厄神ゲナ"という神はご存じでしょう。災龍は神話に出てくる厄神ゲナそのものなのです。目撃情報は皆無に等しいですが、時々見かける奇怪な天災が勃発する際に、自然物とは言い難い、得体のしれない何かの一部が見られることがあります。今の地震も災龍の仕業によるものかと」

 王女はアーカイドの説明をしっかりと聞いている。僕の時は全然振り向きもしなかったのに、この差は何なんだ、と悲しくなってくる。


生態管理(ハンター)同業者組合(ギルド)や国の長年の研究で、その異物は龍の身体の一部だと判明しました。しかしながら、わかりきったことはそれだけのため、その存在は未だ謎のままなのです。……あ、申し訳ありません、つまらない話をしてしまいましたね」

 サクラにとって他人であるアーカイドに頭を下げられたので、彼女はどうしたらいいか困っている様子だ。お互いに恐縮そうな表情をしている。これが俗にいう身分平等ってやつか。いや違うか。


 それにしても……。

 災龍……このアミューダに住んでいる者なら、誰もが(例外も然り)その名を知っている"虚無の伝説"。

 先ほどの説明の通り、宗教としては"厄神ゲナ"とも云われている。"奉神アマツメ"と対を成し、肩を並べる程の知名度と、その神に匹敵する程の力を持っていると聞いたことがある。豊穣の神アマツメと厄災の神ゲナ。当然、厄災の神の具現化ともいえる災龍は、サルト国の民謡や宗教で悪の事象として認識されている。

 事実、その"龍"が天災を引き起こし、この国にもある程度の被害をもたらしているので、悪とされ、嫌厭されるのも無理はない。存在している証明がないとはいえ、人間、何かのせいにしなければやっていけない種族。そうなってしまうのも仕方がない。毎月"お祓いの儀式"を開いては、厄を祓ってもらうという風習が古くから続いている。


 一時期、僕はその噂や伝説でしか知られていない龍の正体を知りたく、空いた時間はすべて調査に費やした。遂には野外調査をし、独自の調査結果、奇怪な天災はサルト国からでも見ることができる「サルタリス山脈」の深部に一番多く発生することがわかった。

 つまり、災龍はそこで一番多く活動しているということだ。理由はわからないが、どうやらその龍は名前の割には随分と自然豊かなところを好むようだ


 しかし、その幻影の存在は時に牙をむけた。

 調査中、突然の地震と竜巻が同じ場所に同時に起こり、僕を巻き込んだ。幸い、死には至らずに済んだが、僕は全身の複雑骨折をし、ハンターを辞すこととなったのだ。今はもう完治したが、その後遺症がまだ残っているため、活発に動けることができなくなった。

 ……もうあの時のようにみんなで狩りはできない。

「あ、忘れてた。ウォーク、用件はなんだ」

 アーカイドはさっきまでの会話がなかったかのように僕に本題を吹っ掛けた。


「ん? ああ、そうだった。え~っと、アマツメの珠玉と、できればアマツメの素材が欲しい。あと、できれば嵐霊龍、峯老龍、山海龍の素材があれば欲しいな。さすがに貴重すぎるか」

 僕が淡々と素材を大量に要求したので、彼は目を丸くした。そして呆れる。


「お前注文多すぎ。そんなに注文して何に使うんだ?」

「信仰祭に着ることになる、王女と国王様の神聖な衣装だ。毎年使われている衣装でもよかったんだけど、今年はあれだろ、宗教として十二年に一度、新たな神がこの現実世界に降臨されて、今まで現実世界におられた神が別の世界にお帰りになられる、つまり"時代の転生の年"。だから衣装も新しいのにしようかなって思って」

 僕が誇らしく説明した後、タキトスが「おお」と感心している反面、アーカイドが再び質問をした。


「で、国王の許可は下ったのか?」

「僕からは言ってないけど、プリウス大臣に伝えといたよ。今頃、国王様に伝わられているはずだ。国王様の性格からして絶対オッケーだと思うけど」

「そういうしっかりしたとこは相変わらずだな!! だははは!!」

「で、僕が注文したもの、全部買える?」

「いや、無料タダでいいよ。俺、国王尊敬してるし、それに王族から金を巻き取るなんてなんか胸糞悪い。てか二着分ぐらいなら別にそこまで店に支障はない。素材はまだ有り余ってるしな」

「つっても、闇市から取り寄せた――」

「まぁとにかくだ! 他の客やどっかの貴族から金をたっぷり貰うことにするよ。予約は殺到してるしな。正直、この店の株は上がってきてるぞ。だから素材は必要なだけ持って行け」

 アーカイドが頭をかきながら言った。


「ああ、ありがとな」

「礼を言うならそこにおられる王女様に言うんだな。今回はサービスだ」

 アーカイドはそう言った後、サクラ王女にウィンクをした。そのあと、彼は突如真剣な眼差しで僕を鋭く見る。


「……ただし、条件がある」

「条件?」僕は眉を寄せる。

「条件、というより頼みに近い。お願いがある」

「どんな頼みだ?」

 僕が質問すると、彼は事情を説明した。


 簡潔に内容をまとめると、3日前から行方不明になっている龍材屋のハンターであり、アーカイドらといっしょに暮している「セト」を一緒に探してほしい、とのことだ。僕はてっきり店の奥にいるのかと思っていたが。

