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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第三章 一節 革命の灯が消える刻
34/99

5.僕らの戦い

《ウォーク》

 僕はレイン、サニー、クラウの親しい国軍兵3人で王女室にある抜け道を使って王宮の外へ出た。彼らは若くして少佐級の実力者だ。問題児故に雑兵扱いだが、ただの一般衛兵ではないことは将軍からもよく聞いている。

 あらかじめ同僚のアンヌに捜索のための外出と言ってきたので、直に侍女長に伝わるだろう。

 そして、僕らは光都にある「龍材屋」へと向かう。



「……協力?」

 そう聞いたのはこの店の店長を務める同胞のアーカイドだった。そのそばには体つきのいい40代のマッチョなおっさんのタキトスもいた。


「そう、王女を見つける。いや、助けるために今すぐ協力してほしい」

「ウォーク、王女を救うってどういうことだ?」

 そう聞いたのはレインだ。サニーもクラウも未だに状況がよくわかっていない。無理に連れてきたのだから仕方ない。


「王女はいなくなったんじゃない、連れていかれたんだ。それが何かはまだ確信が持てないけど、予想としてそれ以外考えられない」

「お前のその発想力は相変わらずすごいよ。そして当たるという……」

 アーカイドが少し考え込む。そして、口を開いた。


「まぁ、状況は解った。協力する。タキトス、いいだろ?」

「あったりまえだ!! 黒龍戦前のウォーミングアップに丁度いい!!」


 あいかわらず声がでかいもんだ。レインたち3人とも耳を塞ぎたい表情をしていた。やはり鼓膜どころか頭に響くのだろう。


「別に戦いがあるかは本当のところわからないけど……あと、アーカイドにもう一つ頼みがあるんだけど」

「なんだ?」

 僕がその内容を耳打ちで告げたとき、アーカイドは一気に嫌そうな顔をした。


「はぁ!? マジで言ってんのかテメェ! 俺はいやだぞ!」

 怒涛に近い大声を出す。苦虫を噛み潰したどころじゃない顔だ。


「でもそうしないと王女は見つからない!」

 しかし、彼は王族を尊敬している。一度目の前で話を交えた王女のことを考えれば、背に腹は代えられないだろう。

「くっ…………あーちくしょう! もう、わかったよ! いいぜ、今すぐ連絡する」




 数十分後、この龍材屋に情報屋が来た。

「やっほー☆ ウォーク君久しぶりっ! 会いたかったよ~☆」

 まともに顔を見る前にがばりと抱擁する女性。柔らかい身体と大きめの胸が触れるのを少し意識してしまったが、もしかしたら女性に抱きしめられたのは数年前のイルアのとき以来かもしれない。イルアもイルアで凄まじかったなと思い返す。

