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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
第二章 ~崩れ~
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第34話 謝りたかった



この数千年の中で一番辛い想いをしたのは誰だろうか?





私(我)(僕)? いや、 彼(彼女)だ




苦しめてしまったのは、自分だ



謝りたい、謝りたい


ごめんなさい、ごめんなさい


もしかしたら許してくれないかもしれない

いや、許さないだろう


恨んでいるだろう



憎くて憎くて堪らないだろう



そして自分を、この首を剣で切り落とすだろう


それでも自分は償おう。魂となって永遠に彷徨いながら償おう それだけ貴方は辛い想いをしたのだ












ごめんなさい───








* * * * *







「ほら、ノワール。ご飯だよ」


僕の目の前で餌を食べる子猫、名前は黒いからノワール。


「美味しい?」


くいっと顔を上げてフツーと言いたげな顔をしてナーと答えるノワール


「普通かぁ・・」

少しお高い猫缶のロゴを見る


「お前はどんな食べ物が好きなんだい? どんな遊びが好きなんだい? もっと知りたいな」


ふふっ、と笑って僕は走りまわるノワールを見守る




「ニ"ャッ!!」

「ブフッ」

〈マスター、今のをノワールファイル1に保存しておきました。 ・・・私の独断で〉


走ってるうちに自分の足に躓いて転がるノワールについ笑ってしまった。

レヴィンが今のを保存してくれたようだ ・・最後にボソッと聞こえた一言は聞かなかったことにするよ




「あれ、ノワールは?」

〈自分の寝床に戻って寝ていますよ〉

レヴィンの言ったとおりノワールは自分の寝床に入って寝ていた




「ん・・・?誰か来るね」

そんな時、僕は一人の大きな気配を感じた


〈上空、東の方向から此方に向かってきてますね。 もうすぐ・・って見えますね〉

レヴィンが言い切る前にはもうはっきり見えるくらいにはなっていた




十二単という昔の身分の高い女性が着る物を着た、長い髪の女性

鋭い瞳が此方を見ているのが見て取れる



「・・・誰だ?」



長い髪の女性は今も此方に向かって来ていて、もう目の前という程にまで来ていた

その顔を近くで見ると、その女性の正体を思い出す




「・・リンラ=ツヴァイラ?」



ノワールが動揺した僕の声に反応して寝床から飛び起き、僕の側へと寄ってくる


その女性──リンラは鋭い目をノワールへと向ける。 その顔が一瞬だが動揺に染まったのは僕は見た



「お前が、望月雪矢か?」

「・・そうです、けど」


知らない人の名前を覚えている。そして何かモヤモヤが渦巻いているのを感じる

その恐怖と動揺がまだ抑えられておらず、少し震えた声で僕は答えた。



「・・すまなかった!!」

「・・・えっ?」


リンラが急に頭を深く下げ、謝った

謝られるような事は別にしていないし、僕は会ったことが無い




「何度謝っても、許してくれぬのは承知だ。 しかし、謝りたかった ずっと、ずっと! 

