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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第三章 一節 革命の灯が消える刻
35/99

6.奇襲に対する奇襲

バトルシーンメインです。多少のグロテスク表現が含まれていますので、注意してください。


     *


第三章一節の主な登場人物(本名は割愛)


ウォーク

サルト国王女サクラの専属召使。金髪が特徴のモヤシ系イケメン。元S級ハンターだったが、災龍の引き起こした天災に遭遇し、後遺症として戦うどころか、激しい運動すらままならない身体となった。王女サクラのことが好きだが、その想いは伝わっていない。


レイン

サルト国国軍兵。青髪が特徴の青年。大剣使いであり、歩兵としてはかなり優秀。考えることは苦手であり、情熱的。


サニー

サルト国国軍兵。オレンジ寄りの髪が特徴。活発的な好青年であり、少し剽軽な性格。よく空回りな発言をする上、お調子者だが、騎兵としては優秀。槍や弓、剣など、使いこなせる武器は多い。


クラウ

サルト国国軍兵。長めの黒髪が特徴の無口系男子。ボウガンや銃を使いこなす銃歩兵。一応弓もできる。感情の起伏もあまりなく、少し溜めてから話す癖がある。


アーカイド

龍材屋店長にしてS級ハンター。短い赤髪が特徴の青年卒業一歩前。剣術に関しては一流。浮浪児だった幼いウォークを育てた一人。情報屋のキケノとは犬猿の仲。


タキトス

龍材屋の一員にして準S級ハンター。肥満系マッチョであり、スキンヘッドが特徴のいかつい漢。双大剣や重火器の扱いに慣れている。とにかく声がデカい。「だははは」と笑えばまずこの人。


セト

龍材屋の一員だが、災龍の地雷に触れたことで天災に遭遇し、危篤状態に陥っている。現在病院にて療養中。未だ意識は戻っていない。


レウ

元龍材屋の一員。現在大工をやっている大人しそうな眼鏡系ノッポ青年にして気性が荒いギャップ系男子。ウォークの義兄。国内の『害悪の鎮圧』を条件に一般人として普通に暮らしている元殺人者にして人間兵器。素手で飛竜を討伐できる怪力や異常な回復力などを持つ。


キケノ

情報屋をやっている女性。アーカイドとは同年代であり、犬猿の仲。あらゆる文字や事象、法則、存在物の中身などを「読解」「解読」する能力を持つ超越者リミットブレイカーの一人。色々な意味でウォークが好き。


ハリタロス

龍材屋とは仲が良い独立経営ハンター。ランクはA級。タキトスと似たような姿と性格だが、髭面に筋肉質なところが特徴。怪力が自慢だが、レウは勿論、タキトスよりかは少しばかり劣るも、タフネスさはある。この人も声がデカい。「ガハハハ」と笑えばこの人。


ポート

元々ごく普通のガラス職人だったが、事故により補助機械を体内に導入され、機械人ハーフアンドロイドとなった青年。しかし諸事情により、先進国プラトネルの最新兵器も搭載している。温厚な性格。


ニカロ

「日を求めず火を欲する疾陰(ハル・ダ・ラミノーム)」、俗称「黒蟻」の首領。少しラフな黒服に黒髪が特徴の筋肉質な3,40代男性。かなりハンサムだが、非道であり、情緒不安定な一面もある。


 剣針山奥地、山岳内部『黒蟻』本拠地にて。

 薄暗い一室。電力の浪費を防ぐためなのだろう。壁や床は山岳の岩盤でできている。そこに電線が張り巡り、機材が並んでいる。


「計画は順調か?」

 そう訊いたのはこの組織の頭首、「二カロ・ショナー」だ。ひとりの黒いローブを着た男が報告をする。

「はっ、計画通り、部隊は国を囲み、ただいま中枢部と取引を行い始めたところです! 異常はありません」

「捕まえた王女はどうしている?」

「独房で監禁しています。身動きをとれない状態にしていますが、未だ眠ったままでして……」

「そうか、下がれ」

「はっ」


 一人の報告人は素早くこの場を去っていった。

 その後ろから誰もが聞けば不愉快な感情を想起させる、掠れつつも甲高い笑い声が聞こえてくる。闇の中から首領代理である側近の初老「ハーパス」が杖を床に当てながら出てくる。


「ひゃっひゃっひゃぁ~、あの小娘、こんな大変な時にまだ目を覚まさないのかいぃ~」

「少々、薬が強すぎたみたいだな。まぁいいさ、計画は順調だ。相手は手を出さないだろうと考えたいが、あの国の王はあるきっかけで精神が狂気に蝕まれている。大切な一人娘のためにどんな行動を起こすのか」