 それにしても、このテンション高すぎる生物をどうにかしてほしいと心から願うが、情報面において、これ以上の頼もしい人はいないだろう。知り合っておいてよかった。


「キケノさん、ありがとうございます。わざわざこちらにいらしてくれるとは……あの、そろそろ離れて――」

「いいのいいの~、ウォーク君の為なら地獄の果てまでイっちゃうよ☆」

「や、そこまではいいです……」

 苦しくなるほど抱きしめられる。これでは愛情表現ではなくただの締め技だ。骨折だけは勘弁願いたい。


「おまえ、あいかわらず気色悪ぃな」とアーカイドは呆れた声で吐き捨てる。

「黙れ下衆野郎」

「あぁ? そっちが黙ればいいことだろ!」

 やっぱり喧嘩になる。なんとかならないのか。

「あの、ケンカはそこまでにしておきまして、キケノさん、僕からのお願いなのですが……」

「あ、もう調べといたよーってかもう心当たりついてるし」

 やっと離れてくれた。少し咳き込み、キケノさんを改めて見る。

 それにしても、頼んでもないのに相手の頼みを先読みしてもう検索済みとは、なんと立派な! やはりこの情報屋は格どころか次元が違う。


「わ、わかったのですか?!」

「うん、こいつらが確信犯☆」


 キケノさんが一枚のレポートみたいに書かれた紙を取り出し、受け付けカウンターの上にバン! と置く。

 最初に反応したのはサニーだった。クラウも「……あ」と心当たりがあるような反応を示した。


「あ! 俺こいつら知ってる! 『黒蟻』だろ、ほらここに書いてある!」

「『黒蟻』?」

「うわ、微妙な名前……」

「名前からして弱そうだな!! だははは!!」

「……一応、蟻は動物界の中では強い方……」

 僕らが首をかしげてそう聞いたとき、サニーの代わりにキケノさんが説明する。


「『日を求めず火を欲する疾陰(ハル・ダ・ラミノーム)』。俗称『黒蟻くろあり』っていう組織はね、言ってしまえばただの武装集団。『国盗り』という名前でも通っているわ」

「国盗り? 国を盗むのか?」

 アーカイドの疑問に応えることなく、キケノさんは構わず続けた。

「でもターゲットは国の財産、武器といった価値のあるもの。それを奪った後はその国を壊し、廃墟にする。特徴は全員黒いローブを着ていること。まぁ黒マントって呼んでいるとこもあるけど。それが大勢いることから『黒蟻』と世間から呼ばれているわ。

 テロリストに似たような動きもするけど、忽然と襲って忽然と消えるプロの盗賊団。その実力も生半可じゃないわ。例えるなら、トランプの革命みたいな強さね」

「トランプに例える必要あったか?」とアーカイド。ちょいちょい突っかかるのは何とかならんのか。

「そう言う意味でも、革命軍と呼ぶ地方もあるのよ? 意味合いは違うけどね。で、その戦力はある小国の国兵全軍立ち向かっても歯が立たない程。だけど、本拠地やメンバーといった有力な情報はあまりなくて、はっきりしているとしても精々首領の名前が密かに知れているだけ。とにかく、知力も武力もかなり優れている、世界的に危険な組織よ」


 数年前だったか、遙か東の国で皇女が攫われ、人質として国の財産すべてを要求したという。その要求を叶えたにもかかわらず、その国の首都と軍事基地等の中枢機能を襲撃し、自然的に国を滅ぼしたという。


「もしかして、こいつらが王女を攫ったというのか? 何のために?」

 レインは「?」を浮かべ、首を傾げるばかり。体捻っても何も出てこないぞ。

 そんな理解力の高くないレインに、サニーは教える。

「少しは考えろよレイン。王女を人質にして武力をなるべく行使せずに奪えるだけ奪っていくんだろ」

「……そして、国を破壊する」とクラウは静かに言う。


「何とも質の悪い連中だ!!」

 タキトスが腕を組んでふんすと鼻息を荒げる。とりあえず、あなたは黙っていてください。その声だけで店の老朽化が進んでしまいます。


「ウォーク、こんな奴らと俺らだけで戦うのか? 無謀すぎるだろ」

「レイン、心配ないって。ちゃんと策はあるし、メンバーはこれだけじゃない。他にも来るよ。な、アーカイド」

「まぁな。もう少しで来るはずなんだけどな……」


 そのとき、タイミングよく店の入り口のドアが開き、3人の人影が映る。チリンチリン、とドアについたベルが鳴り、全員がそちらへと向く。


「よぉウォーク! お次はどんな遊びをやんちゃなお姫様にやらされてんだ?」

 相変わらず洒落た大工作業着姿に銀縁眼鏡をかけた長身の金髪男のレウとアーカイドの知り合いであるふたりの男性。顔見て思い出せないあたり、アーカイドの古い友達だろうか。

 何より、レウの知名度が高い以上、真っ先に全員の視線がレウの方へと向いた。


「あ、あいつって……」

「「「レウ!?」」」

 レウの名前に実力派国軍好青年3人組が同時に驚く。情報屋のキケノさんも「嘘でしょ」と半ば驚き、半ば苦笑していた。まぁ、無理もないだろう。サルト国では有名にして要警戒人物なのだから。


