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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第三章 一節 革命の灯が消える刻
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7.群の頭首

「くそッ、こんなに被害が出たのは想定外だ」

 施設の内部のように道の整った灰色の洞窟の中、二カロはある場所へと向かっていた。

 下っ端でもそこそこは優れた殺し屋並みの兵力であり、装備も武器も生半可ではない。

 戦略もそれなりに練った。だが、それを打ち壊す存在があった。

 国からの対策だろうかとニカロは考える。しかし、それにしてはどうも腑に落ちない。あらかじめ結成された特攻小隊ではないことはわかっていた。

「それにしたってな……無茶苦茶だろう」

 世の中わからないものだな、と付け足す。

 その顔は笑っていた。


     *


「さて、と……こんなもんかな」

 レインがそう呟いた。

 侵入した途端、武器を持った36人もの黒マントたちが一斉に襲い掛かってきたのだ。

 僕らは戦い抜き、負傷しながらもなんとか全滅させることができた。あたりは重傷を負った黒マントが気を失って倒れている。ほとんどタキトスとハリタロスさん、アーカイドのおかげで切り抜けられたようなものだった。だが、狩る対象が獣や竜ではなく、人間だ。それなりの抵抗はあっただろう。僕だって例外ではなかった。


「よっしゃ、思ったよりいけるもんだな」

「……馬鹿みたいに鍛錬していた甲斐があったな」

 レインも頑張った方だった。あんなに大きな大剣を使いこなすとは。あいつの戦っている姿、初めて見たなぁ。

 サニーは銃撃戦を得意とするのがわかった。日頃ボウガン等の遠距離武器の訓練をしていた甲斐があったようだ。

 クラウはキャノンとランスを組み合わせた遠近両用武器のガンランスを使って戦っていたな。ほとんど無表情で戦っていた。不動心が備わっている。

 そして僕は……何もできなかった。


「……」

 武器はかつて使いこなしていた太刀を背に担いで持っていたが、生憎活発な動きができない障害を持った身体。戦えばすぐに壊れる、脆いからだ

 悔しかった。みんなが目の前で必死に戦っているのに僕は何もできない。悔しかった。

 僕は自分には何もできないという無力感に襲われた。

 そのとき、背中を強く叩かれて思わず前に転びそうになる。振り向くとレインの姿があった。


「なんでお前悔しそうな顔してんだよ。お前はお前にしかできないことやっただろ。で、これからもその役割がある。だから何も悔しがる必要はないだろ」

 不甲斐にも慰められた。

 僕は馬鹿だ。感情がすぐ顔に出てしまう。だから、みんなに気づかれてしまう。

 だけど、今はそんなことに感傷に浸っている場合じゃない。一刻も早く王女を助け、国の破壊を止めなければ。

「……そうだな、ごめん」


 僕らは広い空間に出た。室内だが、外のような明るさを放っている。何の為の部屋だろ。

 しん、とした空気の中、高笑いするかのような声が突然響く。僕らは武器を構える。


「ようこそ! 我が本拠地アジトへ!」

 声が聞こえた方へ目を向けると、奥のドアの前に黒い服を着た30代の男性がそこにいた。他の奴らとは違うオーラを放っている。おそらくこいつが頭首だろう。


「……? 前にどこかで見たような……」

 いや、気のせいか。それに名前だって知らない。

「とまぁ、ありきたりな台詞も気持ちよく吐いたところで……散々やってくれたじゃねぇか! お宅訪問にしちゃあ刺激が強すぎるぜ? あんたらよぉ!」

「そっちこそ、最高のおもてなしで感激した位だったよ」

 嫌味に対し嫌味で返す。

「ひゃはははっ! お前がこのチームの代表格リーダーか、少年?」

 挑発するかのようにその男は吐き捨てる。

 気のせいじゃない。やはり一度出会ったことがある。それも、今年の内だろう。聞き覚えのある声だった。


「ああ、そうだよ」

「えっウソ、マジで? ギャハハハ、冗談で言ったのにガチだったとはびっくりだぜ! 敢えていちばんそうでなさそうな下っ端っぽい奴選んで聞いたのによ!」

 挑発してくるが、それに反応するほど、今の僕に余裕はない。王女が最優先だ。


「おいウォーク! こんなのに構ってねぇでさっさと行こうぜ、時間の無駄だ」

 僕に対しての挑発をレインが受け止めたかのように、その表情は苛立ちを示していた。しかし、確かに時間の無駄だというのは同じ気持ちだ。

 男は肩を竦める。


「おいおいそんなこと言うなよ、折角こちらから楽しいゲームをやろうと思ったのによぉ、そんなに冷たくされたら悲しくな――」


 ――バゴォン!