「興味が湧いてくるねぇ~」とますます顔を歪める。

「ま、そんなことはどうでもいい。問題は、ここに誰か潜入しているかどうかだ」


 すると、ハーパスはさらに甲高い笑い声を上げる。それにつられたのか、ニカロも大きく笑った。

「大丈夫だよぉ~ここはぁ~誰にも見つけられやしねぇしぃ~レーダー張ってるからぁ~侵入者は即見つかるよぉ~ひゃっひゃっひゃぁ~」

 笑い終えたニカロは、再び厳かな顔に戻る。


「しかしだ、あのレーダーの対象外はステルス機能の黒マントに認証カードを持つ者。万が一、それらを強奪されれば……」

「杞憂だよぉ~二カロさんよぉ~、部隊はみんなレーダー内でこの基地を守ってるからぁ~大丈夫だよぉ~」

「だといいがな。――っ!」


 突然、この建造物が崩れるのではないかといっても過言ではないほど、大きく揺れた。なにかの衝撃音が天上――地上から聞こえた。

 二カロは無線を使って本拠地内の部隊全員に指示を出す。

 が、無線から聞こえる音はザーッと聞こえる砂嵐の音のみ。繋がる気配はなかった。


「くそっ、先を越されたかっ」

 だがまだ想定内だ、と二カロは言い、すぐに指令室を出た。


     *


《ウォーク》

「……第一関門、無事突破」

 うす暗い洞窟の中、カンテラのみが光源となっていて周囲の様子がわからないも、僕はその場にいるみんなにそう言った。

「よし!」と全員が小さな声で言う。それでも小さく反響した。

「だけど、勝負はまだこれから。気を抜くなよ」


 僕らは今、地下道の敵の本拠地の裏口の小さな洞窟の中にいる。

ふたつの班に分かれ、装備しているレウとポートさん、キケノさんは剣針山にそびえ立つ敵の本拠地前にいる。いまさっき上で凄い衝撃音が聞こえたから、あっちも順調にいっているはずだ。


「よし! このままガンガン行くぜ!」

「先走って痛い目見るなよ、レイン」

「……」

 不安に思いながらも、僕は手に持つ武器を握り締める。


 キケノさんが持っていた情報召集の為の盗聴装置を、ポートさんの手により改造させ、レーダー装置を何かしらの方法でハッキングし、無線を全部遮断させる装置にした。これによって僕らの班は司令塔にバレずに潜入できている。あと、サルト国にいる部隊から本拠地の連絡も途絶えたので、相手は少しばかり混乱しているはずだ。余計な指令を出されずに済んでいるが、時間の問題だろう。これで動じる相手じゃないのは分かってる。


 レウとポートさんならではの強行突破によって、地上の頑強な入り口は大破したはず。すぐさま敵はあっちに加勢していき、ここが少し手薄になる。

 あの3人を心配する必要はないだろう。試作品型人間兵器に兵器搭載機械人間、そして、


「LBだったなんてな……」

 僕はそう呟いた。


『リミットブレイカー』、略称LBとは、人並み外れた能力を開花した人の総称を言う。また、それを超越人ともいう。

 能力は個人によって異なり、例としては嗅覚が人の1万倍以上だったり、電磁波が見えたり、数km先の音を聞き分けたり、戦車を粉砕する腕力を持ったり、問われたことをすべて解答できたりするといった能力である。すごいものとしては、瞬間移動、金属級硬化、人を操るといった例も存在する。実際にお目にかかりたいものだ。

 キケノさんはどんな能力を持っているのかというと、なんでも「読める」能力だった。つまり、多種多様の言語はもちろん、人が今思っていることや相手の行動、物の運動法則や軌道などといったものすべて「読める」。情報屋としてはかなりのチート能力だ。


 それはともかく、僕らは早く王女を救出しないと……。

 そう思い、僕ら7人は持っておいたハンターが使っている危険種生物用の高圧放電性火薬爆弾を敵陣に放り込む。

 黒マントたちは「何だ!?」と叫ぶ猶予もないまま、戦闘不能になっている隙に敵の本拠地に突入した。


     *


 本拠地、一階フロアにて。

 それは唐突に始まった。


 ――ズドドドドドドドドドドドドドドォン――!!!


 剣針山の岩壁を簡易的にコーティングした殺風景な灰色の廊下。壮絶ともいえる銃声があちこちで交差し、轟く。

 何十人もののガスマスクらしきものを被った黒マントたちが、禍々しくゴツい重火器を持ち、室内であるにも関わらず発砲を続けていた。目標は――3人。


「うぉあああああぁああああぁああっ!」」

「なんでこいつら! 死なねぇんだよぉっ!」

「とにかく撃て! 撃ち続けぼぐぅッ!」


 指示した一人の黒マントが金髪の眼鏡男に殴り飛ばされ、壁にぶち当たり、壁が崩れる。その壊れた壁の向こうには破裂したような赤い塊が飛散していた。

 ゾッとする黒マント軍に対し、金髪頭のレウは静かに且つ、怒りを露わにして話す。


「おいおい、何国も滅ぼした連中の実力はこんなものか?」

 それに答えたのは、見た目は完全に人間だが、中身の大半は機械と兵器でできている半身機械ハーフアンドロイドのポートだった。気まずそうにレウを呼びかける。


「えーと、僕が言うのも恐れ多いんですが、今普通に殴って人体バラバラにしましたよね。それに相手の武器も見てみれば、多分あれ中央大陸あたりで最近開発された携帯型の戦車砲ですよ。戦車壊す程の威力あるらしいんですけど、それ直撃してもものともしない人間なんてレウさんぐらいしかいませんよ」