「レウってあのレウ・ノバルトか!?」

 レインがおろおろしながら聞く。彼が人体実験により開発された試作型人造人間H・Aだと知るのはこの場では僕とレインのみなので、レインだけレウに対する目が違った。

「ああ、そうだよ」


「お、テメェらウォークのダチか? すまんな、弟のウォークがいつも世話になってる」

 目の高さを合わせるよう、腰を屈したレウは彼らに挨拶をする。

「あ、いえこちらこそ――ん? 弟?」と珍しくクラウが動揺の目をみせた。この目を見るのは何カ月ぶりだろうか。

「え? え? 『弟』? ってことは……」

「「「兄弟!?」」」


 なんて面白いリアクションをするんだ、この3人は。

「まぁ実際兄弟とはいえないけど、兄弟ってことにしてくれ」

「あ、ああ……」とサニーは顔を引きつらせる。クラウは黙ったままだったが、ぽかんとしているようにも見えた。

「ところでさ、この人たちは?」


 僕はレウと共に来た二人の人物が誰なのかをアーカイドに訊く。

「ああ、こいつはタキトスのダチのハリタロス。ギルドの連盟には加入しているけど、基本独立ハンターを経営している」

「ガハハハハ!! こいつがあの英雄級ハンターだった鬼才か!! 初めてみるが、もやしみてぇな体してやがる!! 最早牙の折れた虎、いや、猫と言ったところか!! ガハハハハ!!」

 いきなり大音声でコンプレックス言われた。というか体つきといい、声のデカさといい、タキトスに似ている。笑い方も微妙に似ている。ただ、髭の形と色が異なる。またスキンヘッドのタキトスとは違い、坊主頭だ。頭の形が似ていることに変わりはないが。

 