「――っ!?」

 いきなり天井が爆発するかのように壊れ、部屋の中央にその瓦礫がガラガラと落ちてくる。砂埃が舞い上がり、見えなくなるが、その瓦礫から聞こえる複数の声で何が起きたのかすぐ把握できた。


「痛~、ちょっと! 私らの足場ごと床を壊さないでよ!」

「おまえさっきからぴーぴーうるせぇんだよ、いっぺん死んどくか?」

「まぁまぁ二人とも、まずここの状況を把握してから言い争ってください」

「「ん?」」


 レウ、キケノさん、ポートさんの3人が上から降りてきたのだ。正確に言えば落ちてきたのだが。

 どうやら敵は全滅できたようだが、想像するのはやめよう。あの天井の上は地獄絵図と化しているに違いない。


「チッ、ここまで来たか……」

 男は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「あっ、ウォークくぅん!会いたかったよ~!」

「うわわ、わわっ」

 いきなり僕の方に勢いよくキケノさんが跳びかかり、抱きしめてくる。僕はその勢いに倒れてしまう。抱きつかれたまま。


「もうあの二人ヤバかったのよぉ~! めちゃくちゃに暴れるし、言うこと聞かないし、私もうついてけなくてウオーク君がとっても恋しくなっちゃったの! この傷ついた心を癒していてほしいな~」

 このとき、アーカイドは何か言いたそうにしていたが、その顔はドン引きという言葉に最適の顔をしていた。


「じゃ、そんなわけで、最初と今の立場が逆転したな! 飛んで火にいる夏の虫とはお前の事だな」

 気を取り直したアーカイドが言う。

「てかこいつ、誰だか知ってる奴いる?」

 その問いにキケノさんが起き上がって答えた。


「二カロ。この組織の頭首。裏で部隊の指示をする統率者よ」

 すると、ニカロは「おお」と感心しては、

「よく御存じで。情報には書かれないようにしていたんだがな。あと君、なかなかの美人さんですね。今夜俺といっしょに――」

「いいからさっさと王女様の居場所教えろっつってんだよ! 口説いてんじゃねェよこの欲求不満が!」

 アーカイドがキレた。もう二カロという男の話にはついていけなくなったのだろう。


「おっとっとぉ、おにいさんったらそんなに怒るなよ。じゃ、教えよう。この扉の向こうにそいつのいる部屋がある」

 二カロは親指で後ろを指す。

「ちなみに、これが本当か、それとも罠かは、あんたらで決めな」

 そう言っては奥の鋼鉄のドアを開け、出ていこうとする際に、こう呟いた。「そうだ、その王女様を開放するための鍵、俺持ってんだよねぇ♪ 早くしないと――この鍵、どっかに捨てちゃうよ~」

 と言ってドアをバタンと閉める。


「っ!」

 僕らは急いでそのドアの先へ向かう。しかし、サニーが引き留めようとする。

「おい待てよ! もしかしたら罠かも――」

「いえ、ニカロの言葉に嘘はなかったわ。後を追うわよ」

 人の心を「読める」というのは何とも便利だ。ウソ偽りまで暴ける。


 錆びついた鋼鉄の重いドアをギギギィ……と開けると、大きな黒い鉄の塊が数メートル先でその砲口をこちらに向けていた。


「消し飛べ」

 と、ドスの利いた声が聞こえたとき、その大砲から分厚いレーザーがドゥッと放たれた。

「――っ!」

「ハァ!?」

「ちょ、マジか!!」

「っ、避けろォ!」

 僕らは左右に分岐している廊下に二手に分かれて、間一髪、レーザーを避けることができた。


 レーザーの威力は凄まじく、さっきまでいたあの広い部屋は跡形もなくなっていた。風穴が開き、外の光が遠くに見える。天井や床が崩れ瓦礫と化し、完全に二手に分かれてしまう。二カロのいる廊下には瓦礫の山のせいで行けなかった。

 にしても、これは無茶苦茶だ。なんて奴だ。


「痛……っ、大丈夫か! みんな!」

 僕は全員の生存を確認する。向こう側にはレイン、サニー、クラウ、ポートさん、タキトスさん、ハリタロスさんがいる。大丈夫なのか、心配だ。

 レインが瓦礫越しで叫ぶ。

「ああ! 大丈夫だ! 俺らはこっちの道に行く! そっちは任せたぞ!」

 瓦礫を挟んでいるので鮮明には聞こえないが、反響して声が響いてくる。「頼んだ!」と返事した途端、走っていく音が聞こえた。


「じゃ、私たちも行きましょ」

 僕らはただ一つしかないその道の先へと進む。

 一寸先は闇。何が待ち受けているのか。

だんだん文章が手抜きになっているような気がしてならない。

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