・・すまぬ、すまぬ・・・すまぬ!!」


「一体何の事を・・」


しかし彼女は僕の声は聞こえていないようだ


「この首を切り落としても構わぬ。 我はその位そなたに苦しい思いをさせてしまったのだ。

魂となって永遠に彷徨い続けながら、永遠とこの罪を償おう!」


「・・・リンラ=ツヴァイラ!!」

「ッッ!!」


大声を出すと彼女はビクリと身体を震わせる


「確かに、僕は苦しかったし辛かったし悲しかった、君を憎んだ事もあった。 でももう憎んでいない。だから顔を上げて」


そしてリンラは恐る恐る顔を上げる

その顔には涙が滲み、零れ落ちていた


「だけど、何を謝っているのか。僕は分からない 説明してくれる?」


彼女は頷いて、口を開いた


「お主が最初に全身の痛みを感じ、動かなくなり、転生した後、我は友人のプレオと会話していたのだ。

そしてあの時、我が言った『破壊神』これはお主だと思っていたのだ。神々暮らす国や神々が支配する世界を破壊し尽くす

最強にして、最悪の神 しかし、本当の破壊神はまだ眠っておってな、我とプレオの勘違いでお主はあの時、死から目覚めさせ、

こんな運命へと導いてしまったのだ ・・だから、すまない・・・・」


さっきまでの鋭い目から放たれていたプレッシャーが無くなり、その目からは涙が溢れていた


「そう・・・。ずっと嫌で嫌で、死んでしまいたいと思っていたけれど。この今の人生は好きだ 

・・だから、この運命になっていなければ、ユズキやマーレ、アールやソーミィ、星武達になんて会えなかった」


僕は一旦そこで言葉を区切る



「僕の方こそ、ごめん、そしてありがとう ・・手間かけたでしょ? ここ、見つかりにくいらしいから」


僕の言葉がよっぽど意外だったのか、目を見開いて驚いている

リンラでもあんな顔するんだなぁ



「ナァー」

「あっ、ノワール。無視しちゃっててごめんね」

足元に頭をコツンとぶつけてくるノワール

大人しくしててくれたノワールに感謝しないとね


「お主は・・誰なのだ?」

「ん? 僕は僕だよ? 望月雪矢さ」


「・・そうか。 そうだ、その猫、ノワールか? 本当の姿を隠している。強大な力を」

「・・・えっ?」

抱いていたノワールに視線を向ける


「記憶を失っていて、元の姿の戻り方も忘れてしまったようだ。

それに魔法で戻そうにも強固な術が掛かっている故、記憶そのものを取り戻さないと・・駄目だろう」

「そうなんだ・・・。」

「その力は大分昔に我らから離れ、異世界を旅すると聞いたが、まさかここで出会えるとは・・・」


破壊神並、それ以上の力を持つお主との縁だろうな、と言った


僕ってそんなに力あるの? リンラって神様だったよね。


「あぁ、そう言えば、前ある世界で何かの力で破壊されていた家があった。不思議な力が家に染み付いているからすぐ分かるだろう。

・・その力の一部・・いや、もっと僅か、ノワールに似たモノを感じた」


「我が言えるのはここまでだ。 ・・本当にすまない事をしたな、望月雪矢 いいや───スリーデニィ=タンティースよ」


後ろを振り向き、中に浮かび上がっていくリンラ。

リンラが最後に振り返った時、目に映ったのは、黒い翼を二枚、背に付けていた雪矢だった





「あぁ、行っちゃったな。 決着、つけようかと思ってたのに!前はいいところで終わっちゃったからね。」

〈リーディ、追わないのですか? まだ反応は残っているはずですよ〉


レヴィンの言うとおり、リーディなら余裕で追いつけるはずなのだ、なのに彼はリンラを追わなかった



「・・うん。 リンラとだけは正々堂々決着を付ける、この僕の力でね、ふふっ」


〈そうですか〉


「でもそれも叶いそうにないかな」


リーディは一旦言葉を区切る。


「───なんせもう僕は、長くないんだから」

いつもの彼らしくない、悲しげな顔でそう呟いたと同時に、背の翼は、消えた









ふらっと一瞬よろけてしまう。入れ替わりに出来る差だろうか





「・・・っと。 あれ?あまり変わってない? レヴィン、どういう事?」

<えぇ、彼は彼女とは正々堂々決着を付けるそうです。そして最後に『もう長くない』と言い残し、すぐに入れ替わりました>




「長くない・・? 消えるってこと?」

〈そこまでは〉


「ともかく今はノワールの事だ ・・せっかくの旅だ、アンサも連れて行かないとね」

〈約束してしまいましたしね、きっと待っていますよ?〉

「それは大変だ。 ・・おいでノワール、お出かけするよ」


「ニャー」


足元のノワールを抱き上げて、アンサの下へ向かう


今までは襲撃事件でうやむやになっていたからね。 兄と旅に出るんだから、いいでしょ?


「さ、着いた・・ あれ?」


いつもより声が低いのと、背が高くなっているに気付く


「レヴィン?」

〈変装魔法かけておきましたよ。 マスターが言うと思いまして〉


そうだ、これはアンサの兄としての姿だ

やはりレヴィンは優秀だ ・・まるで人みたい








「師・・兄様!」

アンサはビルの入り口で待っていた。他の人達もいた為、兄として呼んでいた




あのゼリスク襲撃事件からは、復旧作業が完了するまで本部を脇の地上ビルへと移す事にしたらしい



「辞職届けはもうユズキ教官に出してありますし、話も言ってあります。荷物も最低限の物は持っています。今すぐにでも行けますよ」


ひぇーっ、さすがだなぁ


「・・その子は、あの時の?」

「そう、名前はノワール」

アンサは目線を胸元のノワールに移す


「黒・・ですか。 ノワール。 ・・不思議です、何となくですがこの子からはとてつもなく強い力を感じます。」

「分かる?」


「いえ、何となく」

勘が鋭いんだね。羨ましいよ



「それじゃあランダムで別な世界へ行こう。 地球の旅じゃなくて、別な世界への旅の始まりだよ」

「はい!」

「ニャー」


〈転送開始 転送場所:ランダム〉




僕達をすっぽり囲んだ魔法陣は、一瞬だけ光り輝いて、消えてしまった



僕達は旅に出た


この旅はいつまでかかるか分からない






でも、この旅は必ず終わる


それだけは、分かるんだ。





弟子一人、機械(あいぼう)一つ、猫一匹、化け物一人。




不思議なパーティメンバーの旅が今ここに




〈転送完了 転送場所:蒼の森〉

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