 どうやらその日、ある竜の討伐依頼を受け、3人で竜を狩りに、サルト国の北西都市"砂都"に隣接する"サルト砂漠"の近くにある"剣針山"に行ったという。

 しかし討伐後、突然の暴風雨の際に、はぐれてしまったらしい。二人は何時間も探したらしいが、結局見つからなかったという話だ。

 条件はセトの捜索の協力。そんなもの、わざわざ条件にしてどうするんだと、まず思った。かつて共に過ごした仲間。家族も同然だった以上、答えは決まっている。


「で、今は探してないということか」

 僕がそう聞くと、

「いや、1日6時間近くは捜索している。ついでに素材狩りもしてるけど。今は店の仕事で帰ってきたとこだ。商売もしなきゃ、お前も含めた"5人"で作り上げたこの店が潰れてしまうからな。そんときにたまたまお前と王女様がやってきたわけだ。……で、どうだ。引き受けてくれるか?」

 アーカイドが険しい目で僕を見る。タキトスも真剣な顔をしていた。


「あたりまえだ。引き受けるに決まってる。だけど、今からは少し無理だ。王女の事もあるし、この買い出しの事もある。悪いけど、僕が行くのは明日の昼からにしてくれないか?」

「オーケー。じゃ、明日の正午、捜索を開始する。集合場所はこの店の前だ」

 そう決めた後、僕は王女に話しかけた。


「王女、さきほどのお話は聞いたかと思います。大変申し訳ありませんが、明日、行方不明の私の仲間を探しに十一時から少しばかり国を離れます。その日のうちに帰ってこれると思いますので、私に出国許可を――」

「うん、いいよ。大切な友達なんでしょ? 侍女長とお父さんには伝えておくわ。私は一日くらい一人でいてもどうってことないんだから!」

 サクラは「まかせて」といわんばかりに胸を張る。頼もしさがその優しい笑顔から溢れていた。


「じゃ、時間も時間だし、僕たちはもう帰るとするよ」

「ああ、明日、よろしく頼む」「しっかり準備をするんだぞ!!」

 二人の声を聴きながら、店の出入り口のドアを開けようとした。


 その時、勝手にドアがゆっくりと開いた。

「……?」

 いや、外側にいる誰かが開けたのだ。

 客か? と思ったが、姿を見るとその容姿は水簿らしく、服もボロボロだが、よく見ればその服は、かつてれっきとした防具だったことがわかった。しかも、元ドラゴンハンターの僕の目から見て、それは竜の中でも非常に良質な"古の龍"の素材から造られた装備だったと感じられた。おそらく、かつての時代、天災そのものだと云われた煌皇龍の装備だと思われる。


「……」

 しかし、どうやってそんなボロボロになるんだ。そう思いながら顔を見てみると、ボロ雑巾のように痩せ細っていて、何か所もの生々しい傷跡が顔だけでなく、体中にもついていた。出血も激しく、赤黒い肉が抉れ、白い部分がその隙間から露出していて、今すぐにでも目を背けたくなるような酷い怪我だった。王女にとっては刺激の強すぎる光景だ。僕は彼女の目をすぐに塞いだ。

 僕はその死人のような顔をよく見てみると過去にどこかで見たことがあるような気がした。

 たしか……いや、もしかして……。


「……セト?」

 そう聞くと、その死人みたいな生者は無言で頷いた後、その場で倒れた。


「「「セトっ!!」」」

 アーカイドとタキトスもその場に駆け付けた。サクラは悲鳴を上げることもなく、ただ茫然と、そのセトという生死を彷徨う人間を見続けていた。意識を確認してみると、どうやら意識はまだあり、ただ倒れただけのようだ。


「セト! 一体何があったんだ! 装備もそんなやわじゃないだろ! なんでこんなに壊れてるんだ!」

 アーカイドが叫び続ける。

 確かに、暴風雨や崖崩れ程度では傷がつかないその『古の龍』の装備が、ここまで破壊されているのはただ事ではない。それに、その中でも最高級に分類する"煌皇龍"の装備は、溶岩でも雷でも極寒地でも、屈強な獣や龍の攻撃でさえもものともしない程の強度を誇っている。

 が、ここまで粉砕させ、人体に致命傷を与える程の破壊力を持つとは一体どんな……。


「っ、もしかして――」

「セト! 一体何があった! 返事をしてくれ! おい! セトっ!」

 アーカイドとタキトスが声をかけ続けると、セトが掠れた声で口元を震わしている。彼の目を見ると、恐怖に包まれているかのように脅えていた。

 世界の終末を目の当たりにしたかのように。


「……地獄……を……みた……ゴブォッ、ゲホ……まわりの景、色……が……一瞬、で……しん、だ……この世の……ごふっ……もの、じゃ……な、い……」

 そして彼は最後の力を振り絞ってはっきりとこう告げた後、意識を失った。

 彼は言った。

 

 ――災龍は実在する、と……。


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