第30話 サプライズ計画 後編
~ユズキSide~
ここはゼリスク地上ビルの、パーティホール
「・・それじゃあ、みんなの成長を祝って、乾杯!」
『わぁぁぁぁ!!』
今日はみんなが別の部署へ異動する、お祝いみたいなもの
だから今日はここを貸しきって、ってこと
そして・・私たちとの、お別れでもある
さらに、星武君が、部隊をつくることにしたの
で、私と、アールちゃん、ソーミィちゃん、マーレちゃんが入る事になってるの
みんなもいい感じに盛り上がって来た時
「うぐっ・・!?」
アンサちゃんの背中に、短剣が2本刺さっていたの
血が噴出し、苦しそうに顔を歪め前に倒れる
「ア・・アンサちゃん!!」
「誰だっ!!」
『コノ気配ニモ気付カナイトハ、落チブレタナ、我ガ妹ヨ』
誰の声かは分からないが、男性の声だとは分かった
私たちは声がするほうへ向く
「誰・・?」
「あ・・・兄上・・・」
アンサちゃんの・・お兄さん!?
「なんでこんな事を・・?」
『貴様ラノ知ッタ事デハナイ』
冷たい声
「何で兄妹なのに、殺されなきゃならないの!?」
キッと男を睨み、戦闘態勢に入る
『掟、タダソレダケノ事』
「・・・あのさ」
今まで黙ってた星武君が口を開く
「お前、望月だろ」
『え?』
その場にいた人、3人除いて変な声を出す
「アァ、やはり渦馬星武、君は強い」
すーっと男の体が砂になり、崩れ落ちる
そこに残ったのは、130cmという小さい背に大きな罪を背負っている私達の幼馴染
望月雪矢が、立っていた
「アンサ、もういいんじゃないかな? 上手過ぎて本気でヤっちゃったかと・・」
「すいません、ただ現実感を出すためには少々オーバーでなければと」
え、え・・?
「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」
~Side-out~
「お前、望月だろ」
あぁ、やはり彼にはバレてしまったか
「アァ、やはり渦馬星武、君は強い」
・・しかし、アンサの演技力にも驚かされたな・・
本当に刺してしまったかと
・・刺したとき本当にああなるか試してみようかな?
半分呆れたようにレヴィンが言う
『やめてください マスターは本当にやりかねませんので』
「あれ?僕、口に出した?」
ふと周りを見渡すと、全員顔を真っ青にしている
あちゃー・・
「ごめんね?」
『良かった!!』
・・結構こう、精神的に来るものがあるねぇ
「そろそろ、続きをしたらどうだい?ユズキ」
クワィの一言で、パーティは再開された
僕も参加したよ
お酒は出なかったよ 全員未成年だったから
『Alert! Alert!』
「何!?」
楽しい会話も、雰囲気も一変
ダッシュで外に出る
全員戦闘態勢に入っている
流石だなぁ
僕もいつでも戦えるようにかまえる
「全方に機兵の魔力反応・・50!? ・・こちらに向かってきています!!」
「多いわぁっ!」
トラーリアのサーチ魔法で敵の数を確認
機兵と言うのは・・簡単に言うと戦闘用ロボットの事
「-祝福-」
「ありがとっ ・・来たっエン、お願い!」
「オッケー!」
イキュリーに答えた後、
空中に紫色の巨大な魔法陣を展開する
機兵達の半分以上は中に入っているだろう
「プラズマレイン・・・シュート!」
バチバチッと魔力が雷へと変わり、魔方陣の中に居る機兵へと降り注ぐ
プラズマレインアローを基にした魔法だろうか
数百本、数千本と細かい紫の稲妻が魔方陣へと一気に降り注ぐ
スピード、命中率重視・・かな?
煙と轟音が上がる
「反応、30・・28・・25 25です!」
「半分!?」
「何で・・」
「んー、木兵もいたんじゃないかな」
「成る程、アールちゃん冴えてる!」
ユズキの言葉に皆「・・え?」という顔をしている
「え?・・え? 何で皆そんな顔してるの?」
「・・なんで忘れてたのか不思議だわ」
ハァ、とため息をつきながら言うマーレ
「でも何でこんな本部近くに弱い木兵を・・ 偵察か?」
星武はボソっと
* * * * *
ある暗い一室
オレンジ色の液体が入ったグラスを手に持ちながら目の前のモニターを見つめる一人の少女
「キヒッ、キヒヒヒ サプライズだヨ♪」
『・・・』
ニタニタと笑うその顔は醜く歪んでいた
* * * * *
とある空
「・・やっと見つけたぞ、破壊神っ!」
着物を着た一人の女性は、彼らの戦闘を高く遠い上空から眺めていたのだ
そして一人の少年を見て、ふ、と笑ったその顔は美しく綺麗だった