「そして、こいつがセトのダチのポート。H・Aだ」

「よろしく」

「あ、どうも」

 爽やかな対応で手を差し伸べてくる。服装も顔も普遍的な成人男性だ。若々しいが、大人びていて、落ち着きがある。思ったよりも年は上なのかもしれない。


「……ん?」

 ちょっとまてよ、H・Aって言ったか今。

「え、今、H・Aって……」

「ん? 『ハーフアンドロイド』のことだぞ。プラトネルの方では結構有名な技術なんだけどな」

「あ、あぁ、『機械人』ね」

 紛らわしいだろ。ヒューマンアームとハーフアンドロイドの略称。


「セトやアーカイドさんからウォーク君のことはよく聞いているよ。最年少でプロのハンターになったんだってね。王宮の王族直属の召使をしているというのもすごい話だ」

「ああ、いえ、そんなことは……」

 20代後半ともいえるポートというアーカイドと同じくらいの体型をした男性は爽やかにそう言う。あまり過去のことは言われたくないんだけども。


「ポートは過去に事故って体を大半失ってな、プラトネル国でハーフアンドロイドにしてもらったんだ」

「おかげで前よりも体つきが大きくなったんだよ」

「……え、と」


 体つきがいいと言われれば良い方だが、国軍の兵士を見てきているだろうか、言うほどがたいがいいとは言い難い。普遍的だ。

「ああ、こいつもともとガリガリの不健康野郎だったからな、機械投入されて平均的な人間体型になったんだよ」

 そうアーカイドは大きく笑った。竜の素材で作られた商品を一通り見ているキケノさんの姿が眼に入る。


「少しはがたいのいい方だと思っているんだけどな~」とポートはたははと笑う。

「俺からしたらまだまだだぞ!! だはははは!!」

「タキトスは異常だろ、その筋肉の盛り様は」

「これが異常だってんならお前らの筋肉の少なさも異常だけどな!! だははは!!」

 自慢げに筋肉を盛り上げるタキトス。ハリタロスも同じような肉の付き方をしているので見比べる程兄弟かと思ってしまうほどだ。しかし瞳の色が違った。


「はぁ、まったく……。ああ、一応言っとくが、ポートに内蔵されている機械は人間としての生活機能を補うもののほかに、ある程度の重火器も内蔵されているから」

「へ、兵器が入ってるってこと?」

「うん、そう」

 そうあっさり爽やかに答えるなよ、ポートさん。はっきり言って犯罪ですよ、それ。


「……俺も機械内臓とかされたいな」

 ぼそりと呟いたクラウ。サニーにも聞こえたのか、ゾッとした顔をしては「やめておけ。地獄を見るぞ」と釘を刺した。


「にしても、変な面子が出揃ったわね。ギルド直属の英雄級ハンターやってる商人に国軍兵、王国の歩く人型兵器に本物の半人半機械兵器、そして王女直属の召使に情報屋……これで呪術使いにして天文物理学者のリンガル博士がいれば、それこそトンデモ曲芸者の集いよ」

 キケノさんは呆れた様子で失笑する。

「リンガル博士は面倒事には関わろうとはしませんし、王族のこともあまり快く思っていないですし、やめておきました」

「さっすがウォーク君! リンガル博士のことまでよく知っているのね♪」


 そう言ってはまたギュッと抱きしめてくる。彼女のやわらかい部分が顔に押し付けられ、息がしづらいが、それよりレインやサニーの嫉妬ゆえの殺気ある視線が痛い。あの、僕にはサクラ王女という人がいましてね……。

「いや、あの、情報屋のあなたに言われましても……」


「んで! 他にもだれか来るのか?」

 わざと咳込みながらレインは訊いた。僕はキケノさんから離れ、振り返る。

「いや、これで全員だ」

 レインの驚愕の声が響く。もちろん、他の誰もが驚いていた。

「はぁ!? たった10人であのプロフェッショナル軍団に立ち向かうのかよ!」

「逆に国軍のように大勢で武力行使したら相手の思うつぼだ。それに気づかれた瞬間、国が滅ぶ。あいつらはあらかじめそのようなことを想定した上でこの計画を実行している。もうすでに、何かを国に仕掛けていてもおかしくない」

「そうかもしんねぇけど……!」

「そこで、今結成したこの少人数で奇襲を仕掛けることであいての戦略を乱す。相手はこのことをまだ知らない。やり方次第で効果は絶大。ですよね、キケノさん」

「ま、まあそうなんじゃない?」

 流石のキケノさんもいまいち肯定はしてくれなかった様子。あれ、この考え方間違っているのかな。「本当にそうなのか……?」という声もどこからか聞こえてきて、不安になってしまう。