 そのとき、ふたりの背後から付いてくるように走り寄ってきた黒髪の女性、キケノが真剣な表情で話しかける。


「ふたりとも喋ってる場合? 戦力少ないんだから無理な戦闘は避けてあそこの扉に――」

「んなこたぁどうでもいい。とにかく、全部全部――ぶっ潰せばいいんだろ?」


 地獄の底から聞こえるようなドスの利いた声で言う。黒マントたちはさらにゾッとする。一瞬だけ、武器を持つ手が力んでしまう。


 悉く黒マントたちは呆気なく殴り飛ばされ、蹴り飛ばされ、そのたび壁や天井、床に衝突、粉砕、破裂する。

 ドパァン、ドパァン、ドパァンと四方八方へ飛ばされ、血と内臓が桜吹雪のように舞い散った。

 レウは銃撃を喰らっても少しのけ反ったり、軽い打撲、擦り傷、軽い火傷をする程度だった。それも、数分もすれば治ってゆく。


「つーかよ、テメェこそただの人間じゃねぇだろ」

 ほぼ一方的な交戦が終わり、しん……とした環境の中、レウの軽い指摘にポートは軽く答える。


「ええ、まぁそうですが、半身機械でもレウさんとは違って耐久力がないんですよね。加速装置や耐性結界で何とか怪我せずに済んでいますが」

「その最新兵器つったか、まぁ随分と物騒なもんが造られたもんだな。人間どこまで落ちるんだがな」

「ちょっとあんたら! 暴れ過ぎだっての! ここまでやっちゃったら歩きづらいじゃない!」

 レウが鼻で皮肉を言っていたとき、後ろからスパァンと二人の頭をキケノは叩いた。彼女は「読める」能力で敵の銃弾の軌道を読み、もともと優れていた身体能力で全部避けていたようで、これといった傷はない。

 キケノはさらに注意し続ける。美しく整った顔は苛立ちで台無しになっていた。


「なにすんだ女」

「うっさい!」ともう一度手刀でレウを叩く。やけにいい音がした。

「大体、レウはもう少し手加減しろっての! 見てよこれ! 床に穴が開いてるわ血で濡れているわ瓦礫や死体やらで床が埋め尽くされているわで踏み場がないじゃない! ていうかグロい! 吐きそうぇっぷ……」

「うわわ大丈夫ですか!?」

「大丈夫じゃないけど心配されるのはウォーク君だけで十分――」

 壁の隅で盛大に嘔吐する。ポートはあたふたするばかりだった。それを一瞥したレウは舌打ちし、鬱陶しそうにする。


「ったく、うっせぇーなー、そんなことぐれぇで気にすんじゃねぇよ。潔癖症か?」

「そーゆー問題じゃないわよ! もう! あんな律儀なウォーク君のお兄さんだなんて到底思えないわ! それに、ポート君もいろいろやり過ぎ! なんなのアレ。手や腕や肩や背中からすごいの出てきてたけどなんなのホントに」

「えっとですね、背中のはただの高圧電流の放電を操作しただけですが、手から出たのは蛋白質を熱的分解させる粒子を含んだ波――」

「そーいうことは訊いていない! 手加減知らずか! 人間か!」


「す、すみません……気をつけます」

 反省し、ぺこぺこと謝る。

 キケノは散々怒鳴り散らしてすっきりしたのか、落ち着きを取り戻した。

「さてと、ここから王女のいるところへ行くには……下に降りなきゃね。レウ、お願い」

「ったく、さっきまではやりすぎだとか言ってたくせによぉ」

「いいから!」

 舌打ちしたレウは「わかったよ」と言い、地団駄する形で地面に向かって蹴る。ガラスが割れるかのように、床が崩れ落ちる。

 3人とも、穴の開いた床下の地下へと降り、スタン、と着地する。


「あの、なんていうか、おとり役がこんなにやりすぎちゃっていいんですかね……」

 辺りを警戒しながら、ポートは二人に訊く。

「別にいいだろ、ウォークも別にいいって言ってたしよ。それにやりすぎるのが丁度いいって言うしな」

「いわねぇよ!」

 キケノがツッコむ。誰もいないフロアにその声が木霊となって反響する。

 作戦は失敗といいたくなるほど順調に進み過ぎていた。

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