第1話
この島の8月の海はいつもキラキラしていて眩しい。
毎年のことではあるが、退屈はしない。
この島で育った桜沢 礼は今年で18歳になる。
海の水面をぼんやりと眺めながら
今年高校3年になる礼は迷っていた。
この島を離れて、就職すべきかそれとも、
父親の影響で始めたモトクロスの選手になるかだった。
「はあ、、どうしたらいいんだろオレ」独り言を呟く礼の後ろで声がした。
「おーい、レーイ、何やってんのー」
声の主は、幼馴染のゆうだった。
「ははーん、また海に向かって良からぬ想像してたでしょー」
「バカっ、そんなんじゃないよ」と慌てて言い返す礼。
「だったら何考えてたか、言ってみなさいよー」
「お前にそんなこと関係ねぇだろが」
と礼が言い捨てて、立ち去ろうとすると
「ねぇ、知ってる?」 尋ねる、ゆう。
「はん、何がだよ」
「ほら、岬の灯台さあ、今度取り壊しになるんだって」
「それがどうしたんだよ。関係ないっつうの」とやや切れ気味に礼。
「あんなボロ灯台早くなくなれっつうの」さらに畳み掛ける。
「あそこでさあ、よく遊んだじゃない。かくれんぼしたりさ、おにごっこしたりさあ」
「何か、寂しくない?」首をすこし傾げてゆう。
「あのさ、そんなこと言いにわざわざ来たの?お前、よっぽど暇だねぇ」
腕組みしながら半ば礼は呆れている。
「おまえには、悩みというモンがないのか。苦悩というモンが」
「あるわよっ。もうちょっと、やせないかなとか、もうちょっと胸が大きくなんないかなとかいろいろあるわよっ」ムキになってゆうが言い返す。
「フーッ」無言で鼻から大きなため息をつくと、礼はスタスタ歩き出した。
「ちょっと待ちなさいよー」後を追いかけるゆう。