「まぁ僕の知ってる中で民間人で戦力となる人を集めただけだけどね」

「で、でもよ、レウさんとかそこのハンターさんたちはともかく、何で俺らも……?」

「何言ってんだ、お前らあの国軍だろ? しかもその中でも位も実力も高い方だし、優秀で勇敢で屈強なエリート最強三人組だってコーダ軍帥から聞いているけど」

 言い過ぎたな。でも上司から優秀な兵だということを聞いたのは事実だが。


「よっしゃあっ! サニー! クラウ! 俺らでやってやろうじゃねぇか!」

「「「うおおおおお!!!」」」

 どんだけ単純なんだこいつら。


「ということで、この店にある武器を装備して相手の本拠地へい――」

「ちょっと待て、そいつらのアジトなんか分かるのかよ」

 冷静にアーカイドは訊く。カウンターに肘をつく。


「そのためのキケノさんだよ。キケノさん、お願いします」

「オッケー☆ 場所はねー…………何処だと思う?」

「いいから早く言え」

「うっさいわね、アンタに聞いてないわよ」

 相変わらずアーカイドとキケノさんは突っかかる。犬猿の仲も大概にしてほしい。


「サルト国から比較的近辺に拠点を取るとすれば……あまり人が寄りつけない、ええと、近づけられない剣針山とか、ですか?」

「そのとおり! さっすがウォーク君ね! ますます好きになっちゃ――」

「その山のどのあたりにありますか?」

 彼女の台詞を割くように、僕は問いかける。それに素直に答えてくれたキケノさんは荷物から大きな地図を出した。


「剣針山第E-36ブロック。結構奥地ね」

「あの剣針山か。まぁあそこなら誰も行きそうにないよな」とレイン。

「……というよりも、入りたくないだろ、あんなとこ」とクラウ。

「でもあの山危険地帯だぜ? 話じゃ一番入域困難な場所だ。どうやって入るんだ? しかも入ったとしてもすぐばれるだろうし」とサニー。

「あの道を使えば大丈夫だろ」

 さっきまで店の商品を見ていたレウが急に僕らの話に参加し、提案する。


「あの道?」

 ポートやレインらが声を揃えて首を傾げる。そこでアーカイドが指を鳴らし、思い出したような声を出す。

「ああ、あそこか。ハンターならぜひ知っとくべき道だけども、知ってるやつかなり少ないんだよな。な、タキトス」

「そうだな!! だが、あの道を俺らが知っているのも、ウォークが教えてくれたおかげだった!! そうでなかったら、今でも俺らは知らないままだったぜ!!」

「道ってなんだ?」とレインは僕の肩を叩く。が、それに答えたのはキケノさんだった。木のテーブルに広げられたアミューダ地方の地図に手を置きながら説明した。


「剣針山には根を張るように地下道が張り巡らされていて、その地下通路からいろんな所へと繋がっているのよ。サルタリス山脈もそのルート先のひとつ。この複雑な地下通路をアミューダアンダーネットワークと言っている人もいるわ」

「お前ぐらいだろ、そんな呼び方するの」

「うっさい、口出しすんじゃないわよ」


「へぇ~そんなものが……あ、でもさ、そんな便利な道、あいつらならもうとっくに知ってるんじゃね?」

 サニーがごもっともな質問を出す。それを予測していたかのように、キケノさんは話し続けた。


「そう、あの組織はその道を使ってこの国に来ている。はっきり言って地上より地下道の方が警備は固い」

「じゃあレウの提案はボツだな!! ガハハハハ!!」

 早くも慣れ親しんだハリタロスはレウの背中をバシンバシン叩いた。結構響いたのか、レウは小さく舌打ちする。


「うるせぇな、わざわざ言うことじゃねぇだろ」

「逆に言えば、環境の厳しい地上の方が手薄ってわけ。危険生物も多いしね」

「ってことは、俺たちみんなで正面衝突の真っ向勝負をするのか?」

「……レイン、お前の考え方はある意味尊敬するよ。そんなことをしたらすぐ見つかるし戦力的に不利だし、デメリットだらけだぞ」

「じゃあどうすんだよ、頭の良いウォークさんよぉ」

 レインに嫌味を言われたが、特にムッとすることはなかった。レインはやられたらやりかえす主義だから、こうでもしないと気がすまないだろうけれども。


「レーダーがある為潜入不可能、認証カードも全員が所持の為半端な偽装も不可能、これはちょっと手こずるわね」

「よく知ってんなそんなこと。どうやって入手してんだよその情報」

「企業秘密。そもそもアンタに教える筋合いはないわよ」

「……そうかよ」

「あ、敵からその認証カード奪えばよくね?」

 思いついたようにサニーは提案する。

「っていうことを俺はいいたかったん――」

「ウソつけ」

 レインの言葉にクラウがぼそりとツッコむ。しかし、そんなアイデア程度では簡単に突破できないだろう。それに、これだけの実力者がいるんだ。こちらの戦略の為の考える時間や準備ができなくても、相手の戦略を突破できるだけの力はある。それをふんだんに活用しなければ。


「まぁまぁまぁ、僕からひとつ作戦があるんですよ」

「なんだよウォーク、作戦って」

「まぁこれはみんなの能力をフルに活用した考えだけどね……」


     *


「――で、どうですか?」

 説明し終える。僕としては完璧とまではいかないものの、咄嗟に考えたものにしては結構いい作戦だと思う。

 しかし、


「……まぁ、それならなんか行ける気がするが、この作戦ちょっと無理矢理すぎねぇか?」

「え? そうか? まぁ頭が筋肉のアーカイドならわからなくても仕方が――」


「……ウォークのエリートさの片鱗も感じない」

「なんだよクラウまで!」


「ってかみんなの能力フルに使ってないじゃん、偏ってるじゃん、馬鹿じゃん」

「ううう、レインまで言うのか……ていうかおまえに言われたくない!」


「本当に一時期軍師の補佐係やってたのかよ。噂程度の話だけど」

「いや、あの、サニー、あれは補佐っていうほどの大役じゃなくて、助言程度の――」


「……」

「おい、そんな目で僕を見るな。おい、レウ聞いてる?」


「まぁ……あはは、こりゃあ大変だな」

「ポートさん、目が笑ってないですよ」


「はっきり言おう!! 駄目だこりゃ!!」

「ストレートすぎて清々しいですハリタロスさん! でもツラい!」


「作戦にしては随分と粗末な戦略だと思うぞ、ウォーク」

「タキトス……せめてお前はフォローしてくれると信じていたけど……うぅ」


「まぁまぁ、ウォーク君の提案なんだから、上手くいくよ! ね、ウォーク君」

「キケノさん……あなたって人はなんて……」


 ほぼ全員、反対とでも言わんばかりの反応だった。しっくりこなかったのだろうが、納得してくれなければ作戦は上手くできない。嗚呼、僕って戦略立てるのヘタクソだったのか。助言程度が得意なだけで。なんだか落ち込む。


 そんな僕の表情を見て察してもらえたのだろう、アーカイドは同情とでも言わんばかりの溜息をつき、

「とりあえず、他の案も浮かびそうにねぇから、それでいいだろ。さっさといかねぇと、手遅れになるぞ」

「あ、ああそうだね」

「もうなんでもいいだろ!! こっちにはレウとポートがいるからな!! だははは!!」

「人にすがんなよ巨漢禿。俺がいない間に腕落ちたのか?」

「まぁ、やってみなきゃわからないしね。頑張るよ」とポートは微笑む。


 アーカイドが立ち上がる。僕の前に来ては、真面目な顔で口を開いた。

「まぁわかっているとは思うが、このチームを率いるリーダーはウォーク、おまえだ」

「っ!」

「おまえが行動しなければ、こいつらはここに集まらなかった。おまえの熱意があったから、断ることなく、協力しようとしている。その責任と自覚を持て。その代り、俺たちは全力で支える」

「そうね、今回ばかりはアーカイドの言う通りだわ。作戦も考えているし、みんなのことを引っ張っていけるのはウォーク君だけよ。でも、私らも任せっきりにはしない。ちゃんとウォーク君を引っ張っていけるように尽力するわ。少なくとも私はね」

 そう言っては目くばせするキケノさん。その言葉でなんだか救われた気がした。


「目的は侵入者の襲撃の阻止と、王女様救出。利害関係はともかく、この国が占拠されたら、全員困るし、王女様アイツがいなくなるなんてもっての外。将来の国政にも関わるし、なにより、俺のダチだからな」

 レインは意気込んてそう言った。パン、と拳と手のひらを合わせる。


「ウォーク! そうと決まればさっさと決行だ。リーダーだろ? 一声かけろよ」

「ああ、そうだな」

 僕は親友の声に応え、全員の前に立つ。


 僕らは無謀な戦いに出陣する。大切な人を救うために、守り貫くために。

 たとえ勝ち目がないと言われる戦いだろうと、決して諦めない。

 そう、やってみなければわからないのだから。

 可能性は自分で決める。そうだろう?


「じゃ、みんな! 国の為に覚悟はできているか」

「当たり前だろ」

「一発で終わらせてやるぜ!! だはははは!!」

「『俺たちがいれば最強!』 だろ?」

「覚悟位、いつでもできているさ」

「……右に同じく」

「こんなの余裕でいかないと、ね☆」

「ハエ一匹残らず叩き潰してやる」

「何百人相手だろうとかまわねぇぜ!! ガハハハハ!!」

「僕で良ければいくらでも協力するよ」


 僕が声をかけ、みんなが僕の目に集中する。そして、僕は今までの中で一番大きく、強く声を張って告げる。

 決心を誓う声。そして、宣戦布告として。


「――行こう!